終わりではない・・・
砕けたゴーレムの破片を握りしめる小柄な男? ゴブリン族である。
その小男は、右手に珠を持ち左手に砕かれたミスリルゴーレムの破片を持っていた。
影に隠れつつ、拾ったその破片を珠にくっつけ魔力を高める。
青い珠が淡い光を放つ。
「なんだあいつは?」
ジャンがその存在に気づいたときには遅かった。
小男はストーンゴーレムの中心に向けて走った。
走りながらこぼれ落ちる光は5粒、それは、徐々に大きくなりゴーレムになった。
ミスリルで出来たゴーレムに・・・
魔王軍に訪れる動揺、だが魔王様なら・・・ 魔王様なら・・・
そんな期待とは裏腹に魔王に残された力は少なかった。
折れた左腕を強引に魔力で動かし、初めて使った力は膨大な魔力を消費した。
おそらくさっき使った力は使える・・・ 万全な状態なら勝てるかもしれない・・・
「ジャン!! クロウを運べ!!」
最後の力を振り絞り、魔力を体に纏わせる。
完成されたゴーレムの一体が走り混んで来る。
魔王は拳に魔力を固め足を殴る。
壊せる・・・ が・・・ 先ほどまでの破壊力は生み出せなかった。
左腕に激痛が走る、この腕は使い物にならない。
我を忘れていたときと違い、動かす度に痛みが走る、魔力の集中が途切れる。
一体のゴーレムを動けなくしたとき次のゴーレムが完成した。
「雷さん、お願い!!」
あんじーの声とともに、動き出そうとしたゴーレムに雷が走る。
ゴーレムに当るや霧散すると思われた雷は消えることなくゴーレムの動きを一瞬止めた。
ただ、一瞬だけ・・・
「まお~さ~ま~ ま~お~さ~ま~」
その時だった、砂塵をあげて走り寄る久しぶりの顔、ヴラド。
首にイケメンとセガールをぶら下げ、自分よりも立派な女性を抱っこし近づいて来る。
抱きつかれた女性はとうと飛び上がり膝をついていた魔王の前に降り立った。
「まお~ちゃん、お久し~、寂しかった?」
最後にお前らの顔が見れてうれしいよ・・・
「来るな、逃げろ・・・」
エリザベートやヴラドが来てもこの状況を打破できるとは思わない。
「はぁ~ 魔女達よ、はぁ~ 水を出してくれ、はぁ~ 頼む!!」
息切れしながら喋るヴラドに呼応し、魔女達はその指示に従い水を呼ぶ魔法を使った。
ヴラドは力を振り絞り大地を殴る。
殴った場所に穴が空き、水が勢いよくたまる。
ヴラドは背にいるイケメンを水に投げ入れた。
派手に水しぶきをあげ、水から飛び出したイケメンは魔王の近くへ飛び降りた。
「魔王様、お会いしとうございました!! 口がいいですか? 腹がいいですか?」
はい?
はしゃぐ人魚は魔王の返答を待たず、自分の手で腹を切る。
吹き出す鮮血を魔王は顔面で受け止めた。
両手で首をつかまれ、鍛えた腹筋を強引に押しつけられた。
口の中が血だらけになる、ゴクッ・・・
光が注がれ二人は回転しながら浮いていく不思議な光景。
「あ~ 魔王様に飲まれてる!! 私、飲まれてる」
なんとも不思議な光景に、時間が止まる。
折れた左腕が一瞬で治る、動く!!
体に活力が沸いてくる。
「魔王様、もっとお飲みください、かじってくれてもいいんですよ?」
体に力が沸いてくるが、精神的に病んでくる、屈辱。
だが、背に腹はかえられなかった。
瞬く間に体が回復していく。
「あ~ なんという幸せ!!」
人魚のイケメンの至福の顔が戦場の緊迫感を忘れさせた。
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