転生してヤンデレ攻略対象キャラと主従関係になった結果
悪役令嬢もの。
転落バッドエンドです。
厄介なヤンデレ設定です。
『カウントダウン』だけ個人的に好きです。
悪役令嬢ものです。
ちょっと助けてあげたら、ヤンデレ化して結局は主人公である令嬢を転落させちゃいましたテヘペロってやつです。
あらすじは、悪役令嬢に転生した主人公がバッドエンド回避するために奔走したらその攻略対象の一人である従者とハッピーエンドになった、というものです。
その従者が曲者で、ヤンデレ化した挙げ句、主人公である令嬢を執拗に付け回し、挙げ句に自分と結婚するしかない状況にまで追い込む、というものです。
主人公セシルは記憶を取り戻した後に、その世界が乙女ゲームの世界だと知る。そしてバッドエンドで死亡したくないために奔走するのが話になります。
個人的な見どころは番外編の『カウントダウン』がこういった転落エンドの末路を教えてくれるところです。
その設定をまず取っぱらって見える部分を先に書きます。
父は母を半ば誘拐とも言える形で強引に妻にします。
これが前提です。
次に従者アシュレイは親が殺され心に傷を負ったという設定で登場します。これが刺客です。
父が母を強引に拐って結婚したようなものだから、娘を従者が拐うかのように強引に結婚するので意趣返しもしくは報復しようとしている、という話に見えます。
それでまあ、設定で怪しい部分を取り除くと話は完結してしまいます。
なのでこの話はここまでで、もう少し単純にヤンデレマシーンのアシュレイという存在がいると仮定して話を続けます。
ただし、アシュレイの目的はヤンデレの場合とそうでない場合があって、ヤンデレでない場合は単に逆玉の輿に乗りたい下衆野郎、という事になります。
ヤンデレ設定で話を進めます。まあどちらでもいいのですが。
病的なまでに食らいつくのか、策略として食らいつくのかの違いだけですので。
主人公セシルは記憶を取り戻し、バッドエンド回避を企てます。その為にはまず、従者になったアシュレイの心の傷を癒さなければなりません。
そしてそれを実行し、見事癒してしまいますが、それが逆に自身の没落人生を決めてしまいます。
アシュレイが従者の領分を超えてセシルを求めるようになってしまいます。
それがセシルに危害を加えているという事すらわからない程に、です。
アシュレイがセシルと正当に結婚するためにはアシュレイが一旦セシルの元を離れてでも、どこかで実績を挙げて認められなければなりませんがアシュレイはそれをしません。
その時点でこいつ病んでます。「おまわりさん、こいつです」って感じです。
それはルートがずれるので話を戻します。
さて、主人の想いを勘違いしすぎたアシュレイ。その一端は後日談の「6、従者の追憶」にあります。セシルが何気なく渡した花の花言葉が「あなただけを想う」です。
そういうわけで狂ってしまったアシュレイ。止まりません。
従者なのに主人を独占しようとあれこれ越権どころか主人を公然と害します。
19話『ヒロインは我慢できませんでした』でも「思えば僕はどれほどお嬢様と寝台を共にしたでしょうか。」などと言って、セシルを独占したいがために、セシルの名誉を傷つけますが、アシュレイは全く気にしません。
学園では何が起きているかというと、セシルを助けようとする、もしくはセシルを婚約者にしたいグレイ、そしてスキャンダルなど起こさせるわけにはいかない王族のフリューゲルまで巻き込みます。
周りはセシルを助けようとしますが、アシュレイの気の狂い方の為に手だし出来ません。
周りの行動のほとんどは、セシルに対するアシュレイの行動を、アシュレイに見せる事で、アシュレイが何をしているのかを教えようとしているのですが、アシュレイという狂人はそれに気づかないか、気づきたくありません。あくまで狙いはセシルであって、それが手に入れば全てうまくいく、と思っているアシュレイがいます。
本編内容は、レーラやオズウェルなども含めて、セシルへの加害行為はアシュレイを諌めるためのものです。また、グレイ達はどうにかアシュレイがセシルを諦めるようにしたがっています。常識的にセシルの事を想うなら諦めろ、と言っているつもりなんですがアシュレイは聞きません。
最終的に、セシルの名誉は汚され、事実であろうがなかろうが、その身も汚された事にされて、嫁の貰い手がいなくなります。アシュレイの思惑どおりです。セシルを貶める事で自分以外の候補者を排除した、その行動の劣悪さがアシュレイのアシュレイたる所以であり、それが所詮は平民の成せる業、とも言えるものになります。
