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第零戦記 INFILTRATED ONE

処女作

 覚醒後、赤髪ロン毛の男性に抱えられている事に気づいた。

 

「起きたね」

 

 早速寝起きの脳に、彼にこの世界と自分の状況を無理やり叩き込まれた。


 ―――――――――――――――――――――

 

 いいかい、君は死んだ。元には戻れない。残念だが諦めてくれ。

 

 ここは地獄か、天国か、まぁ所謂死後の世界だ。言いようによれば地獄だがね。天使も悪魔も神も居ない。代わりに、僕とキミみたいな死者しか居ない。


 この世界は全面戦争中でね、死者が集まって小さな部族、もとい国家を設立し、国家同士戦争したり貿易したりして、各々のメンバーを養っているんだ。とどのつまり戦国時代だな。


 戦争と言っても銃や刀で戦う訳じゃない。この世界の全員、超能力が使えるんだ。見たことあるだろう、ハンドパワー!ってのを。あれの超スゴイヤツで戦うのだ。


 超能力は一人一人違う。似たようなモノやそもそも同じモノもあるが…君にもあるはずだ。


 ―――――――――――――――――――――


 情報の洪水で頭が働かない。現実を受け入れることを精神が拒否している。しかし、それは死が受け入れられなかったからでは無い。

 

 生前の大学3年頃、ふとした拍子で転んだ事から始まる。見ると血が滲むほどの傷であった。友人のからかいもあった為、傷は放っておくことにした。

 数日後、目が覚めると、重い風邪のような症状に気づき、測ると体温もかなりのものであった。しめたものとバイト先やらサークル先やらに電話を入れ、臨時休暇を満喫する。しかし、何日寝ても何日醒めてもちっとも良くならない。醒めた場所がキッチンであり、失神したことに気づいた事でようやく病院に向かった。

 検査室にて、白血病による敗血症、余命半年という、日和心には熱すぎる診断結果を受け、俺の心はグズグズになるまで煮立たれた。その後死ぬまでの半年間、ずっと否定し憤怒し模索し絶望していた。

 幸運にもその半年間にて、私は死に向き合うことが出来た。故に今、私は死に対してではなく、この戦争中とかいうディストピアに存在していることに対して、受け入れることが出来ていないのだ。

 

 私は…何をすればいいんだろうか?

 全面戦争ってのが本当で、それが小さな国家同士なら、私だって死の瀬戸際に立たされるだろう。もしそうなったら、私は人を殺せるだろうか?いや…出来そうにない。しかし、殺すのを恐れて死ぬにしても、散々覚悟したというのに、今、希望が脚に縋り付いて離れない。

 いや、そもそもこれは現実なのだろうか?人間の死後、脳から外れた魂が夢見る決して醒めない夢のような

「そうだ、君の超能力を聞いておこう」

 

 …悩みを掻き分け、ロン毛が割り込んでくる。

 超能力と言われても、知ったことか。次に返す言葉にそんなこと言われても…を持ち出したかったが、まるで既に知っているように、脳がその答えを提示している。

 

「…[停止(OVERCLOCK)]?」

「へぇ、いいじゃん……なら、試しになんか止めてみてよ」

 

 そう思って、手頃な物体に試そうとしようと周囲を見渡し、そうして初めてここが砂漠であることに気がついた。

 

「なんかって…この辺何も無いぞ」

「それもそうか。なら、これ」

ロン毛はポケットから服のボタンを取り出す。

「止めてみな」

そのままコイントス方式で打ち上げた。

 

 私は止める方法について、やはりこれも知らない内に知っていたので、ボタンに向かってむっとするように力を込めた。


 瞬間、ボタンは()()()()()()()()()()()

…吹き飛んだ。言い直したのは、後方を確認した際発見した、影が際立つ程に大きなクレーターが、ボタンの行末を暗示していた為である。


「…ううん。今まで色んな能力に出会ってきたけど、こんなに名前とかけ離れているのは初めてだな」


 知らないことが知らない挙動をし、それに意表を突かれる形で驚かされるのは、想像よりも奇妙だ。驚いている理由さえも分からないのだから。


「マジで…どうなってるんだ?これは…ここも…俺も…」

「うーん。やっぱり新入りくんには落ち着く時間が必要みたいだ。一度休憩してから出発するとしよう…」


 

