魔王様はちょっと楽しそう
木々の中、夜を越え、ただひたすらに走る。脇に抱える荷物は悲鳴をあげては意識を失いを繰り返す。その速度は音を置き去りにしていった。速度を緩めることなくただ走るその獣は笑っていた。そして夜を終わりを告げた頃、笑う獣の視界に多数の魔族が映り込む。木々を揺らし葉を巻き上げ笑う獣はその中心に入り込んだ。ざわめく魔族達すぐに身構える・・・ 真っ裸で・・・
「よっ♪」
笑う獣はさも楽しげに魔族達に声をかけた。
「まっ!? 魔王様?」
魔王は片手に持った袋を魔族達のほうに投げる。もう片方の荷物をそっと降ろす。見ると木々の合間を走り抜けたせいか、傷だらけのクロウが意識を失いころがっている。絶対怒られると確信しているが、それでも仕方なくクロウを揺さ振り起こす。
「クロウ・・・ クロウさ~ん・・・」
「はっ・・・ ここどこ? 死んだの? 体中痛い・・・ 血だらけだし・・・ 死ぬの?」
意識がはっきりするまで数分かかった・・・ はっきりしてからは、そりゃ~ もう、凄い剣幕で怒られました。怒りながら自分に回復魔法をかけて傷を治していくクロウに器用だねって言ったらさらに怒られました・・・
魔物達が布を切り、身にまとう傷の深い者はクロウの回復魔法で癒やされていった。魔王はドラクルを引き連れ温泉の側に行った。
ドラクル「魔王様、申し訳ありません。こちらまで来ていただきまして・・・」
「これが温泉か・・・ 変わった臭いだな・・・ あっうん・・・ いいよ、気にしないで、どんな奴らなの?」
ドラクル「奴らは、炎や氷を使います。私だけならなんとか耐えれたんですが、次々と仲間がやられていきました。それでも前に進んだのですが、最後に出てきた奴に私も・・・」
「そうか・・・ ドラクルが・・・ じゃあちょっと行ってくるから、体治しとけな♪」
ドラクル「はっ?」
魔王は走り出した、ドラクル達が出会った敵の元へ
配下と共に戦うのもいいだろう、だが今回は違う、敵はそれなり強そうだドラクルを退ける敵・・・ 部下を守りながら戦うのは面倒だ・・・ いや、違う・・・ 俺の楽しみを奪うな・・・
魔王は再び獣となった人の形をした笑う獣に・・・
読んで頂いてありがとうございます^^