ラッセルとクロウ
門から少し離れた窪んだところでガラガラと音が聞こえる。
クロウが下を見下ろすと自分の友人である青年が汗を流しながら、何度も何度も岩を砕いていた。
クロウは彼を見ながら昔を思い出す。
二人には共通点があった牙族らしくない牙族。
牙族は口に小さな牙を持ち、剛健な体を持ち、戦いを好む性格である。
少年に小さな牙はあった、戦いを好む性格ではあった、だが剛健な体はなかった。
少年が記憶する頃には父はいなかったらしい、母と穏やかに過ごしていた。
力弱き魔族は蹂躙される。
少年は何度も倒される。
力のない自分を呪う。
そんなとき少年は、自分と同じく剛健な体を持たないもう一人の少年の話を聞いた。
二人は出会うべくして出会った。
少年は少年を連れ出した。
あるときの事故がきっかけで、牙族の天才、回復魔法の使い手が生まれた。
その少年は貯まった魔力を使用し発散する方法を覚えたことで、体の調子は楽になった。
そんな頃悲劇は起こった。
少年の唯一の肉親の母は他の魔族に殺された。
彼を守りながら・・・
少年は自分を呪った。
寝る間も惜しんで鍛えた。
力の弱い自分を呪った。
傷つき倒れ、傷つき倒れ、
もう一人の少年は彼が意識を失うたびに、己の力を惜しげもなく使い少年を回復させた。
時は経ち、彼は強くなった。
巨大な体躯は持ち合わせてないが、牙族らしからぬ強い魔力を身につけた。
その魔力は天才と呼ばれた少年よりも強くなった。
「よっクロウ、どうした?」
「ラッセルちゃんはかわらないね」
彼は、初めて出会った頃の顔を僕に向ける。
いまも僕は彼の傍らにいる。
彼はまた僕をどこかに連れ出すのだろう。
そして僕はついていくのだろう。
少年はいつしか魔王と呼ばれるようになった。
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