ダンジョン探索
山肌に空いた隙間から入った通路では、左右どちらも先が見通せない。どちらに進んでも同じということで、まずは左に進むことにした。一つの定石である壁伝いに時計回りしてみるのだ。地図作成は、羽根ペンにも慣れているレオが行うことになっている。
少し進むとすぐに通路は右に折れ曲がり、まがった先の正面と右側のそれぞれに扉であったと思われる木が崩れ落ちた形跡のある空間があった。正面は小さな部屋で中には何もない。右側はかなり大きな部屋であり、松明の灯りでは先まで見通せないため、慎重に部屋に入ろうとすると、何かカタカタと音がするものがたくさん接近してくる。
灯りの見える範囲にやってきたそれは骸骨であった。
「うわ、骸骨!」
「スケルトンだ!」
「アンデッドだ!」
「大丈夫、これが本当にスケルトンならば所詮はEランクだ」
カントリオは松明を床に立てておき、メルキーノ以外は片手剣と盾を構える。メルキーノは弓矢のままで、近づくスケルトンの頭を狙って矢を放ち、頭蓋骨を貫くとそのスケルトンは崩れ落ちる。
「こいつら大したことないぞ」
結局部屋に居たのは13体のスケルトンであり、いずれもかなり傷んだ片手剣などを持っていたが、4人に簡単に殲滅される。
「こいつらの武器は戦利品にもならないから、魔石だけ貰って行こう」
この大部屋にも目ぼしい物は無かったが、入って来たのと反対側に同じような扉の跡があり、そこから出て行く。出た直ぐの左側には先程と同じような何もない小さな部屋があり、右側に通路が続き、その通路はすぐに左右に分かれている。分かれ道に行くと、左側は上り階段になっている。
「これ、右に行くと崩れた山肌に戻ると思うから、念のために確認していいか?」
とレオの要望に従いいったん戻ると、想定通りであった。結局この階層は大部屋1つと小部屋2つに通路があっただけになる。正確な地図を作っているレオの目線では、最初に見つけた小部屋が後からの小部屋に比べて奥行きが短いのが気になる。後からの小部屋と大部屋の奥行きは同じなので、隠されている場所があるのかもしれない。
レオの感覚に従い、最初の小部屋に再び訪れて壁を叩いてみると、大部屋と反対側の壁の音と、隠し部屋があるかもと思う壁の音は異なる。
レオが≪そよ風≫≪集音≫の風魔法の応用で、隙間風が出る場所を探してみると、大部屋側の壁の石タイル1つが怪しいことに気付き触ってみると押し込むことができた。それと合わせて小部屋の奥の壁が床に吸い込まれて行き、新たな空間が現れる。
「すげー!」
「やったな!」
「でも、何もないぞ?」
正面の壁にはそれこそ宝箱でも置かれていたかのような凹みはあるが、何もない。地図を作ってみてもこれでちょうど部屋の奥行きは同じになり、怪しいところは無い。
「そうそう美味しい話は無いのか」
「仕方ないから階段に戻ろう」
先ほど見つけた上り階段から上に向かうと思ったよりも長い階段であった。
階段を上りきった階層でも、スケルトンと何度も出くわすが特に問題なく対処していく。先ほどの階層と違い、短い通路と部屋が多い。棚であったのであろう跡などもあり、木くずをかき分けてみるがめぼしい物は見つからない。そしてこの階層を調べきると、見つかったのは先ほど上って来たものとは別の下り階段と、さらなる上り階段が1つずつであった。作成している地図を見ても、何か怪しい空間は無さそうである。
続いて、まずは上り階段で上の階層に向かう。先ほどの階段ほど長くはなくたどり着く。
この階層でも先ほどの階層と同じように短い通路と部屋が多い階層であり、スケルトンとしか遭遇しなかった。そして見つかったのはまた上り階段が1つだけであったので、そのまま上ってみると踊り場のような空間の先で突き当りになる。扉もあったような出口のような作りであったが、その出口を大きな岩がふさいでいるのである。
念のために4人で力を合わせて押してみたり蹴り込んでみたりしたが、びくともしなかった。
「これって、この遺跡の玄関を岩がふさいでいたから未発見だったということかな」
「そうなんだろうな」
「なかなかお宝は見つからないなぁ」
「実際の冒険はそんなものなのかな。まぁ命の危険があるような危ないのが居なくて助かっているけどな」
仮にこの玄関を1階とすると、地下1、2、3階を探索済みで、地下2階からの下り階段が未探索となる。ただ、体感では既にそれなりの時間になっているはずであり、ここで野営をすることになった。
すこし踊り場のように広いので、地下1階に戻ってもっと広いところではあっても敵が居た階層で眠るよりも安全と思われるので、この玄関で焚火を行う。
レオは冒険での野営が初めてであるので、2人ずつの交代制にすることにして、まずメルキーノとレオの2人から見張り当番になった。寝る前の
「レオは寝るときも仮面を外さないんだな」
という突っ込みには笑ってごまかしておく。
結局朝まで何事も無く過ぎて、地下2階からの下り階段を探索することになった。




