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超記憶レオの魔導書蒐(あつ)め  作者: かず@神戸トア
レオは人付き合いが苦手

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公女マルテッラ

目を覚ました少女は、

「ここはどこ?エルパーノはどこ?あなたは誰?」

と辺りを見回すと、同じく縛られているレオを見て誰何してくる。それと同時に、気を失う前のことを思い出したのだろう。

「エルパーノ?トニー?あぁ……」

と泣き出す。


「ふん、やはりお前は関係なかったんだな。ここで始末しておくか」

と賊のリーダーらしき人物がレオに近づいてくる。

「待ちなさい。私を生かしてここまで連れて来たのなら、私の面倒も見るつもり?汚らしい賊の世話にはなりたくないわ。その子を世話係にしなさい」

と泣きながらでも気丈な発言をする少女。

「ち、まぁ武器も取り上げているし、仕方ない。そのお嬢様にしっかり尽くすんだな」

「ではまず私に水をお持ちなさい。その後に温かい食事です。その前にあなた名前は?」

と泣きながらも指示をしてくる。ここで発言すると張っていた気が途切れてしまうのが心配で無言でいるレオに対して、

「あなた話せないの?元から?ショックからかしら。まぁ名前が無いと不便だから、仮にダンにするわ。良いわね」

というので仕方なく頷く。『冒険者の証明書には名前があるのに見ないのかな……』


「では、ダン、水と食事です」

『さっきまで泣いていたのは?』とため息をつきながらおかげで命拾いをしたのでもあるので、素直に従い、様子を見ていた賊たちから水と食事を貰ってくる。賊たちも苦笑いしてレオの分を含めた2人分を渡してくれる。また、両手首を一つに縛られていたのだが、ある程度の作業ができるように間をあけた縛り方にした上で、腰にもまわした縄と括り付けられる。少女にも同様に縄をつける賊たちはかなりなじられていたが、余程大事な捕虜なのか、乱暴には扱っていなかった。

「トイレ」という少女に、音が聞こえない程度に離れたところに賊と一緒について行かされたり、それなりに柔らかくなるように皆の荷物で整えられた場所で寝かされつつ昼間の怖さからか夜泣きする少女の横で腕を握られながら、横になれずに寝る羽目になったり、命の危険はないものの今までにない辛さを経験したレオ。


翌朝も少女への給仕をさせられながら朝食を取った後は引き続き草原を南下する。少女は延々と歩くことに文句は言うが、賊がまた肩に担ぐように運ぶか?と言うとブツブツと言いながら歩くことを選んでいた。そのうち草原も途切れて森になったが、既にゴブリンたちも逃げていたからか、特に魔物に遭遇することなく海岸にたどり着く。

そして、そこに停泊していた船に乗せられる。なぜか当然のようにレオも少女と同室で閉じ込められることになった。ベッドは1つしかないのを見て、まぁ仕方ないとため息をつく。施錠して油断したのか、賊も扉の近く居る気配が無くなったのを見計らって少女が話しかけてくる。

「そろそろ話してくれるかしら?まずはお名前から。ちなみに私はマルテッラ・ルングーザ。ルングーザ公国の第3公女よ」

『!?小国が乱立する近隣国の中の1国のお嬢様!?』

「それにあなたのその指輪、魔法発動体でしょ?賊たちは気づいていないようだけど。誰かに気付かれて取り上げられる前に私に渡しておきなさい」

自分のポケットにしまうよりは取り上げられる可能性も低いであろうと納得してマルテッラに預ける。

「素直でいいじゃない。で、名前は?ちなみにダンは私が屋敷で飼っていた犬の名前だからね。賊の前ではダンなのは続けるわよ」

「レオナルド。あの港町シラクイラの町民」

「やっぱり話せるんじゃない」

と動き出す船での不安を紛らわせるためか、もともとそういう性格なのか、自分のことを語ったりレオのことを確認したり、廊下で物音がしていないときはずっと話すことになった。まだ人付き合いが得意ではないレオであったが、積極的な彼女に引きずられたのと、特殊な環境であったので少々話が上手くなくても気にされないこともあり、必要なコミュニケーションは取ることができた。

おかげでレオもいくつかのことを理解した。マルテッラは9歳だが、政略結婚で他国に嫁入りするところを襲われたらしい。そんな歳でと思うが、王侯貴族では婚約状態でも相手国に行くことで人質の価値があるため普通とのこと。今回もおそらく敵対国のどこかの指示で誘拐されたのであろう、身代金で自国に帰れる可能性もあるがずっと幽閉の可能性もあるので、しばらくは様子見。誘拐が成功した時点で傷ものにされたことになり政略結婚を阻止できたと見なすので、黒幕は既に目的達成していると考えて、身代金になることも期待しているとのこと。

また、彼女自身も魔法の訓練をしていて初級回復魔法≪治癒≫を使えるらしいが、魔法発動体の杖は誘拐騒動で失くしたので余計にレオの指輪があると安心らしい。


船でもトイレや食事などでは面倒なことになったが、マルテッラもこの状態では入浴や濡れ布で体を拭くことは我慢してくれたようで、それ以上はいくら子供同士とはいえレオとしても辛いことにはならずに済んだ。

乗船して一晩して、それなりの港町に着いた後は、下船してある程度きれいな馬車にマルテッラと共に、賊のリーダーらしき人物と一緒に乗ることになった。マルテッラにはある程度どの国か分かったようでしたり顔ですましている。もちろんレオは彼女以外が居るので無言のままである。

そして馬車が目的地と思われる城に着き、体を縛っていた綱などは外してから案内された広間で、待っていたかなり身なりの良い人物が話しかけてくる。

「これはこれはマルテッラ・ルングーザ嬢、ようこそお越しくださいました」

「誘拐しておきながらようこそとは随分ですね。クレモデナ王国の宰相ドメニーコ・スカレッコ殿」

「これは手厳しい。ところでその少年は?公女お1人だけをご招待したつもりだったのだが」

「公女をお連れするときにたまたま近くで狩りをしていただけのようですが、公女のご希望で御同行頂きました」

「彼に何かすれば私にも考えがあります」

「どんなお考えか思い当たりもしませんが、まぁ少年1人ぐらい良いでしょう」

「それで、私はこれからどうなるのですかね?」

「それは御父上次第ですかね」


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