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【第一次序列大戦】其の零

◇◆◇ 天魔神教(てんまじんきょう) 潜魔館(せんまかん) 第二階層 第六公子 日月慶雲(じつげつけいうん) ◇◆◇



 すぐに他の潜魔たちが目覚め始め、此度の魔尊の個人指導は本座と魔尊と教官たちの間での秘密になった。


 まるで指導が終わるのを待っていたかのように次々と目覚める様子は、その覚醒が夢瞳魔尊(むどうまそん)の恣意により操作されたことを意味している。

 偶然早く目覚めたおかげで魔尊の指導を受ける幸運を得た、という本座の考えは随分と的外れのものであったらしい。


 これは本座の勘違いであったのだが、五種の武功で『可』以上の評価を下されてもその者が得られるのは脱出を選択する権利であり、特にその事がアナウンスされるという訳でもないそうだ。

 ゆえに殆どの者がその権利に気付かず、そのままより高い評価を目指して継続するという。


 だが一方で、五種の武功すべてで『最』の評価を得た者はいち早く心象世界から叩き出され、潜魔館で最高位の位階を持つ者(すなわち夢瞳魔尊)から個人指導が受けられるのだ。


 そもそも基礎武功教育の場に限らず、幼魔館・潜魔館の総責任者たる夢瞳魔尊がその力を振るうことはそう多くない。

 今回の場合において、そのような特典を得たのは第一組の魔泉心法四成にある者たちのみでありそういった者たちは得てして勤勉である。


 誰に邪魔されるでもない心象世界。

 そのような素晴らしい環境から、怠惰にもさっさと脱出しようと試みる者はそういるものではなく、それゆえにこのような方式が成り立つのであろう。


 とどのつまり、この個人指導は潜魔館における功に対する褒賞の一種なのだ。


 こうした開示されていない条件に対する褒賞もあるのであれば、これなる上は更に慎重に修練をしていかねばなるまい。



◇◆◇



 そして本日である。

 夢瞳魔尊による基礎武功講義より早一月。我ら初年度潜魔の序列戦開始は明日に迫っていた。


 明日行われるのは【第一次序列大戦】。

 初年度潜魔たちの序列を決める大事な行事であり、この結果を以て初めて我らも【潜魔序列】に列され、この潜魔館の血沸き肉躍る争いの渦中へと身を投じていくことになる。


 ついに明日は本番……と言いたいところであるが、明日から始まるのは【第一次序列大戦】の予選である。

 二流以下、つまり魔泉心法三成以下の者が参加し本選出場の枠を奪い合うことになるのだが、本座のような魔泉心法四成以上の者は本選からの出場となるゆえ少し日が空くことになる。


「――参ります! ハッ!」


 ――カンッ!


 ということで本座は今、共に本選からの出場となる臣下たちと対練を繰り返していた。

 今の相手は白刻影(はくこくえい)だ。


「フッ!」


 ――コッ!


 本座の保有する【体質・超感覚】系の天賦は相手の動きをつぶさに捉え、【三頭千魔(さんとうせんま)】の【天脳覚知(てんのうかくち)】は【理智海賢(りちかいけん)神功】で極大化され、強化された頭脳が【超感覚】が捉えた膨大な情報を過不足なく処理する。

 さらに【覇体恒星身(はたいこうせいしん)】により強化された肉体と身体能力をもってすれば、このような思考の最中であっても対練をこなしていくことは容易い。

 ……まあそもそも本座のための対練というよりも、臣下たちを鍛えるための修行の一貫であるからな。


 ゆえにこの思考に生じる暇をつぶすためにも、対練の片手間で済まぬがこの一か月での出来事や生じた変化でも語っていくとしよう。


「シッ!」


――カカンッ!


 まずは基礎武功教育の次の日のことだ。

 我ら初年度潜魔たちは身法の教育を受けた。


 内功を用いて体を軽くする軽身法(けいしんほう)

 内功を用いて体を重くする重身法(じゅうしんほう)

 内功を用いて骨格や筋肉の形を変え肉体の形を変化させる縮骨功(しゅくこつこう)

 呼吸や心拍を操り体を仮死状態に近づける亀息大法(きそくだいほう)


 己の肉体の特殊な操作が肝であるゆえか、先日のように突然心象世界に引きずり込まれるようなことは無く、普通に教官たちからの指導を受けることになった。

 当然のごとく本座が最も早く習得し、次席は骸塔魔君(がいとうまくん)の子であるSランク武骨の天才児・趙誠(ちょうせい)。次席に僅差で遅れて三番目となったのは本座の右腕たる白刻影であった。

 刻影の武骨はAランクでしかないが、奴が保有する【暗霊血脈】は身法の類への適正が高く、Sランク武骨に匹敵するほどの補正を見せたようだ。


 本座のもう一人の側近たる左腕の羅厳白(らげんぱく)は上位二十名まで数えてようやくと言ったところであったが、今回入館となった初年度潜魔たちはいわゆる大豊作の世代である。魔尊の孫やら魔君の子やら七魔の血統やらと、名門名家が集う中での一般武家の子息の順位では大健闘と言っても良いだろう。


「セイッ!」


――シャッ!


