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超記憶レオの魔導書蒐(あつ)め  作者: かず@神戸トア
レオは潜入する準男爵

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テスケーノ街中の防衛2

周辺は少し落ち着く方向になったと思えたが、レオたちの正面ではBランクのハイオークファイターたちやAランクのハイオークキングがまだ健在であり、本当の危機は去っていない。


しかも、西門と南の正門の方からも警鐘が鳴り響く。この北門は国王軍による誘導であったのだ。控えめであった昼間の攻勢もこれらへの準備であったのであろう。気が緩んでいた中に、北門への襲撃へ全力対応になってしまったので、西門も正門も町の内部側にはそれほど待機している将兵は居ない。

西門は正門に比べて小さいのでそれだけ攻め手も増やせないが、正門側には街の南東に日々増えているクーデター軍の陣営もあるため、国王軍も西門に増員して一気に街中に攻め込む作戦のようである。明らかに喚声の量が違う。


レオはベラとフィロ以外の魔法使い達に対して、西門への救援を指示する。

「モデスカルさんたちは西門に急行してください!」

「しかし、ここの上位ハイオーク達が……」

「私たちには魔法回復薬がたくさんあります!何とかします!南は南東の陣営が何とかするでしょうから、まず西門です!急いでください!」

と言って送り出す。

「レオ様……」

「ごめんね、2人とも。危なくなったら逃げて良いから。ただの平民だった俺は住民を見捨てられないんだよ」

「フィロ達も、出会ったときのハイオークの恨みがあるから、頑張るよ!」

「逃げるときにはレオ様も一緒です。そうでなければ残ります!」

「2人とも……やるしか無いね」

大通り以外に意識をまわす余裕は無くなったので、≪炎壁≫も行動制限のためではなく直接ダメージを与えるために使用し、近くに味方も居なくなったので巻き添えへの遠慮なく≪雷撃≫も使用する。



街の南東の陣営でも、街中で騒ぎが起きたことや東門から逃げ出す人が居ることを認識しだしたころ、目の前で国王軍が正門へ攻撃を開始する。ここがこの街の攻防の天王山、勝敗のわかれめとなる大事な機会であることは誰もが理解する。

「ここで頑張らなければ一生後悔するぞ!」

「手柄は俺の物だ!」

皆を奮い立たせて国王軍に攻めかかる。国王軍も南東の陣営は意識しており、反撃も覚悟はしていたが、自分たちの兵力を西門側に集中していたのもあり、いくら数に勝るとは言っても、2日目に大きな被害を受けた特に東側部隊にはトラウマがあるため、夜間における南東の陣営からの雄たけびに怯んでしまう。


結果としてこの一瞬だけでは、北門からはハイオークたちが主体で街中まで侵入、西門は守勢が劣勢、南の正門は街の外側でクーデター軍が優勢という状況である。南側も勢いで優っているだけで少しでも落ち着きを取り戻されてしまうと数で劣っているクーデター軍が反撃を受けることは火を見るよりも明らかである。

スクゥーレは代官館で状況把握を行っていたのだが

「西門へ向かう!」

と叫んで騎乗し駆け出す。周りの幹部たちも、スクゥーレという神輿が居なくなってしまうと単なる反逆者として自分たちは極刑であることも分かっており、慌てて後を追う。


スクゥーレは西門に到着すると、まだ何とか持ちこたえていた将兵たちに励ましの言葉をかけつつ、城門の上に駆け上る。

「おやめくだされ!狙い撃ちされます!」

「ええい構わん!」

と振り払い、国王軍に向かって叫ぶ。

「私はスクゥーレ・マストヴァである。そう、今回、国民のために立ち上がったクーデター軍のトップである。王都からの軍の諸君、聞いて欲しい!」

「何を今更!射ろ、射ろ!」

と国王軍の将官は叫ぶが、腹の中では脱走したい下級兵や徴兵達は矢を放たないか、狙いをつけずに放つだけである。

「耳を傾けてくれてかたじけない。そうだ、今の国王やその取り巻き幹部たちは国民を蔑ろにして来た。今、この街にも非戦闘員である住民を蹂躙するようにハイオークキングたちを送り込んで来たのだ!」

実態を知らされていなかった国王軍に衝撃が走る。

「そう、守るべき国民を守らない、搾取するだけの国王やその取り巻きは排除しなくてはならない!ここに約束する!国民を大事にする政権を作ることを!もちろん、王都の家族も心配であろう。だがここで立ち上がらなくてはこの後も家族、子供たち、またその子供たちもずっと不幸せが続くのだ。今ここで立ち上がるのだ!」

「黙れ黙れ!反逆者、国家騒乱の犯罪者が何を言う!お前たち、早くあの犯罪者を撃つのだ!!」

「うるさい!お前が黙れ!俺たちを消耗品扱いするお前こそ居なくなれ!」

馬上で叫んでいた国王軍の将官に、国王軍から矢が放たれて落馬する。

「そうだ、今こそ立ち上がるのだ!」

「「そうだ!」」


国王軍のほとんどが下級兵や徴兵達であり、その蜂起の波が広がるにつれ、特に騎乗していた将官達が次々と引き摺り下ろされて断末魔をあげて行く。

正門前で、落ち着きを取り戻してクーデター軍に反撃しようとしていた国王軍にもその波が伝わり、入り乱れていたクーデター軍の将兵も混乱するものの、そこに駆け付けたスクゥーレが正門上から、ハイオークによる住民蹂躙など同じような発言をしたことで流れが確定し、皆が理解することとなった。


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