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幕間:報酬確認回と【神獣之卵】と【太初真脈】

◇◆◇ 天魔神教(てんまじんきょう) 潜魔館(せんまかん) 第二階層 私室 第六公子 白眉(はくび)剣龍(けんりゅう) 日月慶雲(じつげつけいうん) ◇◆◇



 今回の話。


 それはいつかのシステム報酬、【稀物・神獣之卵】。


 音沙汰なく忘れさられ、【倉庫】の肥やしとなっていたそれがようやく孵る話である。



◇◆◇



「――さて、何から手をつけたものか」


 表彰の儀が終わり臣下たちの丹薬服用を見守った後、本座は私室で積み上がった試練達成報酬という要確認事項に頭を抱えていた。

 ここまで溜まったのはシステム通知を切っていたせいというただの自業自得であるのだが、それでも明日からは第八階層の秘笈書庫に入り浸るという予定があるゆえ、今日中に全ての報酬を確認しておく必要があるのだ。


「此度の試練は大きく分けて四つ。その内解析を要する物は九つか」

 

 拡張されたサブシステムである【武道之海】・【術道之海】・【師弟之縁】の三つと、明らかに三位一体と見える【法宝・劫圧(ごうあつ)紫金錠(しきんじょう)<魂>】・【法宝・劫圧紫金錠<感>】・【法宝・劫圧紫金錠<体>】。そして【真脈(しんみゃく)剣仙(けんせん)真脈】、【霊宝・悟道円座(ごどうえんざ)】、【天材地宝(てんざいちほう)万古(ばんこ)仙命水(せんめいすい)】の計九つである。


「……【武道之海】と【術道之海】。とりあえずこやつらは後回しでよかろう」


 まず本座は【武学総論】に拡張されたサブシステム【武道之海】と【術道之海】を除外した。

 システムの通知を読むに、この二つはそれぞれの【道】において功法の【創造】・【改変】・【補完】と色々と出来るようなのだが、逆説的に言えば自由度が高すぎるあまり、その性能や可能性を短時間で推し量るのは難しいと思われるのだ。おそらくこれらサブシステムのポテンシャルを測るには、使いながら仕組みを覚えていく方式が一番なのだろう。


 ……まあ後ほど【寒霧月女(かんむげつじょ)剣法】の運気要訣の補完だけはしておこうとは思っているのだが。

 いかに序列大戦の決勝で前段階となる基本功の【月輪剣法(がちりんけんぽう)】を会得したとはいえ、そこから自力で運気要訣を組み上げるのは決して容易なことではない。それを思えばこの補完こそ、今回の新サブシステムの試運転に相応しい作業であろう。


「同様に【師弟之縁】も後回しでよかろう。本座にはまだ師も弟子もおらぬ」


 こちらも言うまでもない。本座には未だ師がおらず、臣下たちに多少の指南はすれども弟子とする気など毛頭ない。このシステムが弟子入りと弟子取りのどちらに作用するのかは定かではないが、どちらにせよまだ先の話である。


「となると残りは六つ。……いっそ手に入れた順で良いか」


 同じ名前の物が三つある【劫圧(ごうあつ)紫金錠(しきんじょう)】からとなるが、まあよかろう。ややこしそうだが仕方ない。意外と言われるかもしれぬが、面倒なことから片付ける(たち)なのだ。

 というわけで鑑定結果がこれだ。


○【劫圧紫金錠<魂>】

<分類>:法宝

<ランク>:伝説級

<概要>:劫力をもって魂を圧し、その圧を糧として魂力を磨き上げる枷。解錠の合言葉は『アンテ』。

<効果>:【魂力制限】【魂力超成長】


○【劫圧紫金錠<体>】

<分類>:法宝

<ランク>:伝説級

<概要>:肉体に劫圧を掛け、常に限界下で鍛錬させる拘束具。解錠の合言葉は『アンテ』。

<効果>:【肉体圧迫】【肉体超成長】


○【劫圧紫金錠<感>】

<分類>:法宝

<ランク>:伝説級

<概要>:感覚を封じ鈍らせることで、より高精度・広範囲へと知覚を研ぎ澄ませる霊環。解錠の合言葉は『アンテ』。

<効果>:【感覚阻害】【感覚超成長】


 『アンテ』……だと? 正気かシステム(こいつ)


 ……こほん。まあ総じて言うなれば、魂力・肉体・感覚における養成ギプスである。

 ただ養成ギプスという言葉から連想される巨〇の星のアレとは違い、元ネタは霊光波〇拳の修の行・呪〇錠であろう。システムも何をとち狂ったのか『アンテ』などと言っておるしな。


