テスケーノ防衛の中日
テスケーノ防衛の3日目、これまでが守りの日、攻めの日と来て今日は守りである中日である。
「レオ殿たちには少人数での夜襲にも参加して頂きたいので、昼間はできるだけ力を省いて、場合によっては昼寝もしておいて頂きたい」
「そうは仰っても、逆茂木もますます簡易な物に変わってしまった西門側では、国王軍の攻勢が厳しいと思われる、ともお伺いしましたが」
「そこは上手く調整頂きたい」
とだけ言われてしまう。
どうも手柄がレオたちに集中しているのを苦々しい思っている派閥の人だったようで、臨機応変にするしかないとため息をつく。
日が昇り再び国王軍が西門と南の正門に押し寄せてくる。
テスケーノの街の東部は主街道付近から引き続く草原であり見晴らしも良いため、南東のクーデター軍の陣営に気付かれずに攻めてくるのは難しい。しかし、北部から西部にかけては少し離れると森が続いているため、その気になれば軍勢をこっそり森の中で進めて、一気に北門に攻めかかることもできる。そのため、どうしても北門の防御にもある程度は兵を割くことになる。そのため、街の南東の陣の兵力もあてにした正門側の兵力を少し減らして、西門に注力しているのが本日の配置である。
ただ国土の中でも中心に近い街であり、それほど敵を迎え撃つことがあることを想定していないので、正門でもない西門では、城門の上に上がれる人数は限られるぐらいの造りである。
昨日までに引き続き、城門の上から逆茂木を除きに来た敵兵に対して火矢や魔法を打ちこむのであるが、国王軍も盾による防御にだんだん慣れてきて、あまり効果が出ない。さらに葉も付いた生木のままで逆茂木にしているので、枝の方にぶつかってもそこまで痛くは無いこともあり、この3日目の逆茂木はだんだんと数を減らされてしまう。レオたちが上級火魔法を使用して敵兵を倒してもその被害以上に兵を送り込まれてしまっているのである。倒れた兵を引きずり戻すことにも慣れているようで、また下級兵か徴兵だったのか死亡の有無に関わらず、効率的に攻めて行くため使い捨ての道具のような雑な扱いをされているのが遠目にも見える。
その効率化の効果で逆茂木が最後には撤去され、国王軍は台車に丸太を乗せた攻城兵器をいくつも引き出してくる。徒歩で引いて来た場合にはその速度に合わせて矢や魔法を多く受けることになるので、駆り立てられた馬に台車を引かせて攻撃してくるが、今回はレオたちが居るので≪炎壁≫を含めた上級魔法を多発され、馬もなかなか腰が引けてしまっている。その中でも無理に城門までたどり着いた馬たちも城門にたどり着く前に倒されてしまうので、生木による逆茂木は撤去されたが、自分たちの攻城兵器と倒れた馬による逆茂木のようなものが西門前に積みあがることになった。それが火魔法の乱発により燃え上がっている状態である。
一方、南の正門前ではレオたちが居ないだけあって、逆茂木の先の国王軍への魔法攻撃が弱くなってしまっている。お陰で、国王軍も使い捨て兵士達の被害は出るものの逆茂木の撤去に成功し、さらには城門にまで丸太を乗せた攻城兵器を到達させてしまう。
南東の陣営からも遠巻きに弓矢などでの遠隔攻撃はしているものの、街の城壁程しっかりした設営が出来ているわけでもなく、もし南東の陣営に集中攻撃されてしまうと数の暴力に負けてしまうことも分かっているため、全面対決を回避するような状態である。逆に国王軍も、南東の陣営を気にしながらの正門への攻撃であり、微妙なバランスがとられつつも正門へは攻め手の方が優勢であり、城門の扉の傷みは増していく。
そこで丸太を乗せた台車が城門にあたりそうなタイミングで急に扉を開けて、門付近にたどり着いている一部の敵兵だけを城門内に入れて、周りから袋叩きにしてまた城門を閉じるということを繰り返す。そうすると国王軍も一部だけを突出させるのではなく群れで城門に近づいてくるが、今度は城門などの上から矢や魔法の射程圏内に的が増えることになり、最初は守勢から一方的な攻撃を受けることになる。ただ数で押して群れで近づくと遠隔攻撃だけでは倒しきれないため、逆に国王軍からの遠隔攻撃で城門の上にも被害が出始める。順次、怪我人の入れ替えも行うが国王軍の数におされ気味である。
慌ててレオたちに急使が飛び、西門から南門へ騎馬で急行して、レオたちの上級魔法により群れへの一方的攻撃で被害を積み上げることで、国王軍を射程圏外へ引き戻させることに成功する。
その後は正門も西門も戦闘らしいことは発生しないまま日が暮れる。
レオたち魔法使い部隊は夜襲があると言われているので、魔法回復薬である傷回復薬を提供することで怪我人たちへの治療行為は免除して貰い、仮眠を取ることになった。起きた後に食事を取った後は、北門から街をこっそり出て北の森まで馬で移動する。




