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妖怪管理人、猫見の可笑しな日々  作者: 煙草屋パイプ
アパート住民は悩ましい
9/11

猿神の捕物

あらすじ

東京の街外れ、十字路を左に折れた先に『ネコネコアパート』は静かに佇んでいる。

管理人室では、猫見という名の管理人、ご隠居と呼ばれる怪老人、妖しい女、家廊

が暮らしている。ちょっと不思議で、でも気のいい三人を巻き込んで

起こる住人たちの悩み事!

少しの悩みも、果ては殺人事件まで三人が解決!

「どうも、悟りです」

猿神が泥棒を働くという夜に、二人の男が訪ねてきた。

「いや、猫見さんすいません。悟りと話をしたら、

「自分の発言で泥棒が生まれたのなら俺がケジメをつける!」って」

「僕の未来予知のせいですからね…猿神を捕まえたら即刻拳骨です」

大きな眼をして、少し小柄な姿の悟りは、こくこくと頷いている。

「猫見さん、そう驚かないでくださいな。

悟りはね、未来予知ができますから。位置探知なんてお茶の子さいさいでさあ」

その時、突然悟りの眼がカッと光を一瞬放った。すると、

「おや、後数分で猿神がやってきます。209に張り込みましょう」

と猿神の到来を教えてくれた。

悟りは確かに有能で、猿神の目当てはこれだとか、

怪我人や死傷者は出ないと教えてくれた。急ぎ209の部屋に向かい、

境目さんに事情を説明する。

「境目さんは、犬神カフェでも時間を潰しててくださいな」

素直な住民は、大人しくカフェへと向かった。

私たちは影の内に隠れ、猿神を待った。

一分、二分と時間は刻々と過ぎていく。

数時間、いや、数分だったかもしれない。

遂に、カチャンと窓のロックが外れる音がした。

ちなみに、ここは七階なので人間にはとても無理な芸当だ。

忍び足で入ってきた猿神は闇に紛れるためか、全体的に黒い服装をしており、

黒い山高帽に、黒いサングラス、黒い靴を身につけていた。

猿神は部屋の中央に置かれた花瓶に近寄り、

生けてあった薔薇を取ってスーツの胸に挿した。

「なるほど、中々粋な男のようね」と家廊が囁く。

そして、遂にご隠居の合図で悟りが電気を点けた。

予期せぬ光に眼を瞬く猿神は、少々抵抗はしたものの

驚くほど呆気なく縛られた。

そして、懐に隠し持っていた境目さんの箱も取り上げた。

「この馬鹿者がっ!人様に迷惑をかけ、挙げ句の果てには俺の未来予知を

悪用しやがって」

ゴンと悟りが猿神を殴った。

「すいません、予言があんまり当たるもんで」

今度は無言で半兵衛が猿神の頭を叩いた。

「突然「今日の夜、留守の家を教えろ」なんて言うから

何をするのかと思ってたら、まさか盗みとは!この唐変木の阿保が」

散々みんなに責められて、猿神は既に半泣きだった。

「勘弁してください、もうやりません、もうやりませんから」

「それは再犯する輩の常套句じゃ、猿神よ」

呆れたようにご隠居が呟く。

「ミャア、一応なにか罰を与えたほうがいいんじゃないですか?」

「そうじゃな、盗まれた人々の仇討ちじゃ」

暫し皆が腕組みをし、考えを巡らせる。

「ああっ、良いこと思いついた!」ここで家廊が人の悪い笑みを浮かべる。

「孫悟空の頭に付いていた輪は知ってるわよね?それを猿神にも付けるのよ」

ポンと半兵衛が手を打った。

「なるほど、孫悟空も猿。猿神も猿。丁度良いじゃないですか」

猿神は半泣きを超えて既に泣き始めている。

「勘弁してくださいよ…」

「あんたね、孫悟空は岩に数年間押し潰されてたのよ?

その罰を受けないだけありがたいと思いなさい」

有無を言わせず、何処から取り出したのやら悟りが輪をはめた。

「これで、一件落着ってことかな」

項垂れて帰っていく猿神の背を、

宵闇の中五人の人ならざる者たちが見送っていた。


猿神:これから俺はどうやって暮らせば…

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