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試食会

 ラッセルは眠っていた。

 満足いく仕事をした感じがあった、さぁ、今日はなにもかも忘れてゆっくり・・・


「ラッセルちゃん!!」


 うるさいな・・・ 寝かしてくれ・・・


「ラッセルちゃん!! これはなに?」


 クロウが手にもつ封筒にはかわいい文字でこう書いてあった『試食会へのお誘い』

 そう昨日料理の練習を終えたシガニーと3人で相談して決めたのだ、クロウに食べてもらおうと!!


「ラッセルちゃん、僕のこと見捨てたの?」

「ちっ違うぞクロウ、シガニーは料理の練習を頑張ったんだ俺とあんじーが見守る中食べられる料理を作れるようになったんだ!! どれだけ沢山の犠牲を出したか・・・」

「なんで料理の練習で犠牲がでるんだよ!?」

「近隣の獣の犠牲と試食した魔族たちが・・・」

「ラッセルちゃんも食べてみたんだろうね!!」

「・・・・・・・・・まだ死にたくない・・・」

「薄情者!!」

「大丈夫だ!! 試食した奴は全員生きている!!」

「料理の話だよね?」

「シガニーはおまえに食べて欲しいって言ってたぞ?」


・・・・・・・・・


 うるさかったクロウが黙った、黙らざるを得なかった。

 小さな声で呟く・・・

「うらぎりもの・・・」

「大丈夫だ、練習したからな、お昼に門の前に来てやってくれ、おれらも行くから」



 門の前の階段にあんじーと二人で腰をかける。


「あのシガニーさん、今日はお招きいただいてありがとうございます。」


 もじもじするシガニーさん、すでにクールなキャラは失われつつある。


「クロウさま、あの、来て頂いて本当にありがとうございます・・・ 魔王様にクロウ様の好きな料理をお聞きしまして・・・ 食べて頂けたらと・・・」

「好きな料理? ・・・ あーなるほど・・・ はいあれですね?」


 チラッとこちらを見るクロウ。

 親指を立て微笑み返す。


「では、調理をはじめますのであちらでゆっくりしていてくださいね。」


 こちらに戻り隣に座るクロウ。


「魔王様、いったいどういうことです?」

「料理が下手な奴って変わった物いれようとするからダメなんだよ。食材も調味料も指定のものを使えば間違っても食べれるものができるはずだろ?」

「なるほど・・・」

「変な物入れないようにするの大変だったんだぞ」

「ラッセルちゃん、僕のために・・・ ごめんね朝は怒って・・・」

「いいって気にするな、後は練習通り出来るかだな」


 シガニーがまな板の上に大きな肉を置いた。


「さぁ、始まりますね、あんじーさん」

「地獄のような三日間でしたね、まーおさん」

「ここからはクロウにもわかるように丁寧に説明していこうと思います」

「はい、まーおさん、おっとお肉から少し離れて魔力を集中してますね」


 二人は悪のりしている。


「あんじーさん、初日にお肉を粉みじんにした、風の魔法ですね」

「ええそうですまーおさん、魔法で調理した方がかっこいいというまーおさんの言葉を真に受けて練習しましたからね」

「おっと、風の刃がお肉を切り裂いて一口大になっていった」

「これは見事ですね。くろさんいかがですか?」


 シガニーがこちらをチラ見している。


「けっ結構なお手前で・・・ 何、こういうノリでいくの?」

「まぁ、いいじゃん、おれらも苦労したんだよ・・・ な」

「うん・・・」

「ほら、くろ!! ちゃんとシガニー見てて。あっとシガニーさん丁寧にお肉に塩を揉み込んで行きますね」

「丁寧な仕事ですね、あんじーさんこれを見ている男の子は思わず惚れちゃいますね」

「惚れちゃうの? まーお?」

「いや言葉のあやだよ」

「おっとお肉の準備が終わったようです。」

「網の上に丁寧に乗せて行きますね」

「おっとシガニーさんが後ろに下がった!!」

「集中していきます、くろしっかり見ててあげてね」


 シガニーの周りに火球が三つ現れ、網の方へ向かいお肉を中心につかず離れず回転をはじめる。


「火球よ・・・ 我が想いに答え、ゆっくりあぶるように・・・」


「クロウさん見てください、この見事な火加減、これを習得するのにどれだけ時間を費やしたか!!」

「消し炭になったお肉さん達ごめんなさい」

「・・・そうなんだ・・・」

「じんわりとお肉に焼き色がついていきます」

「お肉の焼ける臭いがただよってきますね。おいしそうです!!」

「確かにおいしそうだ・・・」


 火球は静かに消えていきお肉だけ残った。

 お皿にお肉をとりわけ食べる準備をする。


「よかったなクロウ」

「魔王様、ありがとうございます、本当に・・・ 本当に・・・ ありがとう」


 さぁ、呼ばれるのかと思った時シガニーは言った。


「特別な日、特別な相手、特別な仕上げをしなくては・・・」

「「「えっ?」」」

 

 観覧していた三人がシガニーのつぶやきを聞き固まった。

 箒と小瓶を空間から取り出し、ふわりと宙に舞い、小瓶から粉を振りかけたそれはそれは美しい光景だった。

 ラッセルとあんじーの方を向くクロウに、二人は精一杯首を振った、知らない!!

 涙目になるクロウ・・・


「さぁ、クロウ様出来ました、私、頑張って作りました食べてください」


 キラキラした目でクロウに近寄るシガニーは勇気を持って行動した。


「はい、あ~ん・・・」

 

 照れくさそうに、横を向きながら差し出されたお肉。

 クロウは魔力を集中して一口、途中まではおいしそうだったはずなのに・・・

 頭を垂れ回復に専念する。


「おいしいですか?」

「・・・・・・は・・・い・・・」


 じゃあ、もう一口あ~ん、パク・・・

 シガニーがこちらを向き微笑む。


「あんじーと魔王様の分も作りましたからね♪ 教えて頂いてありがとうございました、感謝してるんですよ」


 青ざめる俺とあんじー。


「いやクロウに食べさせてあげて、クロウの為に作ったんだろ?」

「そんな大きな声で言わないでください!! 沢山ありますから」


 項垂れたクロウの眼光がこちらをいままでにない怖い顔で睨んでいた。


「あっはい、いただきます・・・」


 あんじーおまえだけは逃げろ・・・ こっそり伝えるもそれはシガニーに阻止された。


「あんじーもありがとう」

「いいえ・・・ 気になさらず・・・」

「変な言い方して、あなたもはやく大きくなって・・・ね♪」

「は・・・い・・・」


 その後のことはご想像ください。

 大丈夫、三人は生きてます。

読んで頂いてありがとうございます^^

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