自分の能力を高める事や実績を挙げて認められる事ではなく、相手を貶めたりしてあくまで周りの迷惑を考えずに自分の主張や利益のみで行動する、というもので目的を達成しようとします。
そういった行動の間違いを排除するための血統であるので、アシュレイの存在はそもそもが貴族社会には受け入れられません。
金持に憧れる庶民がよくやる自己中パターンです。『成り上がり者』だとか言われるパターンでもあります。
30話でアシュレイと父が密会をします。
ここで何を話されるかが書いていません。最初の方に書いた「意趣返し」かもしれません。
何にせよ、アシュレイとセシルの結婚は認められます。
31話で周囲がアシュレイとの結婚を望んでいない事がわかります。
家臣一同はアシュレイが跡を継ぐ事でセシルの家が潰れるのがわかっているのでどうにか止めようとします。殊更過剰に仕えて「自分達はこんなに仕えているのにあなたはどうなんだ」とセシルに無言のプレッシャーをかけます。そしてセシルもそれがわかっています。
セシルにとっては、小さい頃にアシュレイを助けたのがそもそもの間違いであり、その責任があります。また、貴族令嬢としての責任もあります。アシュレイを排除できず、令嬢としてはもはや傷物として扱われるセシルの元に家の為になる縁談は、もうたとえアシュレイがいなくなってもほぼ来ないでしょう。ならどこかから養子を貰った方がまだ家が存続する可能性があります。
なので
「ね アシュレイ?もうすぐ長期休みも終わってしまうし、その前にどこかへ出掛けない?」
と話を切り出します。
そのやり取りの最後でセシルは
「アシュレイと、二人きりで、誰にも邪魔されないところへ」
と告げます。これの意味は「駆け落ちしましょう」と言う意味です。
この後、着替えをするのですが、セシルは駆け落ちできるように動き易く、町娘に見える格好をします。
ですがその気のないアシュレイはそれを咎めます。そして口上を述べてのらりくらりとかわします。
この時点でアシュレイの思惑は、貴族令嬢としてのセシルであって'セシル本人'ではない事がわかります。
こいつ下衆野郎です。セシルを妻にすれば家もついてきて自分は幸せになれると思ってます。
勿論周囲はそうは思ってません。アシュレイが当主になれば周囲から縁を切られて家は没落するでしょう。
だから、セシルは駆け落ちをしよう、とアシュレイに言っているのですが、アシュレイはそれを拒否しています。
その後に、駆け落ちをアシュレイが受け入れないから、セシルは気が狂った振りをします。
ここでは転生者である、という事をばらします。こんな女と一緒になるのは嫌でしょう?
と伝えるんですが、自分の事しか考えていないアシュレイには届きません。
アシュレイにとってはセシルを妻にして悠々自適な御貴族様ライフが必要なのです。
この話の後に
「だから!信じてくれなくてもいいけれど・・・聞いてほしかったの。物語とは関係なく、私も貴方も他の人たちも、もう決められた運命に逆らった個人で。たとえ運命で結ばれていなくとも、私はアシュレイを愛しているから・・・」
とあります。「もう決められた運命に逆らった個人で」です。貴族社会のルールを破っていますよ、て伝えてます。また「たとえ運命でむすばれていなくとも」です。本来は貴族同士の縁談が必要であり、それが運命でしたよ、って伝えているんですがアシュレイには全く届きません。そしてこの言葉からは周囲に望まれていないから駆け落ちしかないですよ、とも暗に伝えていますが、やはりアシュレイには無視されます。
誰かの後釜狙って成り上がりを狙う精神の者はそれ以外の方法を選ぶ事がないとも言えます。
ここで本編は終わりですが、この時点で転落確定エンドです。家も没落がほぼ確定し、セシルも貴族ではなくなるでしょう。それに気づいていないのは究極お花畑脳のアシュレイのみとなります。
ここまでの話のほんの少し変えた別ルートを書いておきます。
4話『喧嘩をしたので髪をばっさりいきました』ですが、髪をばっさり切る、は以前の私とは違いますよ、という意味です。貴族女性の場合は大抵の意味で、「汚されました」です。交際においても過度なスキンシップがないので、恋愛の末に自分を変えたいから、なんて事で髪を切りませんし、周りもさせません。学園はその部分もわかるようにされている、とも解釈できます。
ここからは後日談と番外編の『カウントダウン』の展開になります。
