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超記憶レオの魔導書蒐(あつ)め  作者: かず@神戸トア
レオは故郷に錦を飾る

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公子の到着2

「で、フィウーノ王国の陣容はどんな感じだった?」

「はい。こちら公子殿下たち騎士団の数の2倍ほどに思えました。騎兵の規模は同数程度ですが、それ以外の歩兵や攻城兵器、輜重などの後方部隊を含めての兵士数での話になります。今の我々の北側、つまりムッチーノの西門の外に一番敵兵が多く、ここに約半数。北門、東門、南門の外側に残りが分散していますが、申し上げた北、東、南の順に敵兵の数が減ったように思えます」

「ふむ、なるほど。やはり空を飛べるのは便利だな。兵数の差は覚悟していたが、そんな感じか。ところで、ムッチーノの中の兵の規模は?」

「はい、まずはベルガミ子爵が先発でいらっしゃった30騎。元々街を守っていた騎兵は50騎ほどとのこと。後は城門の上で弓を用いているように歩兵ばかりでした」

 昨夜に、フルジエロ公子に陣に泊まるように指示されて、本当に朝一番から仕事をふられているレオ。


「では、挟撃をするにももう少し騎兵を街の中に送り込む必要があるな。マルテッラも全軍を街に入れるな、と言っていたが、一部なら大丈夫だろう?」

「はい、そのくらいの余力はあると思われます」

「よし、ではバルバリス侯爵!」

「は!」

「貴殿の傘下であったベルガミ子爵を支援するために侯爵の部隊、300騎兵を街に送り込むことにする。準備を!」

「は!直ちに!」

 指示された侯爵がテントを出て行った後に、フルジエロがレオにささやく。

「ヴィットリア・バルバリス侯爵は、ロレンツォ・ベルガミ子爵と同様、魔法使いを当てにしていない。戦力になる旨をちゃんと理解して貰ってこい」

 どうしてそんな面倒な人ばかりを選定するのか、と文句を言いたいがとても口に出来ず、頭を下げてテントを出る。


「おや、コグリモ準男爵も出陣かな?我ら騎士団の足を引っ張らないように、な」

「はい、承知しました」

 そのバルバリス侯爵も、敵兵の数の報告は聞いていたようで、敵の少ない南門からムッチーノの街に入るつもりのようである。

 レオは余計なことをして目をつけられたくないため、そっと後ろの上空を≪飛翔≫でついて行くつもりである。


「では行くぞ!我らルングーザ公国の騎士団の強さをフィウーノ王国に思い知らせてやれ!」

「「「おぉ!」」」

 300騎の掌握は出来ているようで、バルバリスの声に応える姿から、士気は十分であることが伝わってくる。

「出発!」

 フルジエロ公子率いる援軍の陣を出発した最初は速歩(そくほ)程度であったが、少しずつ駈歩(かけあし)になり、そして襲歩(しゅうほ)になる。それを300騎が揃ってできるのである。自分達の乗馬の技術がまだまだ足りていないことを認識していたレオは、騎士団の技を見て素直に驚く。

「以前にガンドリア王国に出征したとき、フルジエロ公子が騎士団だけを連れてコリピザ王国を迎え撃ちに行ったのも、この練度を当てにしたからなのが良くわかるな」


 しかし、フィウーノ王国も無能の集団では無い。援軍が大量に到着したことは当然に知っており、ムッチーノの街の方向だけでなく、援軍の陣営の方にも馬防柵を構築している。

「来るなら来てみろ!」

 バルバリス達の300騎はそのまま柵に突撃するかに見えたのだが、突進の勢いをあまり削ぐことなく右折してそれて行く。そして少し迂回したところから再び勢いをつけて、柵の少ない場所を狙って突撃するのであった。

「は、我らの馬術を見くびるな!」

「深追いは不要だぞ!あの隙間から抜け出る!」

 それぞれの班の隊長らしき人物の指示で、小集団が適当な柵の隙間から抜け出てくる。柵の中にいた歩兵達には十分な被害を与えた後である。

 レオは遠く離れた上空からその騎士団達の働き様を見ている。


「え!?また?」

 敵陣から離れたはずのバルバリス達が再び足並みをそろえて、フィウーノ軍に向かって突撃して来ている。

「く!今度こそ迎えうつぞ!」

 フィウーノ軍の将兵も、先ほどの混乱をおさめつつ、柵のないところでも槍を構えた兵士たちが整列して待ち構えている。

 しかし、バルバリス達は再び敵陣の手前で方向転換を行い、城門に向かう。

「フィウーノの騎兵達は入口を歩兵に塞がれて出て来られないだろう。このまま城門にゆっくり入らせて貰おう」


 城門の上から見ていたエルベルト達も、最近の30騎だけのベルガミ子爵の頼りなさから騎士団を侮っていたが、その行動を見て見直すことになった。それは、城門を開いて迎え入れるムッチーノの将兵達も同様である。

 門の中で待っていたベルガミ子爵がバルバリスに近寄る。

「バルバリス侯爵、お待ちしておりました」

「ベルガミ子爵。先発隊、ご苦労だったな。死者を出すことなく任務を務めたと聞いているぞ。良くやった」

「ありがたきお言葉!」

 最近の自分の不甲斐なさを認識していたベルガミであるが、上役からの言葉で気分を持ち直す。


 先の敵陣に対する鮮やかさとあわせて、ムッチーノの街の南門付近は援軍歓迎の歓声が湧き起こる。


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