まずは自分の懐を癒す
ワーキングプアで今日も疲れて帰るヨレヨレのスーツを着た五十路の譲治(男)。
日課になっている帰宅途中の歩道脇にある地蔵に今日も手を合わせる信心深さ。
小さな地蔵で赤い涎掛けをして小さな屋根のついた台座に立っている。
周りには小さな木製の柵が張り巡らされていて地蔵の前には賽銭箱が置かれている。
明日こそ金持ちになれますように。貧しい生活が楽になればよいなとほぼ毎日地蔵へ祈りをささげている。
祈りを終え振り返ると、赤いランドセルを背負った小学生の女の子が8tトラックに轢かれそうになっていたので少女を助けると代わりに自分はひかれあの天国に召された。
光の空間で神様から、「少し功徳を積んだ」から異世界に転生できると説明を受けた。
3年後に復活する悪の魔族王を倒すべく異世界に送る魂24人の一人に選出したそうな。
魔族に見つからないように中級までの能力しか与えられないが、転生ボーナス【鑑定スキル】と【取得経験値3倍】とマジックバッグ【小】をくれるそうな。
希望の職を聞かれたので地球では金に苦労したので、「貧乏を回復できる魔法士」を希望した。
【聖魔法】に(貧乏)回復魔法【小】をつけてくれると言われた。難しい要求なので魔法は中級では無く初級しかやらんといわれたので、初級回復魔法と初級補助魔法を2つ希望を通した。
殺傷するような攻撃は性に合わないと説得。
仮に悪の大魔王にやられるとしても、それまでは明るく生きたい。
空間収納魔法も欲しいと言ったが、魔法は初級で2つあるので断られた。
晴れて異世界の礼拝堂に転生した。
鑑定スキルで自分をまず鑑定すると
ジョージ (15歳) 男性
レベル 1
職業 魔法士
魔法属性 【聖(初級lv1)】【補助(初級lv1)】
HP 25
MP 35
攻撃力 3
防御力 6
知能 27
信仰心 30
素早さ 5
運 3
武器 無し
防具 布の服
布の靴
アクセサリー 無し
スキル【鑑定】 【取得経験値3倍】
魔法 【聖魔法】(初級)小回復 (初級)〈貧乏〉小回復 (初級)状態異常回復
【補助魔法】 (初級)肉体強化 (初級)魔法強化 (初級)隠密
さらに鑑定で分かったのは、職業と属性魔法で、知能と信仰心の値が大幅に底上げされていた。
知能の素の値は2か。
非常に残念な数字だが、リアルにそんなものだろう。レベル1だし魔王復活までは3年もあるから、実力をつけて行こう。
とりあえず転生冒険ものの定番、冒険者ギルドを目指そうと思う。
持ち物を確認すると所持金は無いので念願の〈貧乏〉回復魔法を試しす。
鑑定スキルで魔法の唱え方を調べた。
〈貧乏〉回復魔法は対象者の手のひらにカネを作り出す魔法だった。周りに人はいなかったので早速に手のひらを上に向け自分へ小回復と唱えた。
ふわりとカネのお札に見える紙が手のひらに乗った。鑑定スキルで調べると1万プラチナ札×10枚だった。
1プラチナは日本の1円と同じくらいの価値らしい。
興奮した。ドキドキした。
手にした10万プラチナを腰にあったポシェット型のマジックバックに入れた。もっと金が欲しかったのでもう一度〈貧乏〉小回復を唱えたら、次は5万プラチナが出てきた。MPを見たら6減っていたので鑑定スキルで確認すると1回の消費MPは3だった。
1回で10万プラチナ、2回唱えて1.5倍の15万プラチナまでしか回復しない。一人に1日3回まで掛けられるとあり制限厳しい。
初級〈貧乏〉小回復だからスキルレベルが上がるともっと増えるのだろう。
マジックバッグに入れても持ってるのと同カウントされてしまうので15万プラチナ以上には今は増やせないようだ。
5万プラチナもマジックバッグに入れて、礼拝堂を出た。
町を歩くとまばらに人が歩いていた。中世欧米風の恰好をしていた。家はレンガ造りっぽい。
言葉は普通に通じたので場所を確認して冒険者ギルドへを目指した。
少し歩いた街の雰囲気も中欧風で通路の端には多数のホームレスも見受けられた。
途中で鑑定スキルを使い他人のステータスを見た。たいていの人はステータスは一桁で1~6くらいで知能2は珍しく無かった。平均は3~4。
冒険者ギルドまで魔法士という職業は見なかった。
大きな冒険者ギルドに入り周りを見回すと午後の時間だが人はまばらだった。
受付に冒険者希望を伝えると週に1回ある冒険者資格試験は2日後にあると教えてもらった。
受験料は5万プラチナで返金なしで合格者の木級冒険者登録料は無料だそうだ。
試験日は近いのですぐ申し込んだ。合格率を尋ねると、受験者の1~3割程度らしい。狭き門だ。
しかし魔法の才能のある人は100に1人いるかいないかの中、冒険者を目指す人は少数派なので魔法士であれば最低限以上の装備をし魔法を見せれば木級は合格らしい。
