魔王様と魔女の村
魔界の太陽が天へと登る頃、魔王は魔女達の村を発見した。
魔女の村の門の前に立つ、すでに数人の人影が見えざわめきが聞こえる。魔王は魔女達に告げる。
「先日は、我が部下達が世話になった。我こそは魔王ラッセル、魔女達よ我が軍門に降るがよし、もし降らぬであれば、ここで塵へとなるがよい!!」
しばらくの喧噪のあと、村をとり囲む柵の向こうに魔女達が立ち並びなにかを呟いている。それは魔女達の唱和が終わり発現した。
「炎よ!!」
その声と共に大勢の魔力の塊が炎へと変換されラッセルに向かってきた。何十人と言う魔女が一斉に放つ魔法は炎の川となり一切の隙間はない、ラッセルは拳に力込め上へ向けてねじり混むように放つ。
炎はラッセルの場を中心に高く巻き上がり散っていった。
「これだと弱い奴らは勝てないな・・・ 魔女達よ、これが答えと言うことでいいな!!」
ラッセルが叫ぶと少しのざわめきの後、ラッセルに向けて新たな魔法が放たれる。複数の火の玉が縦横無尽に襲いかかる・・・ が、魔力で覆われた手ではたき落として前に進む、魔女達は効果が見えないと分かったのか攻撃を切り替えた。
「吹雪よ!!」
「氷よ!!」
魔女達の声と共に急激に周りの温度が冷え、とがった氷が何本もラッセルに放たれた。
ラッセルは氷を叩き落としながら進んだが、あまりの数の多さに何本かその身に受けた。
「魔力でガードしてるからって痛いんだからな。」
つぶやきながらも前に進むラッセル、木で出来た門の前に立つ頃には魔女達の攻撃も少なくなってきていた。倒れてる魔女達は他の魔女に連れられて奥へと下がっていっていた。力を込め門を殴ると木で出来た門は簡単にはじけ飛んだ・・・? はじけ飛んだ破片は真っ赤な・・・巨大な火球に飲み込まれラッセルの方へと、火球はラッセルに当たり少し小さくなったと思った瞬間、轟音を立てはじけ飛んだ!! 後方へ吹き飛ばされたラッセル。
「いててて・・・ なんだ・・・?」
門があったその場所には一人の少女が立っていた。短めのとんがり帽子にピンクのローブをきた女の子。体の大きさにあわない箒を持っている。
「やい、うちの子達に手をだすな!!」
いままでにないダメージをくらったラッセルが起き上がろうとする前に、女の子の新たな詠唱が終わった。ラッセルの周りに地面から6本の氷柱が現れ囲まれたと同時に上空に氷の塊が集まって行くのが見えた。やばい・・・ そう感じた瞬間ラッセルは氷の塊に備える。氷柱を壊しながら巨大なつららは落ちてきた。力を貯め放った拳でつららを粉砕する。つららの勢いはラッセルの拳をしびれさせた。その余波で壊れた氷柱の向こうで女の子はすでに詠唱を終えていた・・・
「集え氷よ!!」
ラッセルに砕かれた宙に舞う氷の屑は、ラッセルにまとわりつき一つの氷像となった。
魔女達から安堵の声が漏れる。
「やったぁ♪ あたち強い」
氷像に近づく女の子。自分の魔法が作った魔王の氷付けにご満悦だった。
が・・・
氷像の変化に後ろに飛び退いた。氷像から水が崩れ落ち、カシャカシャと音がする。大きなかけらが落ちた瞬間、黒い煙のような魔力が漏れ出した。そして、かけ声と共に氷は砕け散った。
「お――― 冷てぇ―――!!」
再び女の子は火球を貯めていた所へ、魔王は一瞬で詰め寄った。にやりと笑う魔王に、女の子は顔を引きつらせながら、短い魔法を唱えた瞬間、その姿は消え、家屋の屋根の上にいた。もう一度同じ魔法を唱えた瞬間ラッセルの頭上に岩が現れる。ラッセルはそれを軽くいなして家屋の上に飛び上がり詰め寄った。
女の子はへたっと座り込み泣きだした。
ラッセルが手を伸ばすと女の子はビクッと震えながら怯えた顔をした。ラッセルは少し困ったように頭をかいて、
「俺の勝ちだな。」
そう言って穏やかな顔で笑った。
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