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第1話 脅迫状

『彼』は朝の情報番組をじっと見ていた。画面上では朝の顔とも言える人物が軽快にトークを弾ませる。

 しかし、『彼』はそんなものには興味がなく、見ていたのは画面左上に見える時計だった。朝はいつもこれを見て、家を出る時間を決める。それが『彼』の日課だ。

 7時42分――『彼』は右手に持っていた黄色いマグカップをテーブルにおいて、席をたった。

 『彼』はアイロンのかかったブレザーを着ながら、テレビに映っている時計を確認した。

7時50分―――いい時間だ、と『彼』はつぶやき、テレビの電源を消した。

 『彼』はテレビを消したあと、パソコンの電源を静かに入れた。パソコンの起動音が部屋に広がっていくのを感じた。

 数秒後、パソコンが立ち上がった。ディスプレイには数個のアイコンと草原の画面が広がっていた。

『彼』はマウスをすばやく操作して、画面に出ている何かをクリックした。

「これでよし。」

『彼』はパソコンを急いで消した。

 『彼』は通学用のかばんを手にもって、ゆっくりと家を出て行った。


「あー眠い…」

古谷は愛宕署捜査一課係長代理の席で眠りにつこうとしていた。

「おい、おきろ」

増田係長代理の拳が古谷の頭を直撃した。

「いたっ!なんだよ…増田。ちょっとぐらい寝たっていいだろ。ほら俺たち同期なんだし…」

「駄目だ。お前としてはいいかもしれないが、俺はこの席で昨日の強盗殺人事件の報告書を作らねばならない。わかったらさっさとそこをどけ。」

「へいへい…」

古谷は頭をかきながら席をたった。

 そのとき、鬼課長と署内で恐れられている西原課長の声が響いた。

「おい、なんだよ。このニュース…」

古谷と増田が休憩室のソファにかけていた西原のそばに駆け寄った。

「見てみろ…これ…」

西原は楊枝をくわえているのを忘れ、口をあけてしゃべった。

 古谷と増田はそのニュースを食い入るように見た。

 ニュースキャスターがしゃべり始めた。

「繰り返します。この文書は今日、わがテレビ局にメールで送られてきたものの写しです。ご覧ください」

 そこにはこう書いてあった。

 脅迫状

まずはじめに、この脅迫状はこのテレビ局を脅迫しているわけではない。国民すべてを脅迫している。

 宣言しよう。私は二週間後、この日本で一番悪な者を抹殺する。

といっても犯罪者を殺すわけではない。殺す人は二週間後に決める。

死ぬのが嫌な奴は、今から言うことを二週間行いつづけろ。

1、神を崇拝しろ。毎朝7時におきて手を三回鳴らして五秒間拝め。

2、人が喜ぶことを行え。

以下のことをちゃんとしている者は命が助かるだろう。だが国民全員がこれをすると、誰も殺せなくなる。そこで、ポイント制にする。

2、は人が喜ぶことをしろといっているがこれをポイント制にする。つまり人が多く喜ぶ事をするほどポイントが高くなるのだ。そこを理解してこの二週間を生きて欲しい。

注意

私は国民全員を見ている。以下のことを怠った場合は次の日死ぬと思っておけ。


それでは国民の皆さん。がんばってくれ。管理人より

と書いてあった。

「ただのイタズラだろう」

増田はくだらん、とつけたし休憩室を後にした。

「イタズラなのかね…」

いつも強気な西原も少し弱気になった声を出した。

「さてと、仕事仕事…」

西原は脇に週刊誌をはさみ、休憩室を出て行った。

 休憩室は古谷ひとりになった。古谷はまだそのニュースを見ていた。

「何かが、起きそうだな…」

古谷はそうつぶやき、休憩室を後にした。

「おい、こないだの放火の事件の犯人は家に帰ってきたのか!」

先ほどのショックから一瞬で立ち直った鬼課長の大声が響く。

「まだです」

古谷は自分の席に向かいながらこたえた。

「だったらさっさと張り込み行ってこい!小島が待ってるぞ」

「はい…」

古谷はいすにかけていたコートを手にもち、捜査一課を後にした。



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