 休憩中、ロン毛は私の5歳児の如く湧き出る質問に真摯に答えてくれた。


――――――――――――――――――――――


 ここは砂漠の大陸。文字通り見渡す限りの砂漠であり、人の住めないような環境であるかに思われる。だが、昼夜一貫して気温はさほど高くも低くもなく、地中には大量の水とそこに住まう生態系がある故食事には困らず、さらに地下環境に一定の材木、鉱石もあるため、快適とは行かずともかなり生きやすい環境なのだ。


 先程戦争中と言ったが、実はここ砂漠の大陸は各大陸中最も平和として知られている。異なる国の先遣隊同士がばったり会っても、30%くらいの確率で素通りになるくらいには平和なのだ。


 超能力とは成長するものであり、また使用者は常にその限界、性能を把握している。まるで熟練のコックが即興の料理を作る際、入れる調味料の量、材料の火入れの加減を勘で決めるように。

そして超能力を使う上で最も重要なのが…

 

――――――――――――――――――――――


 「通称レリック。占い師が水晶玉を持たないと占えないように、俺達もレリックを持たないと超能力をフルに使えない。レリックは、やはり能力事に異なる…」

「待て待て、さっきのボタンの件もそのレリーフとやらが無かったから起こったんじゃないのか?」


 ロン毛はあからさまに申し訳なさそうな顔を見せる。コイツマジか。

 

「…それについて、順を追って説明してから謝罪しようとしてたんだ。すまなかった。停止能力を間違った使い方するだけでああなると思わなくてね。もっと君が爆発とか…ブツブツ…」


 ロン毛の言い訳はそこそこ長引いた。コイツムカつくな…


「分かった。分かった。とりあえずそのリリースとやらはどこで手に入る?」

「…ああ、()()()()だ。それは人によって違うから、他の…ッ!」


 ロン毛は腰に着けた日本刀を抜き、周囲を見渡す。日本刀…あるのか。


「新入りくん!何処かに隠れてくれ!」


 ロン毛が、今までとは異なる表情を浮かべている。とりあえず例のクレーターに隠れる。

 敵か。確かに、耳を澄ますと甲高い金属音のような音がする。


「いいか、この足音をよく覚えろ。サ国の奴らの警告色だ」


 近づく金属音は、明らかに駆動音ではない、正しく警告するように不協和音を奏でている。耳が痛む。


「其処処処二隠レテ居ルルオ方、方。出出、出出出出さい」


 それは人の声を真似た機械音であった。クレーターのせいで姿が見えない。おそらく見ると気づかれるだろう。


「はい、僕だよ」

「ドドミ国、国隊長サンンンンン。ンニニチニチワ」

「オマチクサイカレハスウシュウカンマエニカイコサレタトイウウワサカナカレテオリケンサイカレヲシマツシテモトミコクノハンカンヲカウコトハケツシテナイテショウ」

「我 問 何 是 逃 超 殺」

「支持持持持持持ス!」


 サ国の奴らは複数いる。半分何を言ってるか分からないが、確かにこちらに殺意を持っている。

 しかし、あのロン毛にターゲットが向いているのは幸運だ。いざとなれば見捨てて…


「然 我 問 後 人 畜」

「見タタ所、死ニタタテテ。捕縛縛シテテテテ、テスノガ良良良」

「ワタシモソノイケンニハサンセイテスカレヲミスミスミノカスリユウハアリマセンシカシウリハラウホウカトクサクカオワタシハオモイマス」

「否 畜 苦 等 サ 悦 故」

「サコクテハナクテアナタタチノヨロコヒテシヨウトノミチカレハイケトリニシテタイチヨウハコロシマシヨウキロンハソレカラテモオソクナイテシヨウ」

「支ス!」


 …これ俺も狙われてるな。

くぅ〜疲れました!これにてプロローグ完遂です!


まだプロローグかァ…

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