後日談でも最終的にアシュレイはセシルを手放そうともしません。
ですが、ここの展開は別ルートに至ったが表向きはアシュレイとのエンドに整えた、と見る事ができます。
後日談はアシュレイに執拗に迫る貴族令嬢の登場です。セシルより上の家格の伯爵令嬢です。
そして、セシルに嫉妬させようとアシュレイが画策しようとしてその令嬢と一緒にいる時間を長くする、という展開です。
ここに書かれていない思惑としてはアシュレイがより条件のよい令嬢に鞍替えした、というものが見えてきます。
ここでセシルには大義名分が出来ます。もうアシュレイが何を言おうが断る理由ができたのです。
5話『従者の敗北』の台詞、
『ちょっと調子に乗りすぎたわね、マイ・ディア?」
という台詞の後でシーンが変わります。ここで本来あるべき展開とは違った、と見るべきでしょう。
本来はここでようやくセシルはアシュレイと縁が切れます。元の正しい令嬢と従者の関係に。
なぜなら浮気したのはアシュレイだからです。セシルに非はないです。
ですが、展開はアシュレイとエンドになるように書かれています。
お話上の都合でしょう。結果の違うものを付け足した、とも言えます。
ちなみに「足に口づけする」というのは主人に服従する端女や奴隷なども含めて身分の低い者のやる事です。
これを命令でやらせるという事が主人と従者なのですよ、という明確な意志表示になります。
これを受け入れたからアシュレイは従者としての立場を受け入れた、と解釈してもいいんですが。
最後に『カウントダウン』です。
これは結局アシュレイを排除できなかったルートエンドです。
アシュレイとの結婚が決まり、式を迎える準備をしています。
そしてアシュレイは父に領地の業務を教わります。
この時点でプロポーズが必要な段階は過ぎている、というのがポイントです。
「私って、白が似合わないわね・・・」
という言葉が最初に出てきます。結構式の衣装選びです。
これは純潔ではない、処女じゃない、という言葉につながるのでしょう。
同じような意味でバージンロードを歩く資格がない、というのもあります。
とりあえず、侍女達もそれには同意します。
その後、父が執務をすべてアシュレイに任せて衣装選びに来て、セシルは代わりにその場を後にします。
この部分は、アシュレイに自分のした事をきれいに片付けてみろ、と言っている場面です。
そしてそれが出来ないので父はアシュレイが片付けるまで暇だからドレス選びにきて、代わりにセシルが抜けます。
ドレス選ばなくていいよ、って意味です。
アシュレイが何故悩んでいるかと言えば、簡単な事で、どの貴族もアシュレイとセシルの結婚には賛成していないからです。
式への招待状は辞退されるでしょう。祝いの言葉も届かないでしょう。
また、例えば交易です。同じ利益が得られる交易が二つあったとして、片方にはスキャンダルがついているとします。
どちらを選べば利益になるでしょうか、って事です。スキャンダルに巻き込まれて被害を受けるか切り捨てるか。
ならこの家との取り引きを切って同じ利益の得られる取り引きにしたほうがよい、というのは誰でも分かる話です。
そして、ここにきてアシュレイはようやく自分がしでかした事の大きさを知るのです。
遅すぎますが。
なので、この結婚を認めさせるにはそれらの損失を何らかの方法で埋める事が大前提で、それでプラスマイナスゼロです。
さて、アシュレイにそれだけの才覚はあるでしょうか。単に逆玉の輿に乗りたいが為にセシルにつきまとっただけのアシュレイに。
この後の展開として、アシュレイが書斎から顔を出すとセシルと遭遇します。
まあ、意図的ですね。「今までの事全てなかった事に出来ると思ってんのか、ゴルァ」って感じです。
セシルももう後戻りなんて出来ません。あるとすればどこかの貴族の末っ子くらいを婿入りさせるか平民落ちくらいです。
どれもセシルの家に得がないです。
セシルが良い縁談を得るための機会も名誉もアシュレイが既に全部奪ってしまっているからです。
他にあるとすれば、どこかの貴族の愛人くらいでしょう。
アシュレイはセシルに対して何も言えません。また、セシルをあえて見せつけられる事で後にも引けません。
自分が破滅においやった存在を前に、「俺やっぱ止めるわ」と言う発言が恥知らずな事位はさすがにわかるようです。
場面は変わり、アシュレイがセシルの部屋に訪れます。
アシュレイは自分ではもうどうにもならない事を悟っています。
セシルと結婚した後を描いた想像図は、自分の都合だけで出来上がっていた事がわかったからです。
