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【第一次序列大戦】其の一

◇◆◇ 天魔神教(てんまじんきょう) 潜魔館(せんまかん) 第一階層闘技場 第六公子 日月慶雲(じつげつけいうん) ◇◆◇



「それではこれより初年度潜魔【第一次序列大戦】本選を開始する! 名を呼ばれた者は舞台の上に上がり戦え! 『強者尊』の教義に則り、勝ち上がるごとに褒賞はより豪華なものになる! 己が強さを見せつけるのだ!」


「「「「うおおおおおおおっ!!!」」」」


 ……二階主か。相変わらず煽るのが上手いものだ。特にこの文言は実に見事よ。どのようにして作っているのであろうか?

 単に二階主に扇動家としての素質があるのか、あるいはテンプレをそのまま読み上げてこちらが勝手に熱狂しているだけなのか。どちらもありそうなところよな。


 というわけで本日。ついに【第一次序列大戦】の本選が始まるのである。


 先日も申したと思うがこの序列大戦はトーナメント制となっている。特にこの【第一次序列大戦】は、大戦開始時に魔泉心法四成の境地にあるものがシードとして本選からの出場となるため、本選出場枠は128を下限とした2の乗数となるように調節されている。


 今回の枠は1024名。


 あるいは諸君は、本選と称しながらのこの人数を少し多すぎるとでも思うのかもしれないが、本選出場というのはそれだけで褒賞が出ることなのである。

 臣下の多い本座にとって枠は多ければ多いほど良いものであるゆえ、皆々にはどうか口を噤んでおかれよ。


 それはともかく何やら褒賞の準備に動く者たちから、()()呻き声が聞こえる気がするがおそらく気のせいであろう。呻き声であれ、悲鳴であれ、歓声であれ、本座にはナニモキコエナカッタ。

 まあ確かに、そろそろ褒賞となる丹薬を錬成する【術錬師】たちから怒られそうな気はしないでもないのだが、こちらには手加減する道理もなければ理由もない。怒鳴り込んでくる者がおれば【術道】への人脈ができたとでも考えるとしよう。


 つい先日行われた予選において争われた62の本選出場枠。

 これは本座の臣下が30席、家門学習組の者が32席を奪い決着となった。

 できればすべての席を臣下たちで埋め尽くすことができていればそれに越したことは無かったのだが、とある理由からどうしても家門学習組が有利な面がある。此度の半数に満たぬ結果であってもなかなかに健闘したとも言えるのだ。


 まあそれでも本選出場1024枠の内、実に911名が我が臣下である。

 まさしく独占という結果に、臣下への喜びやらその他の者への落胆やらといろいろと思うところがないでもないのだが、我が臣下にも及ばぬ者には興味を持っても仕方がないというもの。上澄みである残りの112名に期待するとしよう。


 特に上澄みの中でも突出した才を持つ【八俊】。

 トーナメントであるゆえ本座にはどうすることもできぬが、家門学習組の天才たちである彼らとは出来得る限り多く戦いたいものだ。



◇◆◇



――カンッ! カカンッ!

――コッ! ギンッ!

――ドガッ! ドゴッ!


 ついに始まった【第一次序列大戦】。

 舞台上では128名の潜魔が戦い、観客席は上級生である年上の潜魔たちで埋め尽くされていた。どうやら序列戦は自由に見学できる仕組みとなっているらしい。


 以前来た時と観客席の広さが違うようにも思えるのだが、そもそも舞台が変形して62試合が同時に行われていることを思えば左程に気に留めるようなことでもない。

 トーナメント出場枠が1024名なれば、第一回戦のみで512試合も行われることになる。1試合ずつ進めていくようでは何日分の日が暮れるのかとも思っていたのだが、そこはしっかりと考えられているようだ。一度に62試合を行いそれを八回転もすれば終わるようになっている。


 正直なところ1024名と初めて聞いた時には、この序列大戦は何十日かけて行われるのかとも思っていたのだが、流石にその辺は考慮されていたらしい。天魔神教内部の序列を定める重要な行事・【神教聖火連】も参加者が多いと聞くゆえ、あるいはそちらを参考にしているのかもしれぬな。


