馬鹿とロバ
「...ったくそれにしても移動手段がロバってのはねえよなあ!?あの依頼屋のオヤジ、次会ったらメッタ打ちにしてやる」
「まあそう怒るなって。昨日まで屋根裏部屋のそのまた隅で腐ってたような俺たちに依頼をくれたんだぜ?」
「それにしてもロバはねえよなあ...」
「グダグダと煩い奴だ...ロバに恨みでもあるのか?」
「親を殺されました」
「まったく...馬鹿を言うのもほどほどしろよこっちが疲れる」
「馬でも鹿でもなくロバだけどな」
「......」
「んだよそっけねえなあ」
「あ街が見えたぞ」
「オイ」
あれが街か...確かパスチェラータとかなんとかだったな...まあいい。
俺たちジルとガルは幼馴染で、あ俺のほうがジルね。でいけ好かないのがガル。
「なんか言ったか」
ついに心の声まで聞こえるようになったらしい。以心伝心ってのも怖いもんだ。
話を続けよう。仲良し二人組はチームを組んで、そんでもって冒険で荒稼ぎして...って算段だったんだが上手くいかないんだなコレが。
世の中には俺たちみたいな野望を持った奴がごまんといて、まあ大したこともできずに腐ること1年と3ヶ月13日。
ようやく舞い込んだ依頼が荷物の運搬だとは世知辛えなあオイ。
「しけた顔してないで、ほら街に着いたぞ」
お、街のゲートが目の前じゃないか。
「ん。じゃあ手分けして荷を集めようか。俺は南エリア、ガルは北エリアをよろしく頼む。ゲートで再集合な」
「了解」
「あとウマそうな食いもんも頼む。なんせ腹がペコペコだ」
「ロバでも食っとけ」
なんたる辛辣さ。
ー三十分後ー
「おうお疲れ!思ったより小さな街で集荷が楽だったな」
というのはガル。
「ラクダでなくロバだけどな」
とはジル。
「沢鶏の唐揚げはお預けな」
「ガルさまお許しを!抱かれたい男ランキング堂々の第1位!」
「最後が余計だったな...おおこいつはウマいぞ、二人前ぐらい余裕でイケそうだ」
「...そんな...ヒドイ...」
「ほらやるよ。俺も鬼じゃない」
このツンデレがタマラン。ついでに唐揚げもタマラン。
「...北エリアにはなんか面白そうなもんあったか?」
「特にはな。そっちは?」
「面白いって言っちゃあアレだけど、商店のバアさんが奇妙なことを言ってたな」
「...ほう...どんなだ?」
「んんっと...古い言い伝えらしいんだが...」
...旅路の帰りにゃ魔が宿る、老婆の扱いにゃあ気をつけるんだよ...
「...とかなんとか」
「それって老婆とロバをかけただけなんじゃ...」
「ああなるほど!お前天才だな!」
「お前の相手をしてれば、誰でも気づけるようになるさ...」
「まあいい!帰るぞ!」
「...はいよー」
...いつになったら冒険家としての芽が出るのやら...
(終)