「……ふむ」


 三種の見た目は名前同様似通っており、紫の線が入った金の腕輪という形状をしている。異なるのは埋め込まれている宝石だけだ。<魂>・<体>・<感>とそれぞれに違う色の宝石が埋め込まれており、わざわざ鑑定せずとも間違えるようなことは無いだろう。


「着け心地は悪くないな」


 着け心地そのものは悪くないのだが、同時に漠然と身体が重く違和感が凄まじい。おそらく劫圧とやらの影響であろう。

 今装着したのは<魂>の紫金錠。未だ<体>も<感>も着けておらずともこれであるゆえ、劫圧そのものが魂力のみならず肉体にも影響を与えていることがわかる。


「『アンテ』」


 【法宝・黒鱗環(こくりんかん)】と同様に、例によって自動的に伸縮する法宝である【劫圧紫金錠】。

 合言葉と共に腕から外れるそれは、明らかに金属であるのに如何にして自在に伸縮しているのかという疑問もあるが、それ以上に【黒鱗環】と違い所有者の固定が為されていないという点が気に入った。所有者が固定されておらぬということは、いずれ物足りぬとなれば弟子や子供に継がせるということもできるからである。


「悪くはない、悪くはないのだが……」


 ただ問題がないわけでは無い。

 極めて有用な法宝であり、今後の鍛錬に役立つことは間違いないのだが、これで本座の腕には【黒鱗環】も含めて計四つの腕輪があることになる。しかも三つは金の腕輪。

 別にデザインに文句があるわけでは無いが、このチャラさ。もし本座の服が今少し現代的な形であれば、どこのDJかラッパーかという話であっただろう。

 奉先の業のヒトやラスボスの鬼女の面のヒト、あるいは武林バンバンのヒトなど、別段それらの職に思うところがあるわけでは無いのだが、天魔神教の公子としては圧倒的にない格好である。


「……まあ良いか」


 幸いにしてこの世界には論客は居れどもラッパーはおらぬ。あるいは成金趣味と思われるかもしれぬが、法宝を見抜けぬ者を相手にしても仕方がない。とどのつまり本座さえ気にしなければ何の問題もないのである。

 というわけで次、鑑定。


〇【剣仙真脈】

<分類>:真脈

<概要>:武道において剣道を歩み、***となった剣仙の正当なる血脈。体内に**剣*が流れ、生来より剣と一体となる資質を備える。剣道の悟性は常人を遥かに凌ぎ、一念にして万剣を統べる。

<効果>:剣法完全適正 剣心通明(けんしんつうめい)覚醒 身剣合一(しんけんごういつ)覚醒 ****


 これはこれは……なかなかどうして素晴らしい。本座の力量不足ゆえか、伏せ字の部分があって全て読むことが叶わぬのが残念でならぬ。


 まず【真脈】についてであるが、これは【血脈】系の天賦であり、【○○血脈】などの上位に存在する物である。

 今となっては確認の仕様も無いことであるが、おそらく【百雷鳳雛】こと蝶姫を鑑定したときに伏せ字となっていた【*脈】もこれだったのではないかと思われる。その由来を仙人あるいは仙界とする【真脈】は、俗世の偉人の系譜であることを表す【剣尊血脈】や【金尊血脈】などとは別格の位置する代物である。


 そして剣仙を由来とする仙人の系譜【剣仙真脈】。


 当然下位の血脈である【剣尊血脈】とは一線を画した効果を有し、剣法完全適正を皮切りに、【意】において剣と一体となる【剣心通明(けんしんつうめい)】や【体】において剣と一体となる【身剣合一(しんけんごういつ)】など極めて有効な効果が多い。

 最期の伏せ字の内容はてんで分からぬままだが、【剣心通明】の悟りや【身剣合一】の悟りは、剣を極める上で成しえなければならぬ境地の一つである。それを【真脈】の力で悟ることができるというのは凄まじいと言う他ないだろう。


「だが【剣仙真脈】の最大の価値はそこではない。……良い、良いな。あるいはこれが一番の大当たりかもしれん」

 

 無論、今手中にある【剣仙真脈】の凄まじい効果が相当な実りであることは疑いようもない事実であるが、その上でかの圧倒的な効果によって【真脈】という天賦自体の有用性が証明されたことこそ、本座にとって最も大きな実りであると思えるのである。


