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コインの約束  作者: 摘美花-ツグミカ-
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和真の容態

5時間に及ぶ手術が終わり、和真は個室に移され、麻酔があと1時間ほどで切れるだろうと、和己先生に言われた。


個室の中には執刀した外科の先生、和己先生、そして和真のご両親。


私は部外者なので廊下にいて。和真に会えるのを待っていた。


しばらくして、外科の先生が部屋から出ていき、和己先生が私に入ってくるように呼んでくれた。


そこには泣き崩れている和真のお母さん。それを抱き支えているお父さん。


気丈にしている和己先生。


和真は顔に傷があるものの、優しい顔で眠っている。


和真のお母さんはどうしてそんなに泣いているの?


私は和真の病状を聞くのが怖かった。


和己先生が私に向かって和真の病状を話し始めて。


「芽衣ちゃん、今日は和真と約束があったんだよね。こんなことになってしまって、ごめんね」


「いえ、そんなこと。和真は、どうなんですか?」


「右足を骨折してて、インプラントを入れてね。インプラントって、要はボルトのことなんだけど。それは数か月で治ると思うんだ」


「良かった。良かったです」


「他に問題があって。腰も負傷してね。こっちの方が重傷で。ある程度の段階でリハビリまで行けるならいいんだけど。下手したら下半身に麻痺が残るかもしれないんだよ」


「麻痺、ですか?それって治らないんですか?和真はどうなっちゃうの?」


すると和己先生の代わりにお父さんが話し始めて。


「芽衣ちゃん、和真はもしかしたら一生車いすの生活になるかもしれないんだ」


「そんな、そんなことって。どうにかならないんですか?どうしたら元の元気な和真に戻れるの?」


私は和真のベッドサイドまで行き、泣きながら和真に問いかけた。


「和真はバスケするんでしょ。キャプテンなんだから。それに、那須に連れて行ってくれるって。約束したよね。ねぇ、和真・・・。」


そんな私を見かねた和己先生が、


「芽衣ちゃん、ごめんね。心配掛けさせてしまったね。和真が話せるようになったら連絡するから、今夜は家に戻って」


「嫌です。私、和真の側にいたい。ここに居させてください。もうすぐ麻酔が切れるんでしょ?その時に、和真の側に居たいんです。お願いします。ここに・・・和真の隣にいさせて」


少し冷静さを欠いていた私に、和真のお母さんが静かに話してくれて。


「芽衣さん、初めまして。和真から芽衣さんのことはずっと聞いていたの。和真はとても芽衣さんが好きでね。私も芽衣さんにお会いしたいと思っていたのよ。こんな時に会うなんて、本当にごめんなさい」


「私の方こそきちんとご挨拶もできなくて、すみません」


「和真の目が覚めるまで二人でここにいましょうか。あなたたちは何かあったら呼ぶから、ね。そうさせて」


和真のお母さんはとても優しく、私を迎え入れてくれた。


和真のお父さんと和己先生は部屋を後にして、それぞれの仕事に戻って行った。


「芽衣さん、和真の状態はさっき聞いた通りで、もしかしたら下半身が動かなくなるかも知れないの。その時、将来のある芽衣さんが和真の犠牲になる必要はないのよ」


「それは、もしもの話ですよね。私、和真は元通りの体に戻るって信じています。それに、私の将来は和真と共にあるんです。和真がいない将来なんて、私いらない」


「芽衣さんにそう言ってもらえるだけで、和真も嬉しいと思うわ。でもね、現実はそんなに簡単じゃないの。病院にいると色々な患者さんを見るでしょ。血の繋がった家族でさえ、介護できずに病気の家族を見放すことも良くあることなのよ。ましてやあなたはまだ高校2年生。これからやりたいことだってあるでしょう」


「私のやりたいこと。和真と一緒じゃないとダメなんです。お願いします。和真の側にいさせてください。」


『ん・・・うっ』


その時、和真が目を覚ました。


「和真!和真っ!」


ナースコールのボタンを押し、私は和真を呼び続けた。


「痛ってー」


「和真、大丈夫?痛いの?すぐ看護師さん来てくれるから」


「芽衣なの?なぁ、俺の体、動かねぇし、すっげー痛いんだけど」


「うん、痛いよね。頑張ったね、和真。目覚めて良かった」


私は和真の前では気丈でいなきゃと思い、笑顔で接した。


それからすぐに看護師さんと和真のお父さんが来てくれて、鎮静剤を打ってくれたようだった。


痛みが落ち着いたころ、和真のお父さんが私に


「和真とお母さんと3人で話したいから、少し席を外してもらえないかな、芽衣ちゃん」


そうお願されたから、部屋を出ようとしたら、


「芽衣がいたら話せないの?親父?」


って。


「和真、お父さんのお話し、ちゃんと聞いてね。私は外にいるから。どこへも行かないから」


そう言って和真の病室から出た。


もしかしたら麻痺が残るかもしれないこと、和真は受け入れられるのだろうか。


和真は将来を悲観しないだろうか。


それでも私は和真の側で和真の力になる。和真と約束したんだもん。


『和真のこと大切にするからね。何があっても』・・・って。



和真とお父さんが話をした後、和真は再度眠りについたため、私は帰るように促されて、病院を後にした。


「また、明日も来るね」


眠っている和真にそう囁いた。

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