2-10 「美少女」の過去
ーーー美少女視点ーーー
私の名前は シャルロッテ=ライクルー。
獣人族の島「West Front island」の中でも長年大きな領地を持つ、名門の貴族であるライクルー家の三女として生を受けた。
といっても、兄と姉が7人もいたし、私は側室との子供だったので、稼業を継がなくて良さそうだった。ちなみに、母は人族だった。
私は基本人間の姿をしており、魔力を使うと獣人の姿に成れて、身体能力が上がる特異体質らしかった。
通常、人族と獣人族の間に子供が出来ると、母親と同じ族の特徴のみが残るらしいが、私は父の残してくれた獣人の血を感じることが出来て、この力を嬉しく思っている。
私の人生は、約10年間、非常に恵まれていた。
側室の子供というのも、特に気にされず、実母も獣人である父の正室の方も同じように良くしてくれ、優しい家族、沢山の使用人に囲まれ、豪華な食事も用意され、最高の家庭教師も召集され、欲しいものも全て手に入る……そんな幸せな日々だった。
しかし、幼い私にとって、生まれながらの恵まれ過ぎた環境こそ、世の中の普通だと思っていた。
だから……ライクルー家が没落すると、私は居場所がなくなった。
深夜、私が目を覚ますと、屋敷のあちこちから火の手があがっていた。
私が急いで部屋を飛び出すと、使用人達の死体があちこちに転がっていた。
「ママ!」
そして視界には母が無惨な姿となって現れた。
しかし、現実は刻一刻と迫っている。
「……パパ! ! 」
私は急いで両親の寝室に向かった。
しかし、2人が寝ていたベッドには、肉が燃え尽き、僅かに残った骨が放置してあるだけだった。
「……パパ……お母様……」
私がうちひしがれていると一段と火の手が強くなった。
私は、窓から外を確認しようとした。すると、2人の男達がスキルで屋敷を燃やしていた。
「魔力探知」スキルで何も感じなかったので、あれは魔法ではない。
2人の男、どちらも火を使うスキルを持っている。そのことは間違いようがない事実である。
私は、この2人を殺すことを心に誓い、こっそりと逃げ出した。
幸いなことに脱出することは出来たが、本当の地獄はこれからだった。
翌日、私の家族、使用人は全て死亡したことがわかった。
そして、火の不始末で大勢の使用人を巻き込んだ罪により、ライクルー家は貴族号を剥奪され、平民に格下げとなった。
私は、これを何者かの陰謀であると考え、顔を隠し、名を偽り、ひっそりと生きてきた。
山を越え、谷を越え、海を渡り……約2年の歳月をかけて、このバブルロード島へたどり着いた。
道中、難度も魔物に遭遇したが、既に屍と化していた冒険者の死体から槍等を拝借し、生き延びた。
しかし、いつしか力尽き、魔物のエサになるか、道端で雑草の肥やしとなるところであった。
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「やっとおきたかにゃ! 」
次に私が目を覚ますと、茶髪の女の子が元気に声をかけてきた。
良く見ると頭から耳が生えている……私と同じ猫系の獣人らしい。
素朴で大きくはないが綺麗に片付いた部屋に、簡易的ではあるが清潔感のあるベッド。
どうやらこの女の子の部屋のようだ。
「お、おはよう……? で良いのかな? ここは貴女の家? 」
「そうにゃ! 森に木の実を取りに行ったら、倒れてたところを見つけたから運んできたにゃ! 」
「あ……ありがとう。 私は他の島から来たんだけど……良かったらいろいろとこの辺のことを教えてくれる? 」
「勿論! なんでも教えてあげるにゃ! でもでも、その前にココア飲むにゃ! 」
私は女の子が作ってくれたココアを受け取った。
「……美味しい……」
温かい……ココアも、この子の心も……。
「あれっ……」
いつしか、私の目からは涙が溢れ、一度決壊したら、止まらなくなった。
あの炎使いを殺すまで自分の感情を抑えていた。
泣いたのなんて、いつぶりだろう?
「にゃ……にゃかないでほしいにゃ……」
女の子は、私を軽く抱き締めてくれた。
「もし、行くところがにゃいにゃら……ずっとここにいてほしいにゃ……」
私は、女の子の胸に顔を埋めて、暫く泣き続けた。
「私はシャルロッテ……貴女は? 」
私は、偽名ではなく本名を名乗った。
流石に家名は名乗らなかった。
「シアンはシアンだよ! 宜しく! シャルちゃん! 」
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それから私達は約3年間、協力して生きてきた。
お互いの身の上については暗黙の了解で聞かないようにしていた。
それでも、1人でいるより2人でいる時間はとても楽しく、温かかった。
だから、彼女が2日間帰ってこなかった時は絶望に包まれた。
だから、私は話しも聞かずに襲ってしまったの。
イガラシさん、エルドライドさん……。
謝っても許されることではないけど、本当にごめんなさい……。
そして、シアンを助けてくれてありがとう。
私は、もし許されるなら、貴方達と4人で一緒に……。
でも、それは駄目よね。
私の復讐に巻き込んでしまうかもしれない。
そのことを心配しているのならシアンのことも拒絶するべきだったのだから、矛盾してるよね。
だから、私は今からでもシアンの前から消えるね。
サヨウナラ、シアン。
私を助けてくれて、ありがとう。
私と一緒にいてくれて、ありがとう。
私の…………
家族になってくれて、ありがとう。




