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超記憶レオの魔導書蒐(あつ)め  作者: かず@神戸トア
レオは公女の私設使用人

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使用人修業

レオは使用人としての業務や作法を学ぶのに合わせて、ルングーザ公国の公子や公女のこと、諸外国との関係についても学ぶ。

国家元首である公爵には3男4女の子供が居て、すでに亡くなった正室の子である第1公子は武闘派で勢力拡大に意欲的、第1公女は幼くして死亡、第3公女は政略結婚で他国に嫁ぐ予定であったがあのようなことになりおそらく他国ではなく国内有力貴族に下賜されることに。第1側室の子である第2公子は大人しく内政を淡々とこなすタイプで、第2公女は同じ大陸内でも少し離れた大国の一つに嫁いだ。その大国とは陸路より海路で貿易をしているお陰で少し経済的に余裕が出ている。第2側室の子である第3公子は自分に継承は無いであろうと自由奔放に、第4公女は野心家で第3公女のマルテッラに何かと敵愾心を持っているらしい。


ルングーザ公国は東から南東が海岸で、北から南西の陸地で接するのは4ヶ国ある。南西のガンドリア王国とは友好関係にあるが、北東のフィウーノ王国、北西のリブレント王国、西のコリピサ王国との関係性は良くない。特に海を持たない西のコリピサ王国は港を求めてルングーザ公国もしくはガンドリア王国の港を狙ってときどき攻め入ってくるので、共同戦線の意味もありガンドリア王国とは友好関係にある。

とは言っても、この周辺の小国間の抗争状態においては、元首の代替わりなど何かきっかけがあればすぐに友好関係が敵対関係になることも、利益があると思えばその逆に敵対関係が友好関係になることもある。国境線が変わることも日常茶飯事で、傭兵が金次第で前回の敵に雇われることも普通にある。

貨幣も国家がそれぞれ鋳造しているが、経済混乱回避のため含有量など材質は統一とされて多国間で同様に流通している。しかし、いらぬ詮索をさけるためにレオは持参した貨幣をこの公国の貨幣に両替するように指示された。


また、それら作法や知識も含めて使用人としての訓練は、公女の側に付いていても問題ないようにするためであり、もともとの護衛の意味に対しての訓練も重要である。片手剣と盾の使い方については、表立って騎士の指導を受けるわけにはいかないので、執事など一部の武術の心得がある者の指導を受ける。やはり国家元首の使用人には最低限の武術ができる者がいるようである。その際に教わったが、やはり先日から練習している魔力を込めての片手剣の振りは武技≪斬撃≫であったようである。


ただ、魔法についてはそもそも使い手が非常に限られていて、マルテッラ付きの使用人の中にも居なかったようである。またレオが魔法使いであることは、今のところ一部の限られた者しか知らないので、公女の切り札にするために秘密にすることになった。仕方ないので、マルテッラが受ける魔法の家庭教師からの授業を横で護衛として立ちながら一緒に聞いて覚えることにした。マルテッラは回復魔法の初級≪治癒≫を習得していたので、次には水魔法の初級≪水生成≫、火魔法の初級≪種火≫、風魔法の初級≪そよ風≫、土魔法の初級≪砂生成≫という基本4属性の入門魔法を学んでいた。それぞれの魔導書を自学自習用に預けられていたのを読ませて貰い、記憶した後に羊皮紙に写本として書き出す。もちろん以前の回復魔法≪治癒≫≪回復≫も写本は作成済みで習得もしてある。

≪水生成≫≪種火≫ともに、既に所有している物とは異なる著者であったが、新たに得られた知識は無かった。

≪そよ風≫≪砂生成≫は初めての風魔法、土魔法なので新たな系統の魔術語ではあり嬉しかったが、魔法陣の幾何学模様は≪水生成≫≪種火≫と似ており残念であった。逆に≪水球≫≪火球≫に相当する風魔法、土魔法があるのかと考えてみるも、≪風球≫の具体的なイメージができなかったのと、≪砂球≫は石の方が良いのではないかと考えてしまい失敗する。何もかもが4属性で同じなわけでないことを理解する。

