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超記憶レオの魔導書蒐(あつ)め  作者: かず@神戸トア
レオは真っ黒な騎士爵

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林の偵察

気持ちを切り替えて、翌朝の公国軍の朝礼に参加するレオ。

「皆、2日ぶりの壁と屋根のある場所での寝心地はどうだった?今日は様子見である。緩み過ぎない程度にゆっくりしてくれ」

公子からの皆への挨拶であった。しかしそのすぐ後に呼ばれたレオには違うことを指示される。

「冒険者の集まりであるコグリモ騎士爵の小隊には、偵察をして貰いたい」

コリピサ王国軍との間にあるいくつかの林の伏兵を確認して欲しい、というのである。もちろん各国ともに偵察に特化した部隊が居るもので、援軍を受け入れた側であるガンドリア王国軍がその任務を行うことになっているのだが、ルングーザ公国としてまったくしないわけにもいかない。ただ、選抜して来た騎士団や魔術師団のメンバではその任務は心もとないので、レオに白羽の矢が立ったというのである。

公女の顔を伺っても、頷かれたので、レオは命令を請ける。


小砦のレオたちに割り当てられていた場所に戻ると、待機していたベラやエルベルト達にその旨を伝える。

「貧乏くじというほどのことでも無いかな。確かに騎士団の練習にさせるより安心だろうし、な」

素直に承諾してくれたエルベルトたちと共に、指示された林の入口まで馬で移動し、そこに馬たちを残して徒歩で林に入る。林の反対側には敵軍が陣取っているのが分かっているので、もしかすると林の中に伏兵や進軍中の敵軍が居る可能性もあるし、想定外の強い魔物が居るかもしれない。いずれにせよ、味方の軍が何も知らずに進軍することで奇襲を受けないための偵察であるので、少々の魔蛇や魔猪程度は蹴散らしておきながら、できるだけ自分たちの痕跡も残さないために、公女に借りた魔法の腰袋にそれらの死体はしまっておく。血抜きもここでしていくと痕跡になりえるため残念ながらそのまま収納する。


結局、林の反対側まで行ってみたが、今の6人にとっては弱い魔物ぐらいしか遭遇することは無かった。林の茂みの中からコリピサ王国の方面を確認すると、いくつかの小高い丘の上に陣地を形成しているようであり、そこから林の方に進軍する気配は無かった。

少し肩透かしではあったが、砦に戻り公子や公女にその旨を報告し、その日は戦闘も無く終わる。その夕方にあったガンドリア王国との合同軍議において、王国側の偵察でも同じような結果になっていた報告がされる。コリピサ王国も攻めるだけ攻めてきておきながら、意図が分からない。

前回の公国への侵略の際には、小部隊だけは互いに出し合っての力比べのようなことは行われていた。今回はそれすらもなさそうである。前回はその裏で、ハイオークの部隊による攻撃準備などがされていたのだが、今回のガンドリア王国側にはきちんとした砦があるために、少々の兵力では攻める側の被害が多くなるのは明白である。現在の戦力差では全力でぶつかり合ったら、守勢の3倍は必要と言われる数には到底及ばないコリピサ王国の負けは必至である。


今回もコリピサ王国に付き合わされるガンドリア王国とルングーザ公国の貴族や兵士たちは、できるだけ被害を少なくしてコリピサ王国が退却することを待っている状態であり、わざわざ戦線を作って両軍とも何をしているのか分からない状態であった。

数日、何もないお見合い状態が続いてしまった後には、しびれを切らしたガンドリア王国のある部隊が敵の小さな仮陣地を攻めてしまった。当然、攻守逆転であり、いくら自分たちのしっかりした砦と違った急ごしらえの陣地であっても、相手の方が優位であり撃退されて逃げ帰ってしまう。ただ、伏兵を恐れてか、それへの追撃はなかったおかげで命を落とす者は少なく、怪我人だけがたくさんということになった。


ガンドリア王国の治療所では追いつかない怪我人の量ということで、ルングーザ公国にも支援依頼が来る。公子と公女ともに積極的な支援を回答し、公女とレオたちに回復魔法の使用を指示してくる。今回従軍して来た魔術師団員は攻撃魔法に特化した者ばかりであり、公国軍で回復魔法が使用できるのはその4人だけであるので、急ぎ治療所に向かう。エルベルトたちは友軍とはいえ他国であるのでレオたちに同行して護衛と言いつつ雑用に参加する。彼らにとってガンドリア王国は母国であるので、何かできることをしたい気持ちからでもある。

結果として、敵陣から自陣までたどり着けるだけの怪我であったのもあり、レオたちが治療した将兵たちは命を落とすことなく全快して治療所を後にしていく。最初は黒ローブに黒仮面で真っ黒だらけの3人と公女であれば、真っ黒な3人は怪しまれていたが回復魔法の確実な腕や真摯に応対する態度を見て、外見は訳ありなだけであろうと解釈してくれるようになった。

さすがに怪我人全員を回復しきるころには、いくら魔力の魔法回復薬を飲みながらであってもくたくたに疲労した4人であったが、皆からの感謝により元気を貰い自分たちの砦までエルベルトたちの先導で戻る。

公子からも、援軍の1つの実績としてよくやったと褒められるが、レオは公子が色々なことを知っていそうな怖い相手と前から思っているので、素直に喜べていない。エルベルトたちからの、母国への援軍と治療に対するお礼の方が素直に受け取れる。



翌日からは、ガンドリア王国側も懲りているので攻めることは無く、コリピサ王国からも小部隊であっても攻めてくることが無いので、何事も無いまま日にちが過ぎて行く。

ルングーザ公国から良くない知らせが届いたのは数日してからであった。


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