 だが発展途上である現在はさておくとしても、今後も本座の両腕たる二人が人後に落ちるということは、本座の面子からしても感情からしてもあってはならぬこと。


 ということで両者に対する激励と褒美を兼ねて【玄魔養生功】と共に本座を支える三本の柱となる予定の新功法、【覇体恒星身】と【明月錬魂法(めいげつれんこんほう)】を両者に伝授することでテコ入れすることにした。

 ……ん、新しいとは言えぬ? いや新功法であろう? 少し間が空いたゆえそうは思えぬかもしれぬが、未だ手に入れてからひと月と十日ほどしか経っておらぬわ。


「第二招『横掃千軍(おうそうせんぐん)』」


「くぅっ! ……参りました」


 まあそのような新旧の定義はどうでもよいが、とりあえず下賜した甲斐はあったようだ。

 常ならば三合も打ち合えば勝敗の付くところであるが、今回の刻影は五合ほど耐え抜いた。二つの新功法を下賜して間もないことを思えば、なかなかに先が楽しみと言えよう。


「次、厳白。参れ」


「応ッ!」


――ガッ!


 次の対練の相手は羅厳白であるが、こちらも思考に生じる暇をつぶせるほどの手練れというわけではない。このひと月の出来事に話を戻すとしよう。


 我らが身法の教えを受けた次の日は【点穴法(てんけつほう)】や【陰潜術(いんせんじゅつ)】などの江湖で役立つ技術が授けられた。


 点穴法は対象のツボを突いて経脈を遮断する術であり、陰潜術は気配の隠し方や足音の消し方に代表される隠密の技術である。


 点穴法が分かりにくければ、北〇の拳の北〇神拳とでも思えばよい。まあ、あれも元々の北〇宗家の拳法に点穴法が合流してあのような形に成ったらしいのが……、そちらはどうでもよいか。


 とりあえず諸君の点穴法について認識は、対象の声を封じるツボである啞穴(あけつ)と、対象を麻痺させるツボである麻穴(まけつ)、そして対象を失神させる暈穴(うんけつ)というよく使われるツボだけ覚えておけば今後困ることは無いと思えばよい。


 その後は講義の類はなく、自身で武功研究を行い序列戦へと備える日々となった。


「ジャッ!」


――カカンッ!


 現在の初年度潜魔全体の一流武人の数は962名で、その内本座の臣下の数は882名。

 このひと月で四成の成就を成し遂げた者も増え続け、一流の境地にある者が組み込まれる組は第二組にまで拡張された。


 増えた者は本座の臣下がほとんどであり、全体としてもこの一か月で倍以上に増えたことになる。

 やはりあの時の『あとひと月もあれば』という予想は的を得ていたようだ。


 本座を頂点とする勢力はその圧倒的な成果からカリスマ性を帯び始め、傘下への申し出も増えてきた。今回の【序列大戦】が終わり次第、その勢力拡大へと動くことになるであろう。

 侮りから憧憬への落差も効いたが、本座の神秘的とも称される外見もカリスマにおいてプラスに働いたようだ。父母に感謝である。


「ガァッ!」


――シャシャッ!


 今回の序列戦では本選の出場枠は1024で残りは62枠。

 シード枠がないトーナメント表のため全員に平等が図られ、本選出場が確約されている四成の人数が収まる範囲の2の乗数となっている。


「シッ!」


――カカカカンッ!


 本座の臣下たちには全員に本選に出場してほしかったのだが、どうあがいても枠が足りぬのが現状だ。


 だがそれでこその『強者尊』。それでこその天魔神教よ。

 逆境は武人を育てるとも聞くゆえ、這い上がってくることを期待しよう。


「第一招『泰山圧頂(たいざんあっちょう)』」


「ぐっ! ……降参します」


 ……ふむ、厳白も五合まで保ったか。こちらも先が楽しみよ。

 こやつこそ陸巌門(りくがんもん)とでも当たって、逆境を乗り越えてくれればもっと面白いのだがな。


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