2022年 秋
2022年 秋
「エッチしてきたの?」と彼女は言った。
時刻は0時を過ぎた頃だったと思う。その瞬間、僕は今後起こることと、自分が実行するであろう行動を未来の自分に無理やり脳に詰め込まれたような気がした。
「あんまり信用ないんだな。」
「だって今日、爪切ってたから、そうなのかと思った。」
「してないよ。」
分かる。そして今、僕と彼女がお互い考えていることは全く違くて、全て「いい経験だったよ」と誰かに丸く納められる類のものになっていく。恋愛に熱せられた体に、彼女の言葉は冷水を頭から掛けたように僕を冷やした。
彼女とは今年の1月に付き合い、社会人経験が長く東京に転職し、余裕がありそうな彼女に惚れるのは時間はかからなかった。僕は来月には上京決意し、同姓を彼女と決めた数日後には職場に退職の旨を伝えた。去年の10月に4年ローンで買った車は売り飛ばし、それでも残った残債は銀行に借金をして返済した。4月には東京で転職活動をし、その業界では大手の企業に内定し、引っ越し資金と東京までのデート代は、ダブルワークをして稼いだ。そして9月の半ばを過ぎた頃、彼女と同棲を始めた。元々行動の速さには自信があったし、着々と準備を進め、達成感すらあった。
冒頭に戻る。
同棲を始めて1週間を過ぎた頃だったと思う。東京にいるここからの付き合いのある女の子と飲んで帰った夜だった。
衝撃だった。何よりここまでやってきたのに彼女の信用を得れていなかったことに、自分はずっと一人で先走っていただけだったように思った。ただただやるせなかった。しょうもな、何やってきたんだ。僕が何をしても、どう考えようと、こんな言葉一つで、全て終わりなんだ。終わりだ。僕が悪かったか。じゃあ今日のことは謝って、また関係を修復しよう、だってここまで僕は頑張ってきたじゃないか。一度信用を裏切られたからどうした。更に頑張って彼女を愛してやればいいじゃないか。ここまでやってきた以上のことすればいいだろ。熱が冷めるとか夢が覚めるとか現実に戻されるだの何だの、恋愛において使われがちな冷めてしまうとかいう類の状態が、文字通り身に起こりながら、自分で答えを探す。
こんなことを考え出したら、終わりなのは明らかだった。好きな理由を探すんじゃなくて、どうやったらもう一度好きになれるかとか、今の関係をどう不時着させるか、みたいなのを考え出したら、それはもう、執着だった。好きがベースにあって、その上で喧嘩とか話し合いとか、そうゆうのはいい、僕はその根底が、すっかり抜け落ちてしまっていた。なぜ今後も付き合っていくのか、本当に理解できなかった。納得できそうな論理をずっと考えていた。
しばらく彼女とはほとんど口を聞かなくなった。僕はこのまま別れていいのかとずっと考えていた。自分で言うのも恥ずかしいけれど彼女は本当に僕のことを好きでいてくれていたし、だからこそ僕もずっと答えを出せずにいた。
たった一度のトラブルだし、同棲してればそんなんこともあるだろ、お互い謝って直していけばいいだろ、そんなどこにでも載っていそうなアドバイスが、当事者には何の意味もないこと知った。
途中です。そのうちちゃんと清書します。




