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【第一次序列大戦】其の五

◇◆◇ 天魔神教(てんまじんきょう) 潜魔館(せんまかん) 第一階層闘技場 第六公子 日月慶雲(じつげつけいうん) ◇◆◇



 さて第八回戦である。

 本日の対戦相手は、八俊第三位にして七魔直系家の嫡孫、王天翔(おうてんしょう)。昨日の王地狼とプロフィールが被っていると思うやもしれぬが、この世代の特に才ある者たちは大体こんな感じである。


 王天翔の出身である血天王家は、かつて始天魔と渡り合った血魔が興した家門であり、『幻』・『変』・『透』の真髄を極めた剣法の名家。第六・第七回戦の刀や槍も悪くはなかったが、やはり剣こそが本座の真骨頂である。八俊第三位という肩書を抜きにしても、なかなか楽しみな相手と言えよう。


 ではさっそく……と言いたいところなのだが、その前に七魔と七魔直系家についてそろそろちゃんとした説明をするべきであろう。

 些か長くなるが心して聞くがよい。



◇◆◇



 『始天魔』天白龍(てんはくりゅう)は天涯孤独の身であった。


 現代においてはその出自が仙界にあったことが判明しているが、当時において供もなく俗界に落とされた彼を天涯孤独と称するのは、何ら間違ってはいないのだろう。


 その俗界での長き旅路において、始天魔という恒星に引き寄せられた七人の傑出した魔人たち。いずれも当時の江湖武林を席巻した名であり、その気になれば魔道天下の世を作り出せたとも言われる先人たち。


 彼らこそが七魔であり、そしてその血と伝承を受け継ぐ者たちこそ言わずと知れた七魔直系家である。


 『剣魔』万剣魔尊、冷謡月(れいようげつ)

 『刀魔』音刀魔尊、木泉(もくせん)

 『血魔』血天魔尊、王天雄(おうてんゆう)

 『槍魔』槍海魔尊、王地征(おうちせい)

 『金魔』金掌魔尊、陸巨巌(りくきょがん)

 『暗魔』暗霊魔尊、白刻念(はくこくねん)

 『魂魔』魂終魔尊、無名。


 当時最大の殺門(さつもん)の後継者であった『暗魔』は、『始天魔』を標的とした刺客であったとか、雲南(うんなん)の武家出身の『金魔』は、詐欺師に騙され途方に暮れていたところを『始天魔』に助けられ舎弟となったとか。

 そんな個々人のエピソードもいろいろとあるようなのだが、とりあえず今は割愛とする。また機会があれば紹介しよう。


 長きに渡り力を蓄えてきた七魔直系家。

 その実力は底知れず、それぞれの家が単独で九派(きゅうは)一幇(いっぷう)や五大世家のような大勢力と正面から戦えるほどとも言われている。

 ……まあそのような大勢力・大門派は確実に隠された力を持っているものである。ゆえに本当に対等に渡り合えるかは定かではないが、そう称されるだけに相応しい力量を持っていることは間違いないのだろう。


 さて、かように高い実力と深い歴史を誇る七魔直系家であるが、実は『七』が強調される呼び方にも拘らず五つしか存在しない。


 『暗魔』の暗霊白家。

 『金魔』の金魔陸家。

 『槍魔』の槍海王家。

 『血魔』の血天王家。

 『剣魔』の万剣冷家。


 一つの家を除き何度か口の端に上げたこともあるゆえ覚えておる者もいよう。


 白刻影の母の出身である『暗魔』の暗霊白家。

 少し前に本座の左腕を破った陸巌門の家門である『金魔』の金魔陸家。

 第七回戦の相手であった王地狼の家門である『槍魔』の槍海王家。

 そして今回の第八回戦の相手である王天翔の家門、『血魔』の血天王家。


 残りの未だ本座と縁がない家は、おそらく決勝で相まみえることになるであろう冷仙月の家門、『剣魔』の万剣冷家である。


 家を残しておらぬのは刀魔と魂魔であるが、刀魔が三人の弟子に武功を伝承させたのに対し、魂魔はいくつかの術法や陣法を残した以外は特に弟子をとることもなかったとされている。


 これは当時の武功全盛の世において世にも珍しい術錬師(じゅつれんし)であった魂魔が、江湖から邪術の使い手として排斥されたことが原因と伝わっている。その代わりと言ってはなんだが、陣法で神教の重要施設を守ることで後代の術錬師の芽をつないでいるゆえ、何も残さなかったというわけでも無いのだろう。