 そして現在。本座が何をしているのかと言えば、試合をとうに終え初年度潜魔に割り当てられた観客席で元気に観戦していた。白刻影を始めとした臣下たちも一緒である。


 既に敗退して試合観戦に回った、というわけでは当然無い。訳あってすぐに試合が終わったため、重要人物の観察や臣下たちの応援も兼ねて観戦に回っているというだけである。


 そして本座の試合について語らぬのも特に大きな理由があるわけでは無い。言ってしまえばごくごく単純な理屈から、酷く盛り上がりに欠けるゆえ飛ばしたのだ。


 先も申したように【第一次序列大戦】の本選出場者1024名の内、911名が臣下たちである。

 割合にすればほぼ九割ともいえるこの人数は、今回の序列大戦のトーナメント表のほとんどを埋め尽くし、案の定というべきか本座の第一回戦の相手も臣下の一人であった。


 実は第五回戦までの本座の相手は、誰が勝ち上がってこようとも必ず本座の臣下と当たることになるゆえ、いっそ語らずに済まそうと思う。

 ……諸君らもわずか三度剣を合わせただけで終わるような、本座のつまらん対戦など聞いても仕方がなかろう?



◇◆◇


 

 さてさっさと五回戦までの時間を飛ばしても良いのだが、その前に先ほど話した【八俊】の紹介をしておくとしよう。


 少し前の挨拶の際、家門学習組に興味深い者がいると言ったことを覚えているだろうか?

 あの場にあってこちらに頑として興味を向けなかった者たち、それがまさにこやつらである。


 【八俊】とは家門学習組と呼ばれる、幼魔館を経ずに潜魔館に入館した者たちの中でも特に秀でた才を持つとされる八人の天才たちである。


 全員が名門名家の生まれで魔尊・魔君を両親祖父母に持つエリートたちであるが、特に上位の四名は七魔の直系という天魔神教において天家に次いで尊貴とされる名門の子女だ。

 我らが咬ませ犬こと、家門学習組の代表者の趙誠も当然上位四名に名を連ねている。


 一応、趙誠は天家の傍系であり七魔の血統とは少し違うのだが、それでも骸塔魔君から受け継がれる刀法は【刀魔】と呼ばれた七魔の武功であり、その刀魔の血脈である【刀尊血脈】を保有している以上七魔の直系と言っても何ら不足はない。


 まあ大雑把な紹介はこんなものでよかろう。

 あるいは一人一人の詳しい紹介でもすべきかもしれぬが、それはまた対戦する時にでも機会があればということで。


 結局、こやつらは如何に天才たちと称されても、例外である()()を除けば陸巌門や白刻影と左程変わらぬ程度の才しか持たぬ者たちであり、神教の歴史を遡ればいくらでも出てくるような一山いくらの天才なのだ。

 いかに褒め称えられようとも例外とした()()も含めても、我が従妹・蝶姫はおろか本座にさえ遠く及ばぬ俗界の天才程度でしかないのである。


 そんな彼ら彼女らの()()に過度な期待を寄せることは深い落胆を生みかねぬし、身に余る期待は可哀想というものである。

 傘下に降るのであれば今少し興味を持ってやっても良いのだが、そうでないならば今はこの程度でよかろう。


 ところで前言を返すようであるが少し期待している点も実はないでもない。

 一般に、というのも妙ではあるが、通常この【第一次序列大戦】において家門学習組は圧倒的な有利を得ているとされている。

 家門学習組は幼魔館に入らぬ代わりに、家門で教育を受けその才を磨くことになる。中には子離れができぬがゆえに家門での教育を選ぶ親も存在するが、建前上は家門にて幼魔館より優れた教育を施すことを目的とした制度である。


 ではどこから圧倒的有利という言葉が出てきたのか。それは事前に学んでいる家門の武功という要素にほかならぬ。


 多くの、というか通常の幼魔館出身者の場合、使用する武功は先日習得したあの5種に限られる。それ以外の武功に触れてない以上は当然のことだ。

 しかし家門学習組は家門で習得した武功を展開できるため、戦いの際に選びうる選択肢はもとより武学の深みに圧倒的な差が生じる。特に名門とされる家の【基本功】を身に付けた者には基礎武功では勝てぬとされるほどだ。


 とは言っても武骨のランクが違うほどの武才をひっくり返せるほどではなく、臣下たちの勝率を下げる要因にはなれど、本座にとっては脅威となるほどではない。

 だが名門名家の子女が展開する武功は、その武功に宿る悟りや理念そのものが絶頂の境地に至るためのこの上なく価値のある餌となる。


 さてさていろいろと語ったが重要なことは一つである。

 家門学習組の者たちと戦うことで多くの武学を知ることだ。


 順当に行けば第六回戦で【八俊】の一人と当たる。

 この者は下位の四名のうちの一人であるゆえそれほど大きな期待はかけておらぬが、それでもそれなりに楽しみだ。

 そしてさらに勝ち進んでいけば【八俊】の上位四名全員と当たることとなっている。

 フッ、なかなか本座に都合の良いことになっておるであろう。幸先がよいわ。


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