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妖怪管理人、猫見の可笑しな日々  作者: 煙草屋パイプ
アパート住民は悩ましい
6/11

古狸タクシー

あらすじ

東京の街外れ、十字路を左に折れた先に『ネコネコアパート』は静かに佇んでいる。

管理人室では、猫見という名の管理人、ご隠居と呼ばれる怪老人、妖しい女、家廊

が暮らしている。ちょっと不思議で、でも気のいい三人を巻き込んで

起こる住人たちの悩み事!

少しの悩みも、果ては殺人事件まで三人が解決!

「ええっと、「土蜘蛛 生活用品店」はどこだったっけ」

一反木綿 駅 から徒歩10分の土蜘蛛 生活用品店はこの国有数の大手で、

シャンプーから上質な栗饅頭まで、様々な種の品を揃えていることで有名だ。

今日は家の食品が底をついたので、一気に買おうと思ったのだが…

方向音痴な猫見は中々、土蜘蛛 生活用品店を見つけられない。

小さい地図だったは持ってきたのだが、地図は不幸なことに

家廊の書いた地図だった。

てっきりご隠居が書いたものだと思って安心していたのだが、

悪筆で知られる家廊が書いた地図となると…

恐る恐る二つ折りにした地図を開くと、案の定全く読めない。

棒線が五本書いてあるだけで、それ以外は判別できなかった。

一反木綿駅に辿り着く事も叶わず、一つ手前の化け小僧駅で降りてしまう始末。

どうしようかと途方に暮れていた時、どこからか良い香りが漂ってきた。

「ミャア、香ばしい薫りが…」匂いを辿ると、一つの店に着いた。

綺麗な文字で描かれたその看板には、「犬神カフェ」と書かれていた。

サッと音もなく開く「じどうどあ」なるもので驚き、

ひっくり返ってしまったこと以外は特に異常なしだった。

「ミャ…この ぶらっくこーひー というものを一つ」

コポコポ、シューと心地良い音が聞こえ、

黒く光っている香ばしい飲物、ぶらっくこーひーが現れた。

休憩のつもりで一口飲むと、猫見は吐き出してしまった。

「ミャア、なんでこんなに苦いんだろう…?」

店員が苦笑しながら教えてくれた。

「苦いようでしたらそこの小瓶の角砂糖を入れると良いかと」

指示に従い、三つ入れると丁度良い苦さ、甘さになった。

寸の間ぶらっくこーひーに夢中になり、夢中で啜る。

もちろん、ズズーっと音を立てないようにだ。

現金会計を済ませ、試しに店員に 土蜘蛛 生活用品店の場所を聞いてみた。

すると親切な店員は、懇切丁寧に教えてくれた。

「ここを曲がって…そこを右に折れるんです」

「ミャア、なるほど。ありがとうございました」

「じどうどあ」でまた少しビクッとしたが、ひっくり返ることはなかった。

人々が行き交う道路を過ぎ、左に折れて右に折れると、

確かに 土蜘蛛 生活用品店 はあった。

「さあ、買い物だ!」

エレベーターで三階の食料売場まで上がり、

ご隠居のために栗饅頭を数個買い入れ、家廊のカレールーを買う。

切れていたシャンプーを買い、刺身を買う…

とやっているうちに辺りは暗くなり、すっかり陽が落ちた。

たくさんの買い物袋を抱えた私は、また途方に暮れていた。

道路でどうしようか迷っていると、後ろからクラクションが鳴らされた。

振り向くと、車体に「古狸タクシー」と印刷された車が停車していた。

運転手は窓から顔を出し、陽気な口調で喋り始めた。

「やあ、旦那乗ってくかい?歩くにはちょいと荷物が多いようだがね」

私は快くその誘いを受け、座席に座った。

「旦那、あんた人じゃあないんだろ?うん、じゃああっしと同類だ」

振り向いた運転手の顔は、人の良さそうな狸の顔に変わっていた。

「あれ、化狸さんですか。まさかこのタクシーは幻術じゃありませんよね?」

「いやいや、あっしは仲間を騙したりはしませんよお」

胡散臭い言動を疑いながらも、私は疲労のせいで眠ってしまった。

ゆらりゆらりと車の揺れを子守唄にして。

そして気がつくと、狸の手が私の腕を叩いていた。

「お客さん、着きましたよお」

「ふにゃ…あ、すいません」私は料金を払い、管理人室へ帰った。

「ジャーン、見てください、ご隠居!

秋に採れた上質な栗を丸ごと入れた最高級栗饅頭ですよ」

歓声が上がり、ササっとご隠居が近寄ってきた。

「ふうむ、良い香りじゃ」

「ふっふっふ、あたしのカレーも買ってきてくれたよね?」

「もーちろん!家廊の大好物、「バーミンドカレー特製版」だよ」

一際大きな歓声が上がり、猫見たちは一斉に食卓へ駆け寄った。


運転手:毎度ありがとうごぜえます

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