遠き守り 第五話
「さてさて、一件落着と言ったところで」
第二回目の反省会であった。
ウシワカとカグヤの前で、正座する三人。
昨日と同様、神社の本宮を借りての反省会だ。
三人はやはり怯えていた。
「妖怪の頭領を勝手に貴方達だけで浄化してしまった件ですが」
カグヤが厳格な表情で口を開く。
「……」
三人は口をぎゅっと結んで、大人しく叱られるのを待った。
その様子を見つめ、カグヤは暫く黙り、やがて大きくため息をついた。
「無事に帰ってきてくれましたし、よくやってくれました、と言っておきましょう」
渋々といった雰囲気で、カグヤは苦笑した。
カグヤの言葉に、三人の緊張が一気に解けた。
「すみません、本当に、あの時は夢中で…」
壱灯がおずおずと先輩二人に謝る。
「まあまあ、向こうのお孫さんも無事だったのやし、結果的には大成功やろ」
ウシワカがのんびりと言った。
「今後はこのような事が無いようにして欲しいですけどね」
「うっ…」
「とても心配しましたよ。無事で何よりです」
カグヤは優しい微笑を三人に向けた。
「……すみません」
「ごめんなさい」
カグヤの優しさに、申し訳ない気持ちが溢れてきて、左甫も智迅も頭を下げた。
「まーまー、とりあえず、任務は終わったわけやし、三人とも疲れてるやろうし、もう帰りましょうかね」
「そうですね。今回の一年生たちの任務は全体で四日を、予定していたのですが、あとの二日はお休みにしましょう。他の生徒はまだ帰ってこないところもあるでしょうし」
「わーい、お休み!」
開放された途端、智迅が嬉しそうに声を上げた。
「はい、あとの二日で、今回の報告書を仕上げてきてくださいね」
「ほうこくしょ…」
カグヤが釘を指すように言い放ち、智迅のテンションは目に見えて下がっていく。
「手伝ってあげるから」
そんな智迅を見かねて、壱灯が言い添える。
ウシワカとカグヤはその二人のやりとりに肩を竦めた。
その中、左甫だけが深く考えた様子でただ黙っていた。
お線香の香りがする。
目の前には祖父の写真が立てかけてある。
埃の匂いが微かに残る書斎の中で、私は手を合わせていた。
先日起こった、不思議な出来事を思い浮かべながら。
鞄につけていたあの絵馬を取り外し、写真の前に置く。
祖父の顔を見つめ、私は微笑んだ。
「ねえ、おじいちゃん」
私は一つ一つ、大切に言葉を紡ぐ。
祖父にきちんと届くように。
祖父が心配しないように。
ちゃんと、届けようと。
「私ね、祓い屋になる」
これからは私がおじいちゃんにお話をする番。
最後には、それはよかった、で終わる、
優しいお話。