エリザベートご乱心?
砂煙が上がる中、二人は立っていた。
一人は女性、遠目で見ると女性とわかるものは少ないだろう、がっしりとした体躯、隙間から見える筋肉は以前とは違い小麦色にやけ、さらに筋肉を際立たせる、まさにアマゾネス。
一人は男性、牙族には珍しい細くすらっとした体、隣に立つ女性に比べて一回り小さく感じるその姿、だが知るものは知っている、その服の下にまぎれもなく牙族の証があることを、作り込まれたその筋肉、そしてだれよりも戦いを好む性格が!!
「ラッセル様、私は南に赴きある村を訪れました。そして、出会いました。繊細な彼は、いつも優しくて私に微笑んでくれます。私はいろんな事を話しました。生まれのこと、魔王城での暮らし、魔王様のことも・・・」
エリザベートから放たれる空気が徐々に熱を帯びる。
「ラッセル様が魔王になってから、ここも変わってきました。側にいるもの全員が敵だった・・・ それが、いまじゃ慣れあって・・・ 嫌いじゃないですよ、ここの空気・・・ 部下達はこっちに向かってきているはずです。命令してあります。好きにしろと・・・ 彼は、私のことかわいいって言ってくれたんです。彼から言われる前に魔王様がちゃんと言葉にしてくれてたらこんなことにはならなかったのに!!!」
ラッセル「は!?」
ラッセルがわけがわからず力を抜いたとき、エリザベートの拳はラッセルの右頬に突き刺さった。
勢いよく後ろにぶっ飛ぶラッセルは魔王城の門につきささり、瓦解した門はラッセルを埋もれさせた。
暗闇の中、周りから騒ぎ声が聞こえる。
あ――― 久しぶりにいいのもらっちまった。上半身に力を入れ、覆い被さった岩ごと体を起こす。
「ぎゃっ」
崩れ落ちた岩と一緒に掘り起こそうとしてたのか? クロウも一緒に転げ落ちた。すまん、クロウ
「ラッ・・・ 魔王様、大丈夫ですか? 口元が・・・」
片手で口元触る、したたり落ちる赤い液体がついた。口の中に広がる鉄の味・・・ 久しぶりだ・・・ 内側から来る感情を強引に抑え・・・
「大丈夫だ、おまえらはここにいてくれ。」
そして、ゆっくりと歩き出す。高鳴る感情を抑え・・・ 俺は王なのだ・・・ 俺は魔王なんだ・・・
「エリザベートどういうことだ?」
「彼が魔王になりたいって言ったから・・・」
高鳴る感情は爆発した。王の役目は終わった!! 目の前の者は仲間から敵に変わったのだ!
獣の形相と化したラッセルの右拳がエリザベートの腹を殴る。いままで殴った何よりも堅い!?
その腹を中心にエリザベートがくの字に曲がり声を出す。だがすぐに態勢を立て直しラッセルの顔面を連打した。先ほどと違い魔力があふれるラッセルの体はその攻撃を耐え抜いた。そして、エリザベートの腹にもう一発、離れる二人。
「エリザベート、元魔王より強いな。楽に魔王になれただろうに。」
「あんなおっさん魔王どうでもいいわ、現魔王には興味があるわよ。」
ラッセルが牙族の由縁たる小さな牙を見せて笑う、それに呼応するようにエリザベートに笑みがこぼれた。二人の体から魔力の奔流が立ち上る、そして、再び二匹の獣は重なり合った。
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