表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コインの約束  作者: 摘美花-ツグミカ-
2/24

冷血な和真?


「芽衣が遅刻なんて珍しいね。どうしたの?」


次の休み時間になると仲良しグループの由真ユマ夏樹ナツキミナトが心配して私の席まで来てくれた。


男2人、女2人の4人でいつも行動しているから、良く2組のカップルと勘違いされる。誰と誰の組み合わせでカップルだと思われてるのか、不思議なんだけど。


私はこの3人が大好きで、信頼できる仲間だと思ってるの。

恋愛感情が全然ないから4人で上手くやっていけてるんだと思う。


由真は中学からの付き合いで、何でも話せる気の合う友達。背が高くて、美人さん。物事をハッキリ言う性格が私は大好き。


夏樹は高校1年の時に同じクラスになって、席が近かったから話すようになって。とっても優しいの。お兄さん的な存在かな。


湊は夏樹とは正反対の性格。とにかく毒舌で、口が悪い。私は湊とよく喧嘩したりするけど、本気の喧嘩じゃなくて、じゃれ合ってる感じ。


私は今朝の遅刻の理由を3人に話した。


「今朝、食べ過ぎちゃったみたいでね。気持ち悪くなってたところで電車にも酔って。途中の駅で降りて吐いてた・・・。」


「うお!芽衣、汚いな!っつーか食べ過ぎで吐くってよ、どこの幼児だよ」


相変わらず口の悪い湊。


「なによ、湊!少しは心配してくれてもいいじゃない」


「へっ、そんだけ怒れるんなら心配ないだろ。今日から芽衣はリバース芽衣ってあだ名だな!はははっ!!」


「ふざけんな、湊!」


湊と喧嘩をしていると、それを見かねた由真が、


「もうやめなよ。湊も大人気ないなぁ」


そして夏樹も、


「だよな。心配だったならもっと優しい言葉を掛けてあげられないもんかね、湊は不器用だな」


なんて私を庇ってくれて。


やっぱり由真と夏樹はできた人間だよ、誰かさんと違って。


「そうだ、それでね。駅で5組の結城和真くんって人に助けてもらったの。気持ち悪いのが治るまで一緒にいてくれてさ。遅刻させちゃった」


「結城・・・和真?」


三人はその名前に聞き覚えがあるのか、しばし沈黙する。

そして三人揃って


『冷血和真!!』


は?何それ、変なあだ名


そして三人揃って手を顔の前でブンブン振って


『ありえない』 って。


私がその三人の揃いっぷりに呆気に取られていると、由真が


「芽衣、それって本当の話?あの結城和真だよ?」


「本当だよ。だって結城和真って自己紹介されたし」


「それって、結城和真を語った別の人間じゃない?だって、すごく冷たい人だってウワサだよ。助けてくれるなんてありえない」


すると湊の目が輝きだして、


「芽衣が夢を見ていないか、今から5組に行って確かめてこよう!」


もう、湊はこういう話、大好きだよね。


そして私たち4人は5組へ向かった。


5組のドアの所から4人で教室の中を覗く。


小さい声で由真が私に確かめてきた。


「この中に今朝助けてくれた自称、結城和真はいる?」


「うーんっと、あっ、いたいた。あそこ、窓側の後ろに3人立ってるでしょ?あの中で一番背が高い人だよ」


すると夏樹が、


「本当にあの人だった?芽衣。間違えてない?俺たちも結城の顔知らないから、本人か分からないけどさ」


「うん、あの人だった。飲み物も買ってきてくれて。優しかったけどな」


それを聞いていた湊が、結城くんたち三人が立っているところまで行ってしまった。


「ねぇ、結城和真ってどいつ?」


そんな風に遠慮なく質問してる。


「やだ、湊!何やってんのよ!」


私はいたたまれなくなって、5組に入り湊を引っ張って廊下へ連れ出そうとした。


その時、結城くんと目が合った・・・。けど、目を逸らされた。



「ねぇ、どいつが結城和真?」


「湊、もういいでしょ。帰るよ」


湊がしつこく聞くから、


「結城は俺だけど、何?」


すごく冷たい声で湊に答える結城くん。


「おまえなの、結城って。今朝さ、リバース芽衣がお世話になったって聞いてさ。お礼を言いに来た」


「なんでお前からお礼を言われるんだよ」


すごく冷たい声、それに顔も怖い。この人、今朝の人じゃない。


「湊、私の勘違いだった。この人、違う。お騒がせして、ごめんなさい」


私はそう謝って結城くんたちに頭を下げた。


「行くよ、湊。ってかさ、リバース芽衣ってやめてよね」


そう湊に文句をいいながら5組を出ようとしたら、後ろから


「芽衣、勘違いだったって、なに?」


突然名前を呼ばれたから、びっくりして振り返ると


さっきとは全然違う、優しく笑う結城くんがいて。


そして結城くんが小さい声で言った。


「芽衣、元気になって良かった」


その一連の結城くんの行動、言動に驚いたのは私たちではなく5組の皆で。


『和真が笑った?!』


『結城くんが女の子を名前呼びしたーーー!!』


『結城くんの笑顔、破壊力半端ないーー!』


なんて大騒ぎになってしまって。


私たち4人はこの騒ぎに紛れて駆け足で5組を立ち去った。


「一体なんだったの?あの5組の盛り上がりは?」


自分のクラスに戻ってきた由真が興奮気味に話す。


「それにしても、結城和真ってイケメンだったねー、ねぇ芽衣」


それを聞いていた夏樹と湊が


『そんなこと、ねーよなぁ。かっこよかったか?』


なんて意気投合してるし。



やっぱり結城くんって変な人。


冷たい表情だったり、優しい顔をしたり。


ほんと、読めないな。


でも、結城くんの笑った顔を見たとき、なぜか胸の奥がトクンと鳴いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