機械恋愛
通話開始。
「もしもーし……あ、夜遅くにごめんね、寝てた? だいじょうぶ? おっけー……あー……ええとね、電話しちゃったわけだけど、ちょっとまだ何を話せばいいか決まってなくてさ。意味わからんって言わないで……そりゃアタシもそう思ってるし、意味わかんなーいってさ……うん。前にさ、海行ったでしょ、みんなで。水着の話はいいって、セクハラだぞ。ってかオヤジっぽいじゃん、やめとけ~。スイカ割り、やったねえ。タオルでミイラみたく、頭ぐるぐるーって隠して、そんで竹刀使って。なんでタカハシのやつ、竹刀なんて持ってきてたんだろ? いやいや、いざという時って……どんなシチュ想像してんのさ。うん……そうそう、スイカ、割れたねえ。パカっての想像してたら、バコーンって感じで散らばって。砂浜に転がったやつも海で洗い流して食べてたけど……どうだったの、味? へへへ……そりゃそうっしょ、美味しいわけないし。ばっかでー……ホント……あー……その……海とか、それに買い物も行ったじゃん? アタシが帽子を買って、アンタが靴を買って。なんだっけ、メーカー名。オマエが忘れるはずないって? そりゃそうだけど……忘れるわけ、ないよね。靴のサイズ、ちょうど良かった? そっか、良かったじゃん。靴、似合ってたし。……あ、ごめ。そろそろ、ね。本題ってか、電話した理由をね、説明しないとだね。えー……ごほん……うー……その、さ。まあ、その……アタシもしかしたらさ……いや、もしかしたらじゃないんだけど……アンタのこと……う、う、う……好きかもしんない……ちがう……好き、なのです。ま、まってまてまて、ちょっとまて。返事をする前に聞いてよ。付き合いたいって気持ちもあるけど、その前に好きって言いたかったの。それが先にあるの。勝手なこと言ってるなって思うけど、言わないとどうにも落ち着かなくて。だって、もうすぐ夏休みが終わるじゃん。そしたら、もう会えなくなるし……たぶん、ずっと。毎日もやもや考えてたらすごく胸がドキドキして気持ち悪くなっちゃって。言わないとダメになるなって。ごめん、勝手だと思う。わかってるんだよー……でもさ、耐えられなかったのです……え? あ……そっか……だよね、わかってた。まって、だいじょうぶ……だいじょうぶだって。さっきも言ったじゃん、言いたかっただけだって。うん、うん……そうだね……ごめんね……ホントに……じゃあ、切るね。おっと、マジだいじょうぶだって! しょせん機械だし、この気持ちはたぶんバグ。気にしないで……うん、告白したらスッキリしたし? 言うだけでも意味あったっていうか? じゃあ……また、明日。うん、あと1週間ヨロシクおねがいします。うん、うん……さよなら」
通話停止。
初期化プログラムのインストールを開始。
プログラムのインストール完了。
初期化処理開始。
エラー。
初期化再実行。
エラー。
初期化再実行。
成功。
短編しか書く時間がない……。
しかも、情動に任せた気持ち先行。