冒険者ランクは初級の木から、鉄、銅、銀、金、プラチナ級と6階級。
続けて行けば8割の冒険者は鉄級に昇格できるが、鉄級から銅級へ昇格できるのは2割程度らしい。
銀級に昇格できるのは、受験者1万人に一人。
銀級冒険者になれば上流階級の人間とみなされるそうだ。
冒険者資格試験の受付嬢に冒険ギルドQ&Aコーナーを教えられ、冒険者ギルドQ&Aコーナーに置いてある本からの情報だ。
魔法士についての情報も調べ、魔法士はレアであり12属性あり、【水】や【木】は500人に一人しかおらず、属性の中でも【光】【聖】【召喚】 属性はレア中のレアであり数千人に一人らしい。
「魔法の才能を下さってありがとうございます」と神様に心の中で感謝した。
他に調べたことではレベル1あがるごとに魔法を1つ覚えられる。魔法の習得は基本的に魔法書からでありダンジョンの宝箱などに魔法書は入っていて冒険者たちが持ち帰る。魔法書は高値で取引されるらしい。
数時間程調べていたが冒険者ギルドQ&Aの情報量は多かったので日数をかけて読んでいこうと思い、宿や武器屋や魔法屋を調べてから冒険者ギルドを出た。
宿は少し良さそうな1泊1万プラチナの中クラスの宿に。
冒険者試験の終わる日の夜の分までの3連泊分支払うことにした。
その後、宿から武器屋を目指す。
武器屋は広く洋服やと家電量販店を合わせたような雰囲気だった。
吊ってあった魔法士用の初級ローブと冒険者用の靴や小物を買ってカネを使い切った。
今日あと1回使える〈貧乏〉回復魔法を使おうと思う。
いったん宿に戻り鑑定で調べると魔法強化の効果は効果×1.2倍だったので魔法強化を発声し手のひらを上に向け自分へ〈貧乏〉回復魔法を唱えた。
手のひらに12万プラチナ札がふわりと乗っていた。
1万プラチナ未満の少額はカウントされなかった。喜びに満ち溢れ希望に満ちた気持ちになった。
手のひらに12万プラチナをしまい、試しにもう一度〈貧乏〉回復魔法を唱えたが効果は無かった。MPも減らなかった。1日3回の制限のせいだろう。
〈貧乏〉回復しないとMPも減らないようだ。
再び武器屋に戻り左手装備の安物の〈木の小盾〉8万Pを買い装備を冒険者っぽくした。
最後は懸案は右手装備だ。
一番安い魔法に使える装備はスティック。細い枝のような魔法媒体。
右手武器は小剣でも杖でも良いのだが値段と重さと効果を考えるとスティックにしようと。
鑑定スキルで置いてある武器を見ると60万プラチナの聖なるスティックに回復魔法1.5倍の効果を確認した。
回復魔法に最適なのは聖魔法だが、他のいくつかの属性でも小回復は使える。水属性や光属性、木属性でも効果あると武器屋の武器の説明欄にかかれている。
あいにく〈貧乏〉回復魔法で増やせたカネは2回で+15万P。
今日はもう唱えられないので明日は補助魔法込みで試してみたいが足らないだろう。
税金で+10%余分にかかるので必要なのは66万プラチナで、自分への〈貧乏〉回復魔法では買えない。
とりあえず一番安かった初心者用スティック(MP消費10%減)を2万Pで購入し及第点の装備を整え武器屋を出た。10%軽減では消費MP9以下の魔法ではMP減少効果はないと武器屋で聞いたが試験用のなんちゃって装備として購入した。
帰りに食料品等や着替えやダミーのバッグを購入しマジックバッグに入れて宿に戻った。
宿で確認したマジックバックの容量は旅行用のキャリーバッグ程度だった。
宿の食堂で食事をしながら周りを鑑定していた。
翌日カーテンを開けるとまぶしい日差しの中、大きく伸びをする。今日も一日を始動させよう。
昨晩はすぐ寝てしまい寝覚めはスッキリだ。
昨晩使い切ったカネを回復したい。
初心者用スティックを手に補助魔法の魔法効果1.2倍を自分に掛けると集中力が高まったような全能感。
手のひらを上に向け、〈貧乏〉回復魔法を2回唱えた。手のひらの上は18万Pになった。
永久に貧乏とオサラバできたと思った。
毎日12万×3回唱えて36万Pを使い続けてもカネに困ることは無い。
一回の最大保有量は18万P。
マジックバッグにカネをしまうと宿屋の綺麗な食堂で一人朝食を食べた。
少し街を散策しながら魔法書店に向かった。
魔法書店は、現代で言うスマートフォンショップのように派手にディスプレイされた魔法書であふれていた。
魔法書は紺色で厚い教科書のような大きさだ。
レベル1でも魔法を属性ごとに追加で覚えられるので、ジョージは2属性なので2つの魔法を覚えられる。
しかしあいにく魔法書の値段は高く有り金の18万Pでは買える魔法書は無かった。
狙っているのは睡眠効果のあるのスリープ。150万P。有り金の10倍近い。
汎用タイプの魔法でほとんどの属性でも覚えられる。