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自分用レビュー  作者: くーくま
85/224

日陰男と高嶺の花の恋愛ジジョウ

恋愛もの。

スキャンダルあり。

好感がもてるがどこか間の抜けたところもある男子とすこしひねてはいるが可愛げのあるお嬢様の恋愛話。

評価は「読んで良くも悪くもない」もの。


大学生になってからやる気をなくした主人公、斎藤一樹とスキャンダルに巻き込まれた遠藤晴香というお嬢様のお話です。

表面展開ではスキャンダルは起きていない事になっています。

裏側はスキャンダルが、話の前提部分にあって、それをもみ消すための展開から話が始まっています。


斎藤一樹は大学での情報には疎いようです。

友人の橋爪要に悪意があったのかなかったのかは分かりにくいですがあったのでしょう。

一樹を罠にはめたいのではなく、晴香のスキャンダルのもみ消しに協力したい、が結果的には一樹を罠にはめる事になる、というものです。


最初の部分で、あるインターンシップで知り合った人物達で集まる話になります。

それは要の用件なのですが、一樹にも来て欲しい、とお願いしています。


その集まりでボウリング場にいくのですが、そこで晴香を狙った集団が襲って来ます。

展開的にはあり得ない展開としか言えないですが娯楽小説なので(そして戦後間もない混乱した時期ならあったかも知れないような展開ですが)それ自体は特に批判しません。

その集団が襲って来た時、他の男子は、怪我を恐れて晴香を守ろうとしないが一樹だけは守ろうとします。

そこで晴香と一樹は交友関係を持つ事になります。


この展開が、それ以前に晴香が襲われてスキャンダルがあったという事を示唆している部分です。

この展開自体はその過去の出来事の焼き直しのようなもので、スキャンダルの上書きです。

「スキャンダルがあって晴香が巻き込まれた」を「スキャンダルがあって晴香が巻き込まれたが一樹が助けて無事だった」にしたいという事です。

他の男性が晴香を助けなかったのも、過去の出来事では彼等は晴香を助ける事ができなかったから、という部分が見えて来そうです。

そうすると、出来事があったのはインターンシップの時、という可能性が高くなりますが、話としては過去にあった、という部分だけで成立するのでいつにあったかは推測しないでおきます。

また、他の男性が助けなかったのは、そのスキャンダルを知っているから、助けてしまったら自身が責任を取る、という展開になりかねないから助けなかった、という解釈ができます。

最近、資料を集め直した時に'罪食い'の話を改めて読んだのですが、つまりはそういう事です。死んだ人間の罪を喰らわせるのは、自分達以外の'旅人'や'浮浪者'の類にして、罪だけもっていってもらう、というやつです。自分達では責任を取りたくないから責任はうやむやにしてこれまで通りにリスクを避けるだけで安定した生活をしたいという考えです。

罪食いの話は、故人の財産の一部である貨幣を'盗んで'貰い、財産が奪われたから故人がいくらの財産を持っていたのか分からない。だから、本来、その故人がしていた'借金'も支払えたはずだったが盗まれたので免責にする、という既成事実が欲しい、という事です。

現状の社会で負債も自動相続である事への反抗といいますか、他者の作った債務を受け取りたいやつなんていないわけです。


その'罪食い'に斎藤一樹が選ばれた、という事です。

ですが、『僕にはどちらが本当の彼女なのか分からない』EP6.5で、


「本当を言うと、なんていうか・・・如何なる時も変わり映えの無いその笑顔は凄いなと思いましたね。まるでお面でも着けているかのようだ」


話の表面で遠藤晴香という人物が裏表のある人物である、という設定の裏に、スキャンダルがあり、遠藤晴香という人物はその実情と表面に二面性のある、裏表の有る人物、という部分が隠されています。

このセリフをどう受け止めるかで解釈が変わるのですが、単なる表面そのままに受け取るなら、スキャンダルを知らないが観察力がある、と解釈でき、スキャンダルを知っているならスキャンダルを知っているぞ、と言っている事になります。

そうすると、なぜ助けたのか、という部分にまた分岐ができ、スキャンダルを知っていても暴漢に襲われているという事実は見過ごせない、と思ったと解釈すべきか、スキャンダルを知っていてもお近付きになりたい、と思ったと解釈すべきかを考える事になります。


ここまでの展開の違和感から話の前提をどう推測するかで作品の内容が変わります。

スキャンダルがないと考えれば、ある男子がお嬢様と出会ってラブラブ展開、というものになっています。

スキャンダルを考えるとスキャンダルのもみ消しのためにドタバタしているだけの作品に見えます。


では裏側の打算として一樹に何のメリットがあるか、ですが、一樹の学業への便宜を周囲がする事と、バイト先の経営不振に助力がある、という部分でしょう。一樹が晴香を受け入れられるなら周囲も全て丸く収まる、という展開です。

晴香の側はスキャンダルをもみ消して、かつそこそこ能力のある男性を伴侶に選べ、一樹とその周囲は生活が安定する、というところでしょう。

作品上の一樹の性格なら考えると、一樹に打算がないように見える(レポートは会うだけの対価)ので、一樹自体はスキャンダルを知らない可能性が高く、観察力が優れているだけで、周囲はそんな一樹を晴香にあてがって利益を得ようとし、晴香側もスキャンダル消しをして交渉が成立している、と全体を解釈するべきなのでしょう。



現時点(20170525)で更新が止まっています。

この手の作品では好まれない展開にもっていこうとしたので人気が落ちたのでしょう。

好感がもてるがどこか間の抜けたところもある男子とすこしひねてはいるが可愛げのあるお嬢様の恋愛話が、実はお嬢様の家はヤクザです、というような展開が見え隠れするようになっているのが、この手の恋愛小説ではタブーな部分だと思います。

また、晴香の父が'熊のような外見'としている事で、スキャンダルを飲み込む一樹、というものを暗示していそうで苦みがあります。


もしこの作品の人気がこれを理由に落ちたのならこの辺り書き換えて欲しいなぁとか考えもしてしまいます。

この部分がなく、話の前提にスキャンダルがない、と解釈して作品全体を見ると、結構娯楽小説としては良いものだと思うのですがそのあたりが残念です。

ただ、現実話として、お嬢様とどこか冴えない男子が出会って恋愛になるなんて話は裏がないとほとんどあり得ない、とも言えます。

だからこそ、そのレアな可能性の話を読みたいのが娯楽小説の一つの需要、とも言えます。

なのでわざわざ裏が必要なのだろうか、と思えてしまいます。


評価は「読んで良くも悪くもない」ものです。


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