ちなみにマルテッラは習得するのに時間がかかるようで、レオが早々に発動をしていると「どうやっているのか教えなさい」など絡んでくるのが少々うるさかったが、同世代の気を許せる者が居ないのであろうと、我慢する。そして実は家庭教師よりも教え方が上手いのか、レオが実演しながら魔法陣の幾何学模様の意味も含めて教えるとマルテッラも一つずつゆっくりながら習得していくのであった。


マルテッラが4魔法を習得する頃にはレオが使用人修業を始めて3ヶ月経つことになった。

レオは新しい魔法は早々に習得したので習熟のため訓練は行うものの、基本的には誰に見られても良い片手剣と盾の訓練に注力した。直接的に指導できる先輩使用人から教われた範囲として、片手剣と盾の武技がそれぞれ≪斬撃≫≪連撃≫≪剛撃≫と≪挑発≫≪受流≫までであった。さらに武具を装備していないときのための体術の武技、初級≪回避≫と≪肉体強化≫の指導も受けた。数ヶ月前に捕まってしまった賊程度になら1対1で勝てるぐらいの自信もついた。

記憶力が良いため、武術以外の作法などもマスターしており、公女の側に付き添っていても問題ないぐらいには成れた。もともと同世代で公女本人が気を許しているのもあるが、他者からも大人の男性よりもまだまだ子供の体格の者が側にいる方が警戒心を与えることが無く相応しいとして、公女がどこかに出かける際には必ず同行するまでになった。さすがに以前に愛用していたローブは使用人の業務遂行中に使用するわけに行かず、姿勢よく顔を出すことにも慣れてきた。


そんなある日、公女が定期的に訪れている誘拐時の被害者への墓参りにレオも同行する。

「エルパーノ、トニー、また来たわよ。いまだにふとした時に横にあなた達が居るものだと声をかけてしまうの。こんなことではあなた達も安心して眠りにつけないわよね……」

と涙を浮かべている。

馬車に人を残して来たので、墓地内にはマルテッラ、レオ以外には使用人3人しか居ない。この隙を狙って参拝者を装った暗殺者が襲って来た。黒づくめのローブ姿が5人、流石に墓地内に大きな武器を持ち込めないからか、短剣のみで四方から迫ってくる。レオも護身用にロドに購入して貰った投擲用短剣2本しか所持していない。他の使用人たちも同様である。

毒を塗られた短剣を投擲される可能性も考慮して、マルテッラを使用人4人で囲い込むようにした上で、急ぎ馬車の方に移動することを考える。馬車付近には大型武器も所持した騎士たちも居るため、移動しながら大きな声で襲撃について叫ぶ。確実にマルテッラに当たる機会を見つけてから投擲するつもりなのか、黒ローブ5人は馬車への移動を阻止するように周りを囲む。使用人4人ともが武術の心得に自信があるわけではないのが見抜かれたのか、そのおぼつかない使用人を狙って短剣を突き出してくる。暗殺者の認識の通りな使用人は上手くさばくことができずに、自身の所持していた短剣も弾き落され、その持ち手の右手も傷つけられる。

「私を第3公女マルテッラ・ルングーザと知っての狼藉か!」

と公女が叫ぶも無反応であり、やはり人違いでないことは確認される。マルテッラは武器を扱えるわけではないので、自身の囲いである使用人の怪我に対して≪治癒≫を発動するが、初級回復魔法では治りきらない。レオも短剣は最初に訓練したのみで片手剣ほど得意なわけでなかったが、≪斬撃≫のように短剣に魔力を込めて突き出すことで期待通り通常以上の攻撃力を得ることができ、自分の目の前の黒ローブに傷を負わせることはできた。残り2人の使用人のうち片方もあまり武術が得意でない者であり怪我を負わされていたが、もう片方は敵2人を相手に何とか渡り合っている。

「レオ、何とかしなさい」

という公女の叫びを聞き、≪火球≫を連続して発動し、使用人2人に怪我させた敵2人と自身の相対していた敵1人にぶつける。


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