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超記憶レオの魔導書蒐(あつ)め  作者: かず@神戸トア
レオは故郷に錦を飾る

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ムッチーノ防衛3

 東門から街に入ろうと、フィウーノ軍と完全に斬り合っているベルガミ子爵達。

「ベルガミ子爵、我々の敵に対するこの魔法攻撃。守備兵には高度な魔法使いが居るようですね」

「ふん、魔法使いなんて遠くから攻撃する卑怯者だろう。ま、我らの助けになるならばありがたく思っておこう。それより、今のうちに急ぐぞ」

「は」

「ほら、そこ」

 一応は怪我をした部下を気遣って、自分が前に出て敵に立ち向かうだけの漢ではあるため、部下もついて来ているようである。


「私はルングーザ公国騎士団のロレンツォ・ベルガミ子爵である。フルジエロ公子殿下の軍から先発隊としてこの街に到着した。開門願う」

「万が一のため、確認させてください。第3公女様のお名前は?」

「マルテッラ様に決まっておろう!我々は敵陣にとらわれたマルテッラ様をお救いするために参ったのだ!」

「マルテッラ様は、この街の代官館にいらっしゃいますよ。お怪我をされた方もいらっしゃる模様。ぜひ公女様の治療を受けてください」

 少しだけ開門された隙間から街に入るベルガミ主従。


 代官館が街の中心であることを聞いてそのまま騎乗して中心部に進む一行。

「マルテッラ殿下!もう私が来たからには大丈夫ですぞ!」

「大丈夫?何のことか分からないけれど、怪我人が多いようなので、そこに並んで」

 発言内容が分からないが、まずは怪我人に対して回復魔法を発動していくマルテッラ公女。

「公女殿下自らの治療行為。感激であります」

 暑苦しい言動に戸惑うが、笑顔を見せ続けるくらいのことはできるように訓練されている公女であった。



「公女殿下、我ら騎士団への治療、誠にありがとうございました。でも、我らが来たからにはもう大丈夫です。何なら、フルジエロ殿下の到着までに敵兵を蹴散らして見せますよ」

「ベルガミ子爵、面白い冗談ですね。大丈夫ですよ。兄上の到着まで城門の中で休憩されていたら。敵兵への突入でお怪我をされては大変ですので」

「いえいえ、それではフィウーノ王国を図にのらせるだけで」

「ベルガミ子爵。コグリモ準男爵の主従の魔法のおかげで、このムッチーノの街も危機を脱しましたので」

「ニーニエロ代官、魔法使いなどがそれほど役に立つとは思えませぬ。また準男爵というのはこの子供ですか?まぁ、少しは役に立ったようだな。ご苦労だった。後は俺たちに任せてのんびりしておけば良い」

 レオはどう対応したら良いか分からず、自らは発言をせずにマルテッラとニーニエロの発言を待つ。


「では、ベルガミ子爵。あなたの麾下の30騎とムッチーノの騎兵50騎で、フィウーノの陣営をかき乱して貰えますか?」

「いえ、こちらのムッチーノの騎兵とは共に訓練をしたわけではありませんので、自分の部下のみで結構です」

「それでは少数すぎるのでは?」

「大丈夫です。私が育てた部下達です。お任せを」

 人数も多いので、代官館で泊まれるのはベルガミ子爵だけでその他は近くの大きな宿屋を貸し切ることになる。

 一緒に居た副官に対して、翌朝から出撃できるように準備を指示しておいて、自身は肩で風を切るような態度で割り当てられた部屋に向かうベルガミ。


「レオ、あなたも何か言えば良かったのに」

「上位の爵位の方に余計なことは言えませんよ」

「無謀な突撃だったのに、ベラ達に助けられたことを分かっていないみたいよね」

「まさか……」

 代官のニーニエロも、危うく自分の部下達を危険な目に合わせることになっていて微妙な顔をしている。

「大丈夫よ、あの性格だから他人の部下を借りたいなんてこのタイミングでは言わないわよ」

「そうかもしれませんが、ヒヤヒヤでした」

「籠城している仲間内でストレスを抱えて喧嘩するぐらいならば、結果として一体になって同じ方向を向けるようにすべきなのよ。その手段が、命を落とすような方法でなければ」

「つまり、怪我程度で済むように遠隔支援するようにしますね」

「レオも分かってきたわね。怪我ぐらい私が治してあげるわよ。でも、馬達の治療は慣れていないからレオも手伝ってよ」



 部下達の助言があったのか、翌朝になってベルガミ子爵が突撃して行ったのは、一番敵がいる西門ではなく、敵も少ない南門であった。

「レオ、良いのかい?あんな危なっかしい奴らの自由にさせておいて」

「子爵様だから。それよりも。ほら、矢を射って手伝ってあげて。魔法で手伝うのを嫌うみたいだから」

「いやいや、あれは矢だけではダメだろう。騎兵なんて突撃する勢いをつけた時でなければ。ほら、圧倒的に多い敵兵に囲まれ出して。しかもあんなに遠いと弓矢では届かないぞ」

「仕方ないなぁ」

 レオが≪飛翔≫で飛んで行き、子爵達の周りの敵への魔法攻撃を行なうことで、彼らが門に引き上げる余力を生み出す。



「ははは。いかがでしたか?我らの活躍は。やはり戦での主力は騎兵ですぞ」

 部下達は理解しているようで、自分達や馬への治療をしているレオやその仲間達に素直に感謝しているが、ベルガミ子爵は勘違いしているようである。

 子爵へレオ達が治療すると難癖をつけられる可能性があるので、彼にはマルテッラが対応している。

「できれば怪我が無いように帰って来て貰えると安心なのですが」

「公女殿下、怪我は勲章ですぞ。怪我もしないような遠くから攻撃する卑怯な魔法使いとは違い、敵と対峙した結果ですから」

「ベルガミ様!」

「あ、これは殿下のことを申し上げたわけではなく。殿下はお立場を踏まえて、ここで指揮をして頂ければ結構ですので」

 部下が気付いての注意喚起もあまり響いていないようである。


 当然ながら、ムッチーノの街の代官館では微妙な空気が流れている。


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