2-9 腹黒「でぶ」
ヤクザ顔の「でぶ」と対面したが、瞬時に互いが互いを敵と判断、即時スキルの応酬が始まった。
「炎!」
「焔!」
俺の「炎」を似たようなスキルで相殺してきた。
「ライトニング! 」
「焔!」
マイの雷魔法も同様に炎系のスキルで相殺された。
その間、後方に見えていた獣人娘のところへ「獣人化」した「美少女」が回り込もうとしたが
「焔!」
盗賊の頭のスキルにより産み出された火により、先へ進めないでいた。
「ぐふふっ……。おい『でぶ』、2人もわざわざ美女を献上しに来てもらって悪いな……お前を半殺しにした後、お前の目の前でたっぷりと楽しませてもらうわ……」
「あっ? 黙れや『でぶ』……殺すぞ……」
「んだと! ……俺様は『でぶ』じゃねぇ! ポッチャリだ!! 」
盗賊の頭は激しく怒りを露にしている。
「はぁ……教えてやるよ。ポッチャリって『でぶ』なんだよ……」
「なん……だと……」
盗賊の頭は酷く落ち込んでいるようだが、もう1つ、事実を述べなくてはならない。
「あと、あんたはポッチャリじゃなくて『でぶ』だからな? ビール腹と言うより長年の不摂生が祟ってるし」
それを聞いた盗賊の頭は逆上し、馬鹿の1つ覚えのスキルを放ってきた。
「焔!」
「炎!」
すかさず俺は「炎」で相殺した。
すかさず「解析鑑定」を使用。
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名前:タクゾウ=シオハタ
年齢:48
階級:35
状態:?
職業:盗賊の頭
通称:焔の「勇者」
称号:転生してきた「勇者」
人類の敵となった元「勇者」
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……ん? シオハタだと?
「おい! タクゾウ=シオハタ ! 」
俺は早速奴の名前を呼んだ。
「あっ? てめー、まさか転生者か? 」
奴も転生者特典の「解析鑑定」を持っているのだろう……名前がばれたことでこちらも転生者だと疑っているようだ。
「あー、そうだよ。俺も転生者だ。それより、あんた、 タイキ=シオハタ とかいう親戚いないか? 」
俺が質問に答え、馬鹿「勇者」の名前を出したところ、奴は大きく目を見開いた。
「タイキはうちの三男坊だが……それがどうかしたか? 」
実子かよ……それは使える情報だな……。
「そいつが炎の『勇者』になってることは知っているか? 」
俺はすかさず確信をついた。
「は? あいつもこっちに来てんのか!? 何処で会った! 」
奴はやはり知らなかったようだ。
「知りたかったらその娘と引き換えだ……悪い話ではないだろ? 」
それで許してやっから譲歩しろ。
「お前を半殺しにして口を割らせれば良いだけだろ! 」
まー、そうなるよね、めんどくせぇ。
「良いのか? 俺とタイキは親友だぞ!? 俺が攻撃されたと知ったら、きっとあんたを恨むぞ?」
スキル「詐術」発動。
誰があんな生ゴミと仲良くするかよ。
「くっ……。まさかあいつがお前みたいな『でぶ』と仲良くしてるとは……良いだろ、連れてけ……」
はぁ、ようやくか。ごみと話すと疲れるわ。
俺は「切断」で檻を解体し、「収納」からタオルと水筒を取り出し、タオルを濡らしてから「美少女」に渡してやった。
「美少女」は獣人娘の顔や頭を拭いてあげている。
さて、こちらも手早くすますか。
「あんたも水飲むか? 」
俺は出来るだけ平然としてタクゾウに話しかけた。
「あ? 俺には酒があるから問題ねぇよ」
タクゾウはそう言って、一升瓶を取り出した。
「へぇ~良い酒だな、良く見せてくれないか? 」
俺はそんなに酒に詳しくはないし、そこまで興味もないのだが、僕、興味あります! という感じで近づいた。
「おっ! 坊主もいける口か……高い酒だから見るだけだぞ」
俺はタクゾウから瓶を受け取り、少し眺めてから返却した。
そしてマイにアイコンタクトをすると、マイはすぐに俺の意図に気づいたようだ。
タクゾウはコップを取り出し、酒を注ごうとした。
「お注ぎ致しますわ! 」
マイが提案すると、タクゾウはニヤつきながらマイに瓶を渡した。
マイは笑顔で酒をついだ。
「たまには嬢ちゃんみたいな別嬪に酌だけされるのも悪い気はしねぇな! 」
タクゾウはすぐに1杯目を飲み干すと、すかさず2杯目を注がせた。
2杯目を飲んでいる最中、タクゾウがコップを落として吐き出した。
「あ~きっちゃないにゃ~……」
「美少女」がまるで汚物を見るような目でタクゾウを見ている。
「雷鳴! 」
「ライトニング! 」
すかさず俺とマイは雷によりタクゾウを麻痺にして、道中で拾ったロープで縛り上げた。
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名前:タクゾウ=シオハタ
年齢:48
階級:35
状態:猛毒、麻痺
職業:盗賊の頭
通称:焔の「勇者」
称号:転生してきた「勇者」
人類の敵となった元「勇者」
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……お分かり頂けただろうか?
そう……タクゾウから一升瓶を預かった際、小声で「猛毒」のスキルを発動したのである。
卑怯だろうと勝ちは勝ちなのである。
さて、街へ帰るか。




