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超記憶レオの魔導書蒐(あつ)め  作者: かず@神戸トア
レオは潜入する準男爵

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上位ハイオーク再び2

騒動にも気づいていたのと、怪我を治すためにとレオも近くに呼ばれてやり取りを見ていた。

『あれは、公都で公女の誕生パーティーの際に見たハイオークの首にかかっていた従魔の証……』

「少し見せてください」

と言って茶色の冊子を手に取りめくると、予想通り魔術語と魔法陣が記された薄い魔導書であった。興奮を抑えながら、数枚の羊皮紙をめくりすべて記憶する。

『グエンと行った≪契約≫に近しい系統の文字。従魔の証と一緒ということはその関係なのかな』

と思いつつ発言する。

「魔導書ですね。魔法の杖があったことも踏まえて、注意が必要ですね。目を離されませんように」

「やはり。レオ殿が仰るならそうなのでしょう」


「おい、これらはどういうことだ!お前は何者だ?」

「俺は命令されてやっただけなんだ。助けてくれ……」

「まずは話を聞いてからだ」

「そこの黒ローブの奴は、黒仮面に模様が無いから違うんだよな?」

とぼそぼそとつぶやくが、

「何?」

と聞かれても答えず。ただ傷みなのか折れているという足を抑えながら、茶色ローブの男がぽつぽつと話し出す。


自分は魔法も≪種火≫程度しか使えない、王都の従魔屋の下っ端であり、その茶色い冊子で従魔契約を修業中である。国の指示で、連れられて来た既におとなしいハイオークに、従魔の証を登録する単純作業をしていた。そのハイオークたちはいつも言葉少なめの黒ローブ・黒仮面の男たちが連れて来ていた。そこにいる黒ローブ・黒仮面とは違って、あいつらの黒仮面には銀色の六芒星の模様がある奴らだった。

今回は、従魔契約済みのハイオークたちをテスケーノへ移送する指示を受けただけで、王都からの軍勢と一緒に移動していた。なのに、テスケーノに近くなったところで、ハイオークファイターとハイオークキングを連れた黒ローブ・黒仮面が合流して来たと思ったら、軍勢とは別行動で先に進み、街の南東のこの陣営に攻め込ませろと指示を受けた。

前にもルングーザ公国との戦争のときに同じような指示があったときには、帰国したときに上手くやったとご褒美にその魔導書を貸与された。今回も何が貰えるか、と期待しながら指示に従ったんだ。ただ、ハイオークによる陽動の後、ハイオークファイターとハイオークキングを別場所から攻め込ませるときに、失敗しちまった。

Cランクのハイオークまでは従魔の証で従わせられるのだが、BランクのハイオークファイターやAランクのハイオークキングは黒ローブたちが何か上手くやっていたみたいなんだ。そのファイターやキングをけしかけて、黒ローブたちと自分が離脱する前に、そのキングの操り方が気になってキングに近づいてしまったら、乗馬をやられて倒れた際に下敷きになったんだよ。黒ローブたちもその様子を見ていたのに助けてくれずに離脱していきやがったんだ。

で、騒動がおさまったと思ったら捕まってここに居るというわけだ。


一通り聞いたレオは、戦争のときのハイオークキングたちもこいつの仕業だったのかと思う一方、従魔契約とキングを操った方法が気になる。


「もしこいつが≪種火≫以外の魔法も使えると面倒だ。猿ぐつわもして後ろ手で縛った上で閉じ込めておけ。レオ殿、骨折の治療だけはしておいてやって欲しい」

「そうですね、治療はしておきます。ところで、従魔の証を見本に1つ頂いても良いでしょうか」

「……まぁいいだろう」

「ありがとうございます」


その従魔屋の端くれの治療も終わらせた頃には、ベラとフィロの方の治療も終わり、いったん解散になる。明け方までどれほど寝られるか分からないが、本陣近くのテントに3人で向かう。レオは少ないはずの睡眠時間をさらに削って、先ほど覚えた魔導書の写本を急いで作り魔法の袋にしまって満足してから眠りにつく。

翌日はハイオークキングを含めてハイオークの美味い肉を焼いて食事に供される楽しみもありつつ、本陣でスクゥーレ達に騒動の状況説明など行った後は、昼寝をして睡眠不足を解消していた。


その翌日も敵軍への王都からの援軍も到着せず、またテスケーノの街からも攻めてこられることもないまま、自軍の後発部隊、主に徒歩の志願兵たちが到着する。

先発隊はマントーネ出発のときには2,000人ほどだったがハイオークたちの襲撃による微減に対して他貴族たちの合流があり、後発隊も3,000人程度だったのに対して次々と合流があり、クーデター軍は総勢7,000人ほどに膨れ上がっている。

テスケーノの街の南東の陣営がそれだけの人数を構えていると、流石に街の中の住民たちにも規模が伝わる。また1つ目の街のマントーネの住民蜂起による代官捕縛の噂も自然と伝わっている。


クーデターによる国全体の疲弊を減らしたいのと、王都戦を控えているので軍の消耗を減らしたいスクゥーレ達は、無理矢理な力押しはしたくないので、マントーネのときと同様に、徴兵や下級兵を目当てに投降を呼びかける。前回と違い、攻めてくる者が居ないため力を示しにくい。夜間のハイオークたちの襲撃は街の者たちにはどれだけ伝わったか分からない。

そこで投降を呼びかける際に、城門の上にいる兵士たちに退くように注意喚起をした上で、レオたちの上級火魔法≪火槍≫≪炎壁≫などを城門の上部に発動させる。明らかに力の差を感じた兵士たちに動揺が伝わって行く。

その夜には2~300人の脱走兵が街から南東の陣にやってくる。翌朝になり仲間が減ったことに気付いた街の兵士たちは、昼間の投降呼びかけと火魔法による示威行為を受け、さらに翌夜には残ったほとんどの下級兵や徴兵が脱走して来た。


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