ビスルトからの招待そして、俺の苦悩
「ごめんなさい」
鼻血をだして貧血を起こし倒れた俺はベッドで目覚めて3人に謝った。
「何で謝ってんの?」
「いや、俺から探索に行こうっていったのに出発の時に倒れるなんてさ」
「大丈夫!その分エルムで楽しませてもらったから!」
「え?」
「ねー!」
「「ねー!」」
「まって!君たち、俺が倒れて寝てるときに何やってんの!!?」
「なーいしょ!」
「マジで!マジでぇ!!何やったんだよぉーー!!」
「「「アハハハハ!」」」
その後結局自分の体をくまなく調べてみたが特に何かをされた様子はないようだ。
でも痕跡が残らないのとかいっぱいあるからな……