 そして変わり種でいえばもう一つ。

 実は『剣魔』の万剣冷家は、正確に言えば『剣魔』のではなく、『剣魔の娘』の万剣冷家と言うのが正しいのだ。


 今は昔、『不敗剣后(ふはいけんごう)』と呼ばれ江湖をさすらう剣客であったとされる『剣魔』冷謡月。彼女はその放浪の果てに始天魔と出会い、数多の比武と共闘を繰り返すうちに伴侶となったと伝わっている。


 刀魔が女性であり始天魔の第二夫人であったことは少し前に話したと思うが、剣魔もまた女性であったことは話したことがなかったのではなかろうか。


 そう、彼女こそ二代天魔の母にして始天魔の第一夫人。

 そしてそんな彼女の娘。二代天魔の妹こそ万剣冷家の始祖である。


 当時の武林において不世出の巨星として称えられ、まさに天下第一人であった始天魔。

 そんな我らの始祖と最も長く鎬を削った血魔。

 始天魔の伴侶でありながら剣においては妥協を許さず生涯競い合った剣魔。


 この二人の武功を受け継ぐ万剣冷家と血天王家は、他の七魔直系家の一段上の実力を持つとされ、現代においても両家の家主は現教祖と太上教祖と共に【武天(ぶてん)九星(きゅうせい)】に数えられている。まさしく天魔神教の最高戦力の一角である。


 ……うむ、喋れば喋るほど本座の八回戦への期待値が上がっていくな。

 話すべきことは話した。そろそろ試合へと参ろうか。



◇◆◇



 ………………。


血進剣法(けっしんけんぽう)第一招式、血牙突刃(けつがとつじん)!」


「三才剣法第二招式、横掃千軍(おうそうせんぐん)


 ……うむ、これはあれだな。


「血進剣法第二招式、血幻連斬(けつげんれんざん)! 血進剣法第四招式、血梅傘網(けつばいさんもう)!」


「三才剣法第一招、仙人之路(せんにんしろ)。三才剣法第三招、泰山圧頂(たいざんあっちょう)


 端的に言えば……そう、相性が良すぎるな。三才剣法程度で対処できるほどに。


「血進剣法第五招式、血響断空(けっきょうだんくう)!」


「三才剣法第三招、泰山圧頂」


 誤解を招かぬように訂正しておくが、当然弱いわけでは無い。

 鑑定結果もこのとおりである。


◇【王天翔】

・種族:人族

・身分:潜魔

・地位:潜魔

・境地:一流

<天賦>武骨:血霊之体(けつれいのたい)<A>

    血脈:血尊血脈(けっそんけつみゃく)

    体質:無病長寿

<功法>心法:魔泉(ません)心法 四成

    剣法:血進剣法


〇詳細情報を閲覧する YES/NO



 この【血霊之体】はAランク武骨の中でも上位に位置する代物である。さらに【血尊血脈】も保有し何らかの霊薬も服用している。

 ゆえに資質がもの足りぬというわけでは全くない。


 全くないはずなのだが……。 


「血進剣法第六招式、進血武血(しんけつぶけつ)!」


「……血進剣法第一招式、血牙突刃」


 ……やはりそうよな。


 先ほども言ったように、簡単に言えば相性の差。

 より詳しく言うのであれば、王天翔の使う【血進剣法】に宿る『変』と『幻』の妙理が本座の【眼】をまるで欺けておらぬのである。

 ……正確には本座の超感覚を、というべきか。


「血進剣法第三招式、血浸透破(けっしんとうは)!」


 三才剣法……否。

 血進剣法……否。

 ()()()()


「――フッ!」


 うむ。ここまで見えて聞こえて感じ取れるのであれば、もはや招式すら必要とせぬな。


 【血進剣法】は『変』と『幻』を操ることで、剣の間合いや軌道を変化させ防御困難の攻撃を成す剣法であり、【血天大羅(けってんだいら)剣法】に連なる基本功である。


 本来であれば極めて厄介な剣法であるはずのそれは、変化を作り出すための手首の力を抜く瞬間を認識できる本座にとって、そこを突くだけで招式を破壊できる極めて対処の容易い武功へと化けてしまったのだ。


「――っ!?……」


 三才剣法で名門の基本功に対抗するというのもなかなか舐めた対応であったが、今のは招式すら使わず強く剣を振るっただけ。

 そのことから彼我の戦闘力の差を感じ取れぬようでは、武人など志すべきではない。


 今少し楽しみたい気持ちはあったのだが仕方ない。出来そうであったからやってしまったのだ。


「……参りました」


「そこまで! 勝者、日月慶雲!」


 とはいってもあそこまで期待を煽った身としては、やはり物足りぬとしか言えぬな。


 まあ【血進剣法】も第六招式まで見ることができたし、『変』も『幻』もその骨子は得ることができた。

 とりあえず目的は果たしたと考えてよかろう。


 次に期待である。


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