海の宴
海の中を泳ぐ大量の人魚達の群れを前に立ち並ぶ魔王軍の幹部四人。
人魚達の攻撃は続く。
相手の意識を一瞬にして刈り取る甲高い声の砲弾。
男女の人魚が織りなす魅了の歌。
しかし、ここに残る4人は我らが魔王軍屈指の高魔力の者達、人魚の攻撃はガードさえしていれば問題なかった。
太陽が落ちかかり辺りが暗くなって来ていた。
人魚達は歌を止めた。
100人、100匹か? を超える人魚達が各々ちらばって行く。
海に浮かぶ岩の上に光が灯る? 魔力を光に変換し照らしている? 人魚の攻撃魔法なのか?
照らされた光の中、2匹の美しい女性人魚が肌を寄せ合い柔らかい声で歌う。
穏やかで柔らかい声は魔力なしでも、人を魅了するだろう。そして・・・ その姿は・・・
「くっ、イロ仕掛けか!?」
クロウが思わず漏らした声にシガニーが反応して蔑んだ目で見る。
「あっいや・・・」
慌てて何かを言おうとするクロウを差し置き、海に新たな光が生まれた。
最初に話しかけてきたリーダ格の男性人魚(肉体美)が少し若い人魚(華奢)を片腕に抱き歌い出す。
その声は熱く華奢な男性人魚は頬を赤らめ、抱き上げる男性人魚を見つめる。
「ぐはぁ、イロ仕掛けか!!」
一言でみんなの視線を集めたシガニーは皆の視線も気にせず男性人魚の一挙一動を目で追っている。
後方に光が灯り人魚達が一糸乱れぬパフォーマンスを繰り出す。
「さぁ、皆、海にかえろう~~~♪ 一緒におどろう~~~♪」
「私を迎えにきて~~~♪ あなたが~♪ あなたに連れだしてほしい~~~♪」
魔力の波動は感じないが・・・ 横にいたクロウとシガニーが海の方向へふらふらと歩き出す?
俺はクロウの襟首をつかんで後ろに放り投げる。
シガニーは腰にあんじーが抱きつき行かせないようにしていた。
これはいったいなんなんだ? 俺とあんじーはキョトンとしたまま人魚達を見る。
そして、人魚の歌は静かに終演を迎えた・・・
男性人魚が海面に半身をだし吠える。
「なぜお前は反応しない!!」
「はい?」
「おまえがその気なら勝負してやる!! かかってこい!!」
よし茶番は終わりだ、戦おう!! 構えるラッセル。
「さぁ、かかってこい!!」
「・・・・・・・・・」
「どうした、臆病者の魔王め、いつでもいいぞ!!」
「・・・・・・・・・」
「へいっ!! こっちだ!! さぁ、来やがれ!!」
「・・・・・・・・・」
ラッセルは構えを解き、あんじーを呼ぶ。
「なぁ、あんじー・・・」
「うん、わかった」
箒を上に構えてくるくると回し、箒の先を人魚達のいる方向へ。
「大気の中の魔力さん、私の魔力と一緒に光を作って集まって・・・」
あんじーの魔力の高まりを感じる、強き魔女達に天才と呼ばれるこの少女の声で魔力は姿を変えた。
「ほらっさっさとかかってこい!!」
「・・・来て!! 雷!!」
海の上に一筋の黄色い閃光が走る。
「ぎゃひぃぃぃぃぃぃ」
人魚達の阿鼻叫喚の叫びが聞こえる。
「おの・・・れ・・・ 何をした・・・」
あんじーの絶大な一撃を受けた人魚達はしびれたものの海にいるせいかまだ動けるようだった。
「まーお・・・ 手伝ってもらっていい?」
「ん?」
あんじーの横に立ち魔力を高め、巨大な魔力の塊を作る魔王ラッセル。
魔王の魔力の塊にふれ、少女は魔力にささやきかける。
魔力は空に上がり、黒い雲に変化していき、ゴゴゴと音を立てる。
薄暗くなった辺りに黒い雲からこぼれ落ちる光が照らす。
これから起こることを想像出来ないものはいないだろう、だが、その創造されるものの標的たる人魚達はしびれて動きがとれない、恐怖におののく悲鳴が聞こえる。
「ま・・・て・・・ はなし・・・あ・・・」
男性人魚のかすれた声を無視する。
繊細なコントロール、一転を見つめる少女の目が輝く。
機は熟した!!
「いっけぇぇぇぇ、か!!み!!な!!り!!」
たまりにたまったエネルギーは吹き出した。
幾重にも落ちる雷は辺りを明るくし、人魚達の悲痛なる叫び声を轟音でかき消し、碧き海を光へと変え激しい音楽を奏でる、そして、終幕・・・ 劇はフィナーレを迎え、暗闇の帳が静寂を運んできた。
「ぷはぁ♪」
「あんじーすげぇな!!」
「まーおの力すごい♪ すごいよぉ♪」
はしゃぐ二人、口をあんぐりあける後ろの二人、海に浮かぶ白目の人魚達。
少女を抱き上げくるくる回る魔王、興奮冷めやらぬ少女、二人の声が静寂の中響いた。
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