表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超記憶レオの魔導書蒐(あつ)め  作者: かず@神戸トア
レオは潜入する準男爵

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/176

テスケーノ防衛

それからしばらく魔法回復薬の調合、ベラやフィロへの魔法や武技の指導、自身の魔法訓練などをして過ごしていた頃、街中に警鐘が鳴り響く。

「王都からの軍勢が見えたぞ!」


代官館のスクゥーレの部屋に幹部が集まる。

「して、王都からの軍勢はいかほどなのか」

「は、まだ遠めの確認と偵察隊からの推測情報ですが、おそらく2万ほどかと」

「こちらは志願兵や周辺からの賛同者の合流で1万弱まで増えたが、まだまだ足らないな」

「ただ、士気はこちらが上ですし、攻め手は守り手の3倍以上が必要と言います」

「王都から来たということは、常設軍、つまり職業軍人の割合が多いはずであるから、訓練されていない志願兵の比率が高い我々は油断することができないぞ」

「またレオ殿たちの力にすがるしかないのか……」

「各々方、そんな弱気でどうするのですか!次期政権を担う方々が、ルングーザ公国の冒険者をあてにするなど。我々軍属の力を侮られることなかれ!」

「そうですぞ!先陣は我らにお任せを!」

様子見から合流して来た自分たちの手柄も示しておかなければという焦りの者たちが強気発言をするのに合わせて、完勝2回で自惚れた者も同調を始める。

だが、確かに万の数の軍勢に対してレオたちだけに頼ることはできないため、その強気の勢いの将兵たちにも活躍して貰う必要がある。


その1時間ほど後、テスケーノの街の広場で、スクゥーレが演説を行う。

「いよいよ決戦の時が来た!我々は現王政を倒し、国民のための国にする。この度もきっと撃退できるぞ!」

「「おぉ!!」」


スクゥーレ達クーデター軍は街の中と、街に入りきれなかった数千人が南東の陣営に分かれて、国王軍を待ち構えている。

王都からの軍勢は、街の南方の東西に走る主街道と街の間で、街の南西から西にかけての場所に陣を設営した。もちろん街の外壁から弓矢攻撃などが届かない程度には距離をあけて、である。

「世間を騒がせる反乱軍は速やかに投降するように!同調している住民たちも、今ならば特に責めを負わせはしない。反乱軍幹部を連れてくれば褒賞も与える!」

と、開戦宣言というよりは盗賊やテロの立てこもりに対する呼びかけが、街の南の正門前から発せられる。対して、スクゥーレが城門の上から答える。

「我々は現国王体制に虐げられた者たちの代表である。私利私欲に走る現政権には退いて貰うよう、国民のために立ち上がったのである!将兵たちよ、王都から遠路はるばるご苦労様であった。しかし今からは共に王都に向かおうではないか!」

「逆賊が何を言う!」

「国民をないがしろにして国に逆らっているのは、現体制の幹部たちではないのか!?」

現国王軍にももちろん徴兵された一般国民や下級兵も多くクーデター軍に賛同したいと思ってしまう者も居るが、そのほとんどは王都に家族が居るので、マントーネやテスケーノの街に家族が居たであろう者たちのように脱走する、投降することはできない。


互いの言い合いが終わり国王軍の使者?が正門前から陣営に戻った後、現国王軍が街の南の正門、西門それぞれに押し寄せる。クーデター軍の南東の陣営に対しては無視をして、数で優っているうちに街を落としてしまうつもりのようである。

スクゥーレ達にすると自国内で、クーデター成立後はいずれも国民になる同士で殺し合いをすることに抵抗はあり、特に最初に城門に攻め込まされる下級兵などに思うことはあるが、この戦いに負けるわけにはいかない。

大きな丸太を台車に括り付け馬で勢いよく引いて来て城門にぶつけて破ろうとする定番の攻城方法は、城門前に並べられた逆茂木(さかもぎ)で防がれている。枯れた木の枝側を敵に向けて積み重ねるだけの簡易なものであるが、大量におかれているとそれだけで足止めに十分な効果がある。そのため、まずは逆茂木をどかせるために、矢から身を守る大きな盾を持った徒歩(かち)の兵士が集まってくる。

盾があるのは分かりつつ、その兵士を目掛けて城壁から矢を放つ。単なる矢では盾で防がれて終わることが多いため火矢にはしてあるが、それも踏まえて盾も単なる木製ではなく金属が貼りつけられているので、効果は少ない。しかし移動しながらのため、盾で完全に防げるわけではないので、手足に火矢が刺さり炎上する者も出てくる。それを見てひるんだ兵士に対して将官が責め立てる。


魔法使いが1,000人に1人と言われるぐらい普及していないので、一般的であるこのような攻城戦が西門においては発生している。一方、レオたち魔法使いが居る南の正門においては、レオと天使グエンの≪炎壁≫、ベラとフィロ、そして先日合流したモデスカルの≪火槍≫という上級魔法が放たれたことにより、攻め側の被害ばかりが増えて、逆茂木にたどり着くことができていない。中級、初級の魔法使いには距離などの効果も踏まえて控えさせている。

国王軍も正門側に主力が居るため、攻め切れないことに対する将官達のプライドが焦りを生み、次々と兵を正門に向かわせるが一方的に被害を大きくするだけになり、逆茂木の手前で倒れた兵士がますます足止めになるだけであった。国王軍にも魔法使いは居たのだが、ほとんど中級以下ばかりであり逆茂木の手前から城門への攻撃には参加させることができていない。上級も1人だけ居たのだが、守勢からの5人分以上の上級魔法に対抗できてはいない。


しかし西門側は数に優れる国王軍の方が、被害を無視して力攻めすることで逆茂木の撤去に成功しかける。それを見たクーデター軍の強硬派たちが、敵兵が城門に取り掛かってくる前に、と急襲をかける。

撤去の完遂前で気が緩みかけていた国王軍は虚をつかれた形となり、陣営から西門にかけて点在していた将兵たちは一方的にやられるだけであった。その勢いのまま陣営まで攻め込んで行ってしまったクーデター軍は、今度は逆に陣営の柵に阻まれて勢いを無くしたところへ弓矢、槍などの攻撃により被害を受け、さらに柵をどけて攻勢に転じられた騎兵たちに反撃を受ける。クーデター軍はほうほうの体で西門に逃げ込むことになり、それについて来た国王軍の騎兵を今度は城門付近のクーデター軍が取り囲んで殲滅する、という激しいやり取りになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