結婚がゴールではなく、その後の事も考える必要があった事が充分にわかったのです。
結婚はしたいが結婚するとセシルを破滅に追いやる。だけど諦め切れないアシュレイ、という展開です。
で、アシュレイはセシルを抱きしめます。
良い展開なら元気を補給なんですが、この状況だと最後に思いのままに、というのが適切かも知れません。
この後の会話でようやくアシュレイが、自分の行動がセシルの家の問題になるという事が分かったと告げます。
「けど今は、これからは・・・僕の過ちはオールディントン家のものとみなされます」
という言葉に表われています。
ここでの描写に自分自身を蔑ろにしてばかりのアシュレイは、という部分がありますが、皮肉めいた部分と捉えると、周囲を蔑ろにしてきたアシュレイは、と解釈できます。
この後、
「どんなことがあってもね、貴方はお父様にとって家族なの。失敗したって貴方を嫌いになったりしないわ」
とあります。既に諦めた父は確かにアシュレイを責めないでしょう。一緒に落ちてくれます。
「それにね、私の人生はとてもとても明るいの。貴方が元気で、笑って、私の側にいてくれたら、私は何があっても幸せ」
とあります。「明るい」ですが、重さにおいて考えると軽いんです。
アクセントの置き場所の問題で、言語構造によるものなんですが、ラテンの流れを汲む言語は強音弱音以外に、発する位置がアクセントになります。
例えば軽いと明るい、修羅と阿修羅、という関係で、修羅と阿修羅なら、修羅する側と修羅される側。軽いと明るいなら、軽くする側と軽くされる側、となります。
つまりはセシルの人生は軽くなってフワフワと翻弄されるようになるの、って言っています。今までよりずっと。
でも、もうそれは受け入れて、アシュレイが側にいてくれたら幸せだと言っています。
ここはもう正直私には怖いです。セシルの逃げ場を無くしたアシュレイに対して、セシルは、あなたの逃げ場はもうないわ、と告げているように聞こえます。
そしてセシル自身がこの先に待つ運命を知っている事を告げます。
「ちょっと、考えすぎ。この先ずぅっと、何があっても私が貴方をはなしてあげない。だから安心してお仕事をすればいいの。田舎の小さなおうちで、皆で暮らすのだってきっと楽しいもの」
すでにセシルは没落してどこかで平民になるしかない事を理解しています。
セシルの役割は妻としてアシュレイを支える事だ、と言っています。ですがアシュレイにとってはそこでどのように働けばよいのかの見通しすらないです。
だから「お嬢様はお気楽すぎます」や「セシルは考えが足りません」という発言をします。
そして軽く触れるだけのキスをします。
ここが微妙に重要です。最後のキスを予感させてくれます。
熱愛でもなんでもないキスです。
その後に重要な台詞が来ます。
「可哀想なセシル。プロポーズは、もう少しだけ待っていてください」
プロポーズはもう済んだ段階で式を決めている際中というのに、プロポーズが済んでいないという段階まで認識を戻しました、この野郎。
これがどういった理由まではわかりません。
このまま破滅する気なんてないのか、せめてセシルだけでも破滅しないようにするつもりなのか全く分かりません。
ですが、家自体の没落を止める事ができないならセシルの破滅は免れません。
なのでセシルはすでにアシュレイ以外を選ぶ選択肢がないです。
この後の会話は裏無しで読めます。ただし、いつプロポーズが来るかはわかりません。また、カウントダウンもいつ終わるかもわかりません。
それらを前面に押し出している描写です。
結婚式にはどれくらいの人が来るだろう(意味を逆転させずとも、ほぼ誰も来ないという事がわかる)
ドレスももっと色々見て悩もう(そもそも式が来ない可能性がほぼ確実になった。それだけの時間がある)
お料理の話し合いもしないと(人来なかったら捨てる事になるから量を考えようね)
という描写です。
最後の文章、「式までのカウントダウンは今日も進んでいく。」
怖いですね。もう。いつまでも終わらない予感がたっぷりです。
総じて評価は、「良くも悪くもある」ものです。
『カウントダウン』が結構好きです。
虹色御都合展開でさもハッピーエンドに済ませていない(そう見えるようには書いていますが)ところが好きです。
セシル可哀想で合掌、ですね。
余計な一文にはなりますが『ヤンデレ系乙女ゲーの世界に転生してしまったようです』のヴォルフを見習え的な気分です。