 此度獲得した【剣仙真脈】に限らず、【○○真脈】という名の天賦は【蓬莱商店】でも販売されている。

 当然【○○血脈】系の天賦よりも圧倒的に高価であり、今までも気にかけていなかったわけでは無いのだが、その法外な価格に二の足を踏んでいたというのが実情である。


 しかし今回、今まで朧気であった【真脈】の効果が証明され、その価格に見合うだけの価値が示された。

 ゆえに本座は思うのである。それ単体の価値ではなく、付随する情報の価値も含めればこそ【剣仙真脈】が一番の大当たりであると。


「『一波わずかに動けば、万波したがい来る』というのは、何事においても当てはまろうものよな」


 今後の【蓬莱商店】の購入優先順位において、他の【真脈】の購入が相当上に来ることは間違いない。……うむ。



◇◆◇



 【剣仙真脈】の鑑定を終えた後、本座は次の報酬の確認に移ることなく【蓬莱商店】で【真脈】系の天賦を物色していた。いわゆる掃除中に漫画やアルバムを見つけて読んじゃって全然掃除が進まない的なやつである。

 ただ本座の場合、明日以降の秘笈書庫での用事も大切なことならば、【剣仙真脈】を手に入れたことで新たな商品が追加された【蓬莱商店】のチェックもまた重要なこと。諸君らにおいてはどうかご寛恕願おう。


「――さてそろそろ続きを見ねばならんか」


 まあそちらも一通り見終わったゆえ、いい加減に報酬の鑑定を再開しようと思う。ただ一つ、丁度……というには見計らったようなタイミングであるが、それでも丁度セール中の【真脈】が一つあったゆえ、そちらは購入することにした。冷仙月も保有していた【太初真脈(たいしょしんみゃく)】である。以前鑑定したゆえ結果は見え透いているが、そちらの鑑定結果も後ほど教えよう。


 では次の報酬、鑑定。


○【悟道円座(ごどうえんざ)

<分類>:霊宝

<ランク>:****

<概要>:天地**を誘引し、座する者の心を澄ませ**に調和させる修行霊宝。長く坐すほど心魔は遠ざかり、悟道の機縁が自然と巡る。霊地・霊泉・****など濃密な**の中で用いることで、**を洗い流し**の働きを成す。

<効果>:【道心安定】【悟性増幅】【****】


 ……【霊宝】、か。やはり流石であるな、【剣仙真脈】の時と同様にすべてを読み取ることができぬようである。

 以前軽く説明したが、世の中の【宝器】と呼ばれる道具にはそれに応じた位階が存在し、その中の【法宝】の上にある位階こそ【霊宝】である。この位階の器物を簡単に表すなれば仙人の道具であろうか。


「……ふむ。三つ目の効果は無視するとして、【道心安定】も【悟性増幅】も使ってみねば分からぬか。これ以上深く鑑定することもできぬし、致し方あるまい」


 しかし如何に仙人の道具であっても、物が円座……座布団のようなものである以上座る以外に使い道はない。一応、霊地とか霊泉だとかの文言から、特殊環境下での使用用途もあるようなのだが、これもあくまで予想の範疇を出ぬこと。やはり【黒鱗環】もそうであったように、継続系の修行宝器は効果が実感しにくい。今後も縁の下の力持ちでいてもらうとしよう。

 では次で最後だ。鑑定。


○【万古(ばんこ)仙命水(せんめいすい)

<分類>:天材地宝

<ランク>:****

<概要>:万古の歳月を経て****が凝結した****。**と**を絶えず湧き出し【**法*】を宿している。ひとたび口にすれば肉体・魂魄・**を**から修復する。俗世の身には耐え難く、資格無き者は触れただけでその命を失う。

<効果>:【******】【******】【****】【****】【俗人排斥】


「これは……」


 ここまで読み取れぬのはそれこそ蝶姫以来だろうか。重要なところはほとんど伏せ字となりまともに読むこともできず、そしてなにより仙人へと至らねば触れることさえ叶わぬという、凡夫は失せろと言わんばかりの文言。

 あんまりと言えばあんまりな内容に本座は言葉を失った。


――シュッ!


