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【霊薬・空清石乳】

◇◆◇ 天魔神教(てんまじんきょう) 日月宮(じつげつぐう) 第六公子(だいろくこうし) 日月慶雲(じつげつけいうん) ◇◆◇


《【試練・武骨強化(ぶこつきょうか)】が達成されました。報酬が付与されます》


《【霊薬(れいやく)空清石乳(くうせいせきにゅう)】を獲得しました。『混元値(こんげんち)』を1000獲得しました》


 ……おはよう諸君、本座(ほんざ)だ。


 さて、昨日は【武骨(ぶこつ)】の強化が完了し、進化するところで意識を絶たれたわけだが……、ふむ、筋肉痛の類はないな。

 もちろん、力は入るし寝具の感触もあるので、全身がマヒしているというオチでもない。


 だがそんな疑問以上に確かに感じられることが一つある。


 変化だ。


 視覚(しかく)聴覚(ちょうかく)嗅覚(きゅうかく)触覚(しょっかく)

 あらゆる感覚が強化され、世界が少し違って見えるようだ。

 少々過敏(かびん)になっているのか、眩しくて鼻先が(しび)れるような感覚もある。


 変わった。


 ……まあ外見的な意味で、つまるところ見た目で肉体に変化があるかと言えば、そんなことは到底ない。

 幼児特有のぷにもち体型のままだ。


 ちなみに進化を遂げた【武骨】と、先ほど混元値を振って上げておいた『玄魔養生功(げんまようじょうこう)』の効果はこれである。


○【佳良之体(かりょうのたい) Lv.0】

 <分類>:武骨

 <ランク>:E

 <概要>:平凡な人間の持つ肉体よりもやや優れた肉体。神功絶学(しんこうぜつがく)の習得は困難。死に物狂いの修練を経て【超絶頂(ちょうぜっちょう)】の境地に至ることが出来れば奇跡。

 <効果>:修練速度1.5倍


〇【玄魔養生功 四成】

 <分類>:心法

 <ランク>:???

 <概要>:呼吸・姿勢・精神を調(ととの)えることを目的とした養生功の一種である心法(しんぽう)。呼吸法により天地の気を導き、四肢百骸(ししひゃくがい)に巡らせ、丹田(たんでん)に蓄積する。

 <効果>:潜在能力向上・ 武骨(ぶこつ)強化・穴道(けつどう)打通(だつう)・肉体浄化・自己回復強化

 <効能>:(周天(しゅうてん):上昇値)2:1


 【武骨】は、その効果が1.0倍から1.5倍にまで上昇していた。


 そして『玄魔養生功 四成』の方は、二成の8:1から2:1にまで効率が上昇していた。


 『武骨強化』の【試練】を達成したため、混元値の残量的には五成まで上げられたのだが、例のごとく【武骨】ランクが足りないという表示が出たため断念した。

 現在の混元値でも【武骨】ランクをDまで上昇させることができるが、また気絶してしまいかねないので、夜に寝る前にまた操作しようと思う。


 あとは……、ああ、先ほどもらった報酬である【霊薬・空清石乳】の詳細を調べておかなくては。

 武侠小説では本当に伝説的な霊薬だが、実際の効能も気になるところであるな。


〇【空清石乳(くうせいせきにゅう)

<分類>:霊薬(れいやく)

<ランク>:伝説級(でんせつきゅう)

<概要>:天地(てんち)調和(ちょうわ)が秘められた洞窟で100年に一度だけ滴り落ちる液体。

<効果>:【内功・60年】もしくは【体質・調和之力(ちょうわのちから)】【体質・無病長寿(むびょうちょうじゅ)


 ……流石というべきだな、凄まじい効果だ。


 まず内功の方だ。

 そもそも60年分の内功というのは、武林(ぶりん)に生きる武人たちにとって一つの大きな目安とされ、武侠小説では一甲子(いちかっし)の内功とも呼ばれる。神功絶学(しんこうぜつがく)と呼ばれる武功を過不足なく展開できるようになる水準も一甲子の内功である。


 武人たちの武威の強さ・境地(きょうち)は、三流(さんりゅう)二流(にりゅう)一流(いちりゅう)と高くなり、さらに絶頂(ぜっちょう)超絶頂(ちょうぜっちょう)化境(かきょう)と上がっていく。


