レオの11歳誕生日
公国魔術師団の図書室で記憶した、辞書と字典の写本を作成しておく。その上で、写本は映像的に記憶したものを書きだしただけであるので、写本を作りながらと作ってからも読み返して、その意味も理解していく。
また、今までに古代魔導書などで天使グエンの指導で覚えた単語や文字を足した自作の辞書と字典の作成を始める。こちらも自作の魔導書と同様に、次々と追加できるような構成にしておく。
既に習得済みの火・風・水・土・光・闇の6属性の初級と中級魔法については、古代魔導書に記載があることを確認して、その解説の古代語についてグエンに教えて貰っているため、それだけでもかなりな文字と単語になる。
レオは自身が膨大に羊皮紙とインクを消費するので、街中で少しでも安く売りだしているのを見ると買い集めていた。回復薬のための薬瓶もである。
消費量を考えると、狩りをして得られる毛皮を羊皮紙にして自作すると、安くはない羊皮紙を大量買いすることによる怪訝な視線を回避することもできるのと、スクロールの製作にも活用して行けるのではないかと考えるようになった。もしスクロールの製作もできるようになると魔法回復薬と合わせて収入源の確保になる。
しかし羊皮紙を作れるようになった幼馴染のルネのように皮革職人に弟子入りでもしないと、手順を覚える機会も無いだろうし、と悩ましい。
そうこうしていると、レオの11歳の誕生日になる。平民では成人以外の歳で誕生日を大々的に祝うことは無いが、騎士爵になったこともありそのことを知っている公女や執事などがお祝いをしてくれる。とは言っても、港町出身のレオのために内地では珍しい海の魚などを数多く使用した豪華な食事を皆で取る程度であるが。
「レオ、これは誕生日のプレゼントよ」
公女がくれたのは、魔道具である羽根ペンであった。インクが不要で、少しの魔力で書けるので、膨大な書き物をしているレオにはピッタリである。また、冒険時の地図作成でもインク瓶が不要であるので重宝すると思われる。
「魔法の研究、今後も励むようにね」
シラクイラの両親たちからも祝いの手紙が公女の屋敷宛で届いていた。他国からの郵便は費用がかかるため、両親、兄、師匠、冒険仲間であったルネ、ガスからの一言ずつをまとめた手紙であった。向こうはあまり変化がない生活のようである。ルネ、ガスが鉄級冒険者になり、それぞれ弓士と剣士の委員会に所属したことが書いてあった。
ルングーザ公国はコリピサ王国と戦争があったことへの心配も書いてくれていたが、特に問題が無かったと返事することにする。
レオは、黒ローブのレオ・ダンとしては銀級冒険者でさらには騎士爵になったが、そのことを伝えるわけに行かないため、せめてレオナルドとしての冒険者登録も鉄級にあげてその旨を返事の手紙に書くことにする。何となくお金も勿体ないが、レオナルドも魔術師委員会に属して年会費を払うことにした。二重生活の必要経費の一つとして我慢する。
ベラとフィロには年齢なども伝えていなく、もちろん誕生日も教えていなかったので、そちらでのお祝いは無かったが、2人の誕生日はそれぞれ祝ってあげようと思うレオであった。
またレオは歳を取ったのをきっかけに武具屋に行き、革鎧レザーアーマーの新調をすることにした。成長期であり、今までもときどき寸法調整していたが、少し本格的に、である。体力もついて来たので、金属補強も考える。左腕に盾があるおかげか、一番傷がついていたのは右腕や脚であったので、その部位に金属補強することにした。
またその店舗で見かけた、回復薬ポーションを入れることができる腰袋ポーチを購入する。せっかく調合できるようになったので冒険時に持参しているが、薬瓶はすぐには取り出せない背負袋の中に入れるしかなかったから、衝撃吸収も考慮されて取り出しやすいポーチが気に入ったのである。
ここまで来ると、と覚悟を決めて黒色を選ぶ。ベルトで長さ調整ができるため、ベラとフィロそれぞれのも採寸することなく購入しておく。
ついでに、冷やかし客でないことを確定してから店主に鑑定魔法の了承を得て、店頭の様々な商品を≪簡易鑑定≫していく。今まで何となく上等そうなどと感じていた物が明確に高級品であるなどと答え合わせしながらみることで、魔法を使用しない場合での鑑定能力も急成長することを実感できる。
同じように自分やベラとフィロの装備を鑑定してみる。
自身の新調したレザーアーマーは中級上位、ベラとフィロは中級下位。自身の金属補強付の小盾スモールシールドは中級下位、ベラとフィロのは下級上位。レオの投擲用短剣5本は下級上位、ベラとフィロの短剣ダガーは下級上位、短槍も下級上位。そしてレオの片手剣は高級下位であり、ガスの師匠の好意に改めて感謝する。また、レオの魔法発動体の指輪は公女が調達しただけあり高級中位、ベラとフィロの発動体の指輪は下級上位であった。
これを機会にベラとフィロの装備も新調することを打診しても、せめて銅級冒険者になってから、と主にベラに遠慮されてしまった。