 その時である。

 理解不能な鑑定結果と目の前に浮く【万古仙命水】に気を取られ、一瞬の忘我にあった本座を予想外の奇襲が襲った。


「ぐぉっ!」


 その犯人(?)は【神獣之卵】。

 誰に操られるでもなくシステムの【倉庫】から飛び出したそれは、本座の頬を殴り飛ばしたそのままの勢いで、止める間もなく【万古仙命水】へと着水した。

 俗人であれば触れただけで殺すという恐ろしい【天材地宝】に、である。


「なんっ!?」


 急に卵が動き出したことも予想外ならば、【万古仙命水】へと着水したことも予想外のこと。

 いかに本座と言えど当然焦らぬはずがなく、すぐにでも掬い出そうとしたのだが既に卵は仙命水に覆われ、なにより着水時に散った飛沫は地に落ちることなく宙に浮いたままである。

 卵を守るように均等に広がるそれは、本座にとって掠めただけでも命取りとなる劇物。ゆえに本座にできることはただ距離をとるのみであった。


「…………ん?」


 事態が動いたのはすぐのことである。

 【神獣之卵】と【万古仙命水】は、共に【鑑定眼】が意味を為さぬ超常の物なれば、本座は【黒龍六眼】の能力を【心眼】へと切り替え、目的も両者の動向の観察へと切り替えた。


 隔離……というか剝離を諦めたわけでがないのだが、先の動きから卵が自ら仙命水の中に飛び込んだのならば、本座の掬おうとする動き自体がいらぬ世話となりかねない。

 そもそも卵は神獣のそれであるし、今の今まで卵が崩壊することなくまた活力も失わなかった以上、見守るのが吉であると考えたのだ。


「これは……」


 そして案の定。しばらくの間【心眼】で見守りつづけると、ある時から【万古仙命水】の膨大な霊気と共に未知の気が卵へと注がれ、卵はそれを吸収することでその大きさと活力を増していった。


――ピシッ……。


 丈が本座の胸当たりとなるまでそれほど時をかけず、以後は大きさは変わることなく霊気と未知の気を吸収し、水かさを半分ほどに減らした仙命水は役目を終えたかのように【倉庫】の中へと帰っていった。


 そして――。


――ピキ、ピキピキ……。


《おめでとうございます。【稀物(きぶつ)・神獣之卵】が孵化しました。あなたの伴生(ばんしょう)神獣は【麒麟(きりん)】です。伴生神獣は主と本源を預けた半霊半物の生命体です。大切にしてあげてください》


《報酬が付与されます》


《【心法・万古(ばんこ)通霊道典(つうれいどうてん)】を獲得しました》


 体長は二尺と少し。

 小鹿のような見た目だが、その体表は鱗と毛が混在した混合皮膚。

 そして息を吐く度に彩雲がかかり、頭にはまだ短い玉のような角がある。


 ……うむ、目出度い。目出度いことは間違いないが、鑑定すべきことがまた増えたな。さて鑑定。


〇【名付けてください】

・種族:麒麟族 **族 **族

・身分:天*守** 祥***

・地位:伴生**

・境地:***

・状態:幼体

<天賦>道骨:***骨

    天賦:*邪**

    天賦:*麟**

    天賦:宝鑑*瞳

    **:**鎮*

    **:****

    *脈:***脈

    *脈:***脈

    法*:**法*

    規*:***力


○【万古通霊道典】

<分類>:心法

<概要>:万霊と心を通わせ、伴う存在と共に魂を磨き上げる通霊功法。野の性を超え、霊性を高めて大道へ至る。

<効果>:精神感応力と霊覚を高め、霊的存在との意思疎通と共鳴を可能にする。契を結んだ存在と力・感覚・悟性が相互に増幅し、成長速度を向上させる。


 ふむ、やはり麒麟の方はほとんど読めぬか。まあそちらは仕方ない。

 そして心法の方は一見すると獣を御する御獣訣(ぎょじゅうけつ)……のようにも見えるが、それにしては相互への影響が大きい。あるいは南蛮の野獣宮の野獣心功の方が近いか? あれも人と獣が共に成長する功法と聞いている。

 まあこのような心法も手に入れたことだし、卵が孵ったからには育てねばなるまい。まずは名前から……。



◇◆◇



 おっと、忘れておったな。鑑定。


〇【太初真脈】

<分類>:真脈

<概要>:太初*****・****の系譜に連なる血脈。体内に太初の**を宿し【太初**】と共鳴する。魔道への完全適性を有し、魔気の威力を増大させると共に如何なる魔功であっても走火入魔に陥ることがない。【天魔血脈】の上位に位置する。

<効果>:魔功完全適性・魔功増大・太初**親和・****・****


 まあ、だろうな。冷仙月のそれを鑑定した時もこうであったわ。

 これから読み取れるのは、可読範囲の狭さから【剣仙真脈】よりも格上かもしれぬというぐらいか?


 これもおいおい検証していくとしよう。やるべきことが多いわ。


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