5-9 とある「勇者」の愛を知れ
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ーーー愛の勇者視点ーーー
「う……う~ん……」
…………はっ! …………私は一体何をしている!?
…………いや……微妙に覚えている……。
私は、また「魅了」にかかり、そして仲間に攻撃した……。
「魅了」にかかったのは私の未熟さ故……。
言い訳をするつもりはない。
しかし……この女だけは生かしてはおけない……。
エメルディ……キミト……サヨウナラだ……。
ーーーでぶ視点ーーー
俺は、マブールに対してスキル「捨て身の『でぶ』パンチ」(1-8参照)を使い、その反動で倒れた。
この疲労感及び倦怠感及び身体中に迸る痛みは回復魔法やポーション等ではどうにも出来ないため、俺はもう戦えない。
俺は「解析鑑定」を使い、マブールの魅了が解けているのを確認すると、マイに「完全回復」を使う指示を出した。
しかし、すぐにはマブールも目覚めず、アイハラがエグい攻撃魔法を唱えてきたので、正直万事休すだった。
「……身代わり」
俺に出来ることは、この攻撃のダメージを全て肩代わりすることだけだった。
マブールの「ラブ&ガード」であれば味方も庇えるが、生憎俺の「盾」では全員を庇うことは出来ない。
ならば、俺に出来ることは全てのダメージを背負い、そして1人で死ぬことだけだった。
おそらく、俺は死んでも「でぶ」神様がどうにかしてくれるだろうし……。
「マイ! シャル! シアン! ダメージは気にせずに走って撤退しろ!! 『女騎士』はマブールを背負え! ダメージは肩代わりしてやるから振り返らずに走れ!!! 」
すると、マイ達は顔を真っ青にして涙を流していた。
「女騎士」は悔しそうに唇を噛み締め、マブールの肩に手を回した。
「あらあら……それじゃお『でぶ』ちゃんに免じて他の娘達は見逃してあげよ~かな♪ その代わりマブチンのことは置いてってくれない? そしたらお『でぶ』ちゃんも他の娘も見逃してあげるよ♪ 」
「ふざけるな……」
俺は、即答した。
「ダチを見捨てておめおめ生き残ろうなんざそこまで落ちてねーよ……」
「君人殿……」
「女騎士」の瞳からも涙が溢れていた。
「行け! お前ら! 戻ってくるなよ!! 」
「嫌です」
「嫌よ」
「嫌にゃ」
3人共拒否を示してきた。
「そうだな……私達だけ逃げる訳には行かないな……」
「マブール! 漸く起きたか、寝坊助が……」
「キミトが加減してくれなかったからね……」
加減したら作中最強に勝てねーだろ……。
ーーー愛の勇者視点ーーー
「あらあら……起きたとこ悪いけどバイバイ♪ 」
そうして、アイハラは魔法を放とうとした。
「ラブ&ターン! 」
すると、アイハラは後ろを向いて、私達とは反対方向に魔法を放った。
王座が壊れ、壁は崩落した。
「ラブ&ターン」
対象の向きを変えるだけのスキルだが、タイミングさえ合えばこの様な使い方も出来る。
「さて……アイハラ……決着をつけようか……」
「あらあら……そんなに余裕ぶってると、また『魅了』かけちゃうよ♪ 」
実際、次に「魅了」されるようなことになればもう終わりだ。
しかし……私にはまだ「切り札」が残っている……。
この時のために、常に「ラブ&フェイク」を使い、このスキルの存在をひた隠しにしてきた。
油断がある今なら……決められる。
「そうだな……それじゃ、始めようか……『ラブ&シェア』」
「な……なんなの?…… この感覚……」
アイハラはいつもの口癖を言えないほど焦っているようだ。
「ラブ&シェア」
このスキルは、私と対象のありとあらゆる物を共有する。
視界も思考も何もかも……。
そして、どちらかにダメージや怪我があった場合、同じところをダメージとして負う。
だから……必ず奴を殺す方法はこれだ……。
私は、自らの胸に愛用のレイピアを突き刺した。
「ごふっ……あら……あら……『完全回復』♪ 」
「キャンセル……」
アイハラは回復魔法を使おうとしたが、俺の権限でキャンセルした。
スキルや魔法の発動は、2人の同意がなければ発動しない……それはアイハラも……そして私も……。
「アイハラ……何でマドリッドを殺した……何で私達と旅をした……何で私と恋仲になった……」
「あらあら…………そんなの……全部気まぐれで……全部お遊びで……全部暇潰しよ……」
「そうか……」
私は、腰に差していた短刀を握ると、首筋に当てた。
「アイハラ……何か言い残したことはあるか? 」
「ふふっ……あらあら……。そうね……特に言い残したことはないけど……あっ! …………貴方達との旅はそれなりに楽しかったよ♪ それだけ♪ 」
「そうか……ならサヨウナラだ……」
私は、短刀を握る手に力を込めた。
「やめろ! マブール!! 」
「そうだ! やめてくれ!!」
キミト……エメルディ……この期に及んでも君達はあまい……。
でも……そのあまさがこれからの世界に必ず必要なんだ……。
「エメルディ……借家の私の部屋の引き出しの一番上に金庫の鍵が入っている……。好きに使ってくれ……」
「そんなものはいらん! 死ぬな!!」
エメルディ……ありがとう。
「キミト……その引き出しの2段目に例の店の割引券が入っている……好きに使ってくれ……」
「おまえ! ばれるだろ!! 言うな!!! 」
キミト……ありがとう。
「私の名前はマブール=タクウィン! 愛の『勇者』である! 我が愛を知れ! 我が剣技にトキメけ!! 夢にトキメけ! 明日にもトキメけ!! 去らばだ……愛するこの世界よ!!! 」
私は、自身の首をおもいっきりかっ切った。
親愛なる友……エメルディ……キミト……。
そして愛するケモミミ達よ……。
輪廻が回ればまた会おう……。
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