 境地を突破することを『破壁(はへき)』と呼ぶのだが、すべての境地の壁において三つの条件が一定の水準を超えていることが必要となるのだ。


 一つ目は、武学(ぶがく)。正確には武学における悟りのことであり、武術の招式(しょうしき)への理解や、武学が目指した果てへの理解など、精神面での充実が必要となる。

 二つ目は、肉体。肉体は器であり、武功を繰り広げるための土台であり、内功を支える土台でもある。

 そして三つ目は、内功(ないこう)。これは肉体という器を満たす内功の量と質のことであり、武人たちが持つ人間離れした能力の根本であると言える。


 そして、60年分の内功というのは少なくとも超絶頂の境地に至るまでに最低限必要な内功の量と言える。


 つまり理論上、【空清石乳】を使えば、素人同然の三流の武人が超絶頂の武人に匹敵するだけの内功を得るということであり、これは天魔神教(てんまじんきょう)内において、訓練生ともいえる潜魔(せんま)から、選ばれし者しかたどり着けない巨魔(きょま)の位階への成り上がりである。

 例えるなら一兵卒(いっぺいそつ)五千将(ごせんしょう)クラスまでのし上がるようなものだ。将軍(魔君(まくん)・准長老級)や大将軍(魔尊(まそん)・長老級)とまではいかずとも、どれ程とんでもないことかというのが良く分かる。


 ……とまあ、ここまで大いに熱弁をふるったわけだが、実をいうとそんなにうまい話でもない。


 というよりうまくいく話ではない。


 器の問題があるのだ。


 この器というのは、肉体のことであり、何より内功を蓄積する丹田(たんでん)のことである。

 未成熟な肉体では膨大な量の内功に耐えられず、丹田の大きさが足りなければ、内功を受け入れることができない。


 つまり現実に本座にとって【空清石乳】の内功を取り込むということは、手に持ったコップに風呂一杯の水を入れようとしているに等しい愚行と言えるのだ。間違いなく零れ落ちるし、無理に入れようとすればコップは割れるだろう。


 【空清石乳】は、絶大な力を得ることができる伝説の霊薬であり、もし本座がそれなりの境地に達していたのなら、間違いなく60年分の内功として吸収したのだが、現状ではもはやシステムが作った罠とも、あるいは拙速をたしなめる教訓を与える教材とも思えてくる。


 そうでなければチュートリアルの段階で報酬となっていることがわからぬほどの伝説級の代物である。


 まあ今回は今の本座に役に立つ【体質・調和之力】と【体質・無病長寿】の力を取り込むとしよう。


 ちなみに詳細はこんな感じだ。


〇【体質・調和之力(ちょうわのちから)

 <分類>:体質

 <ランク>:A

 <概要>:天地(てんち)調和(ちょうわ)から生じる【空清石乳(くうせいせきにゅう)】から得た体質。常に体内の陰陽(いんよう)五行(ごぎょう)を調和させる力を持つ。

 <効果>:極陽(きょくよう)極陰(きょくいん)丹薬(たんやく)霊薬(れいやく)内丹(ないたん)を代償なしに吸収可能。熱気・冷気への耐性(たいせい)獲得難易度(かくとくなんいど)超緩和(ちょうかんわ)、および熟練度(じゅくれんど)蓄積速度(ちくせきそくど)超上昇(ちょうじょうしょう)


〇【体質・無病長寿(むびょうちょうじゅ)

 <分類>:体質

 <ランク>:B

 <概要>:高位の丹薬(たんやく)・希少な霊薬(れいやく)を吸収した際獲得できる体質。

 <効果>:病魔退散(びょうまたいさん)(100年)。寿命増加(じゅみょうぞうか)(50%)。毒耐性(どくたいせい)獲得難易度(かくとくなんいど)超緩和(ちょうかんわ)毒耐性(どくたいせい)熟練度(じゅくれんど)蓄積速度(ちくせきそくど)超上昇(ちょうじょうしょう)


 ……うむ、正直言って【調和之力】の方は効果が良く分からんが、【無病長寿】の方は本当にありがたい限りだな。

 寿命は死ぬまで知る由もないが、幼い我が身にとって病気というのは最も警戒するところである。菌という概念すら存在しないらしいこの世界で、病気にかからないというのはこの上なく大きな利点だ。

 毒耐性の獲得も君主となるうえで必要なものなのだろう。


 ……ふむ、しかし【日々修練(ひびしゅうれん)】の『鳳声(ほうせい)(たまわ)り』のような【試練】というわかりやすい形以外であっても、こうして肉体的に育てたり、【空清石乳】の使い方を自らの頭で考えさせ結論を出させたように、様々な方法で君主を育て上げるこのシステムは、本座の想像以上に優れているのかもしれない。


 ちなみに今日は『鳳声の賜り』はない。本日の【日々修練】はこれだ。


◇【日々修練】

 ・人物鑑定(じんぶつかんてい)(0/10)「混元値10」

 ・物品鑑定(ぶっぴんかんてい)(1/10)「混元値10」


 人とモノをそれぞれ10回ずつ鑑定すればいいようだ。物品の方の1回は【霊薬・空清石乳】を鑑定したおかげだな。

 大した手間でもないようだし、今日の散歩中にでもこなせばいいだろう。


 あとは……そうだな。


 今後は、チュートリアル3の【試練】がすぐに達成できない分、【日々修練】と『玄魔養生功』を運気する毎日となるはずだ。


 修練速度を上げるため、武骨の強化を忘れないようにしなければ……。

 ついでに【武骨】をFランクからEランクに強化したことで【体質・超聴覚(ちょうちょうかく)】にボーナスが入ったらしい。【体質・超聴覚(250/500)】にまで上がっている。こっちにも混元値を振っておくとしよう。


《【霊薬(れいやく)空清石乳(くうせいせきにゅう)】を摂取しました。【体質・調和之力(ちょうわのちから)】を獲得しました。【体質・無病長寿(むびょうちょうじゅ)】を獲得しました。》


《【日々修練(ひびしゅうれん)】・人物鑑定(じんぶつかんてい)が達成されました。報酬が付与されます。【日々修練】・物品鑑定(ぶっぴんかんてい)が達成されました。報酬が付与されます》


《『混元値』を10獲得しました。『混元値』を10獲得しました》


《【体質・超聴覚】Lv.0→Lv.1に強化されました》


《【武骨・佳良之体(かりょうのたい)】Lv.0→Lv.5に強化されました。【武骨・佳良之体】が限界点に到達しました。【武骨】の進化が開始されます》


《【武骨】が進化します。強制体質変換が開始されます。所要時間 約6時間》


《変換中……》


リザルト

混元値 161(開始時)


+1020 -1150


混元値 31(武骨強化終了時)


・丹薬と霊薬と内丹


 武侠小説(ぶきょうしょうせつ)において、すべて薬として扱われるものであるが、微妙に定義が異なる。すべてひっくるめて霊薬と称することもある。

 性質が陰陽どちらかに偏っているものがあり、特に陰に偏っているものを極陰(きょくいん)、特に陽に偏っているものを極陽(きょくよう)と称する。

 極陽の霊薬を服用する時は、同質である極陽の性質を持つ内功心法(ないこうしんぽう)を運気して吸収するか、極陰の霊薬・内丹などを同時に服用する必要がある。逆もまた同じ。

 極陽、あるいは極陰の霊薬をそのまま服用すると、熱気で体内を焼かれ内傷(ないしょう)を負うか、冷気で体内を凍らされ内傷(ないしょう)を負うことになる。


丹薬(たんやく)錬丹術(れんたんじゅつ)により作り出された薬。一般に複数の材料を使用して作る。極陽の武功専用、あるいは極陰の武功専用に作られた丹薬でもない限り、陰陽が偏ることはない。

 <例>:大還丹(だいかんたん)少林派(しょうりんは))・紫疎神丹(しそしんたん)武当派(ぶとうは))・大覇王丸(だいはおうがん)河北彭家(かほくほうけ)


霊薬(れいやく):自然界に存在し、単体で絶大な効果を得る薬。陰陽どちらかに偏っている場合もある。

 <例>空清石乳(くうせいせきにゅう)百年雪参(ひゃくねんせつざん)千年何首烏(せんねんかしゅう)千年朱果(せんねんしゅか)(極陽)・雪蓮実(せつれんじつ)(極陰)・天氷重水(てんひょうじゅうすい)(極陰)


内丹(ないたん)霊物(れいぶつ)と呼ばれる特異な生物の体内で生成される物。長く生きた霊物の内丹は大きくなったり、数が増えることがある。陰陽どちらかに偏っている場合もある。

 <例>萬年火鯉(まんねんかり)(極陽)・千年九尾(せんねんきゅうび)狐・蛟龍(こうりゅう)


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