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超記憶レオの魔導書蒐(あつ)め  作者: かず@神戸トア
レオは故郷に錦を飾る

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フィウーノ撃退戦3

「お兄様も無茶を言うわね。また兵糧を持ってこいなんて」

 フルジエロとのやりとりをマルテッラに報告すると、そのように言われる。いや、あなたも、という言葉を飲み込む。

「何か言いたそうね。で、やっぱり挟撃ではなくこっちばかりが突撃していることを不満だったのよね」

「はい、こちらを」

 フルジエロから預かっていた書状をマルテッラに差し出す。


「中身を知っている?」

「いえ」

「あなたを自分の手元に残すように、ってあるわ。街にいる仲間と魔法を使って連絡を取れば、挟撃の連携もできるだろうって」

「え!」

「よっぽど気に入られたみたいね。そんな首を振ったって。拒否権は無いわよ」



 仕方ないので、仲間達にその旨を伝える。

「そんな。レオ様がいなくなると西門はどうなります?」

「そうだな…北門と東門は魔法使いが複数いるから、交代で1人ずつ西門に行って貰えるかな。で、西門に行っていない方が、マルテッラ様のところに行って、悪魔経由での伝言をして貰えると助かるのだけど」

「それは良いのですが」

「そうですよ、また兵糧を奪いにいくとか」

「遠征している敵から兵糧を奪うのが有効なのは、テソットの街でも十分経験したし」

「それはそうですが」

「あのときよりは味方も十分にいるし、大丈夫だよ」


 レオはそれよりも、騎士団への治療の方が気になる。今まで彼らの馬の治療は自分がしていたが、これからはベラとフィロが呼ばれると思うが、特にフィロが礼儀を指摘されそうである。

「大丈夫ですよ。私だけが行きますので」

 レオの心配を認識したようなベラがこっそりと耳元でささやいてくる。フィロに伝わらないように意識してのことだろう。


 どうも仲間達で話し合って、西門には北門から分かれたケーラが向かうことになったようである。そして東門からベラが抜けて、マルテッラとの連絡係になりつつ、馬などの治療にも対応するとのこと。奴隷が代官館の方にいると問題になる可能性があるから、スラム街に暮らしていたとはいえ平民のベラの方がマシだろうと。

 確かにベラならば言葉遣いにも不安要素はない。



 ムッチーノの街の中での仲間達のことの懸念が減った後は、自身のことが不安になる。

 何せあの怖いフルジエロ公子の近くにずっといることになるのである。思わずブルっと震えてしまう。

「じゃあ、行ってくるね。みんなは怪我をしないように気をつけてね」

 余計なことは考えないようにと思い、できるだけ明るい笑顔で皆と別れを告げ、フルジエロの陣営に飛ぶ。



「では、改めてムッチーノの街の防衛を教えて貰おうか」

 フルジエロの目の前に集められた幹部と思われる人たちの前で、街の兵力を言わされることになったレオ。

「は、はい」

「そんなに緊張しなくて良いぞ」

 フルジエロのその発言が余計に緊張をうむと思ってしまうが、できることは事実を順番に述べるだけと割り切ることにする。


「まず、騎兵は元々街にいた50騎ほど、そしてバルバリス侯爵、ベルガミ子爵による援軍の330騎。それ以外は東西南北の城門の上を守る弓兵などの歩兵です。かき集めればうって出ることも可能かもしれませんが、今は城門を守るのに手いっぱいです」

「何とか持ち堪えた理由として、魔法も使っているようだが」

「あ、失礼しました。まずマルテッラ公女殿下が代官館で回復魔法を使用され、怪我をされた方々の治療にあたられています。東西南北の城門には私の仲間を配置しており、ときどき防衛のための魔法を発動させております」

「ふむ、みなコグリモ準男爵の……」

「いえ、失礼しました。元々ムッチーノの街での魔法使いの方も何人かいらっしゃいましたので……」

「気にしたのはそこじゃないぞ」

 レオは元々にいた魔法使いのことを説明漏れしたことが失礼だと指摘されたと思ったのだが、フルジエロはレオの配下に強力な魔法使いが複数いることを幹部達が気にしたと言いたかったのである。ただ、レオがそのことに気づいていないならば、それでも良いかと思っている。


「で、どうだ、挟撃するのはどこが相応しい?」

「え?私ですか?」

 フルジエロの無茶振りにあせる。

 普通に自分が考えると、敵の数が少なくてこちらも被害が出ないと思われる南門前の陣営。でも、そちらに多くの兵を割くと、西門前に主力として陣取っているたくさんいる敵軍がこちらの手薄になった陣営に向けて南下してくると被害が大きくなる。

 では逆に西門の主力を狙うとすると、敵兵の方が数が多いので被害は増えてしまう。

 黙り込んで悩むレオ。


「黙っていないで。まとまっていなくても、お前が考えていることをこの場で話してみろ。俺の命令だ。誰にも文句は言わさない」

「え!では……」

 先ほど考えていたことをそのまま口にする。

「いま申し上げたのは、騎士団の方々だけの話ですので、私が魔法を使えばもう少し別の選択肢も出るかと」

「なるほど。それも聞こう」

「はい。やはり南門の敵を挟撃するのが初手としては良いと思います。兵糧が減った敵は可能ならば早々に決着をつけたいはずなので、西門の主力とまともにやり合うのは先方の思い通りでは無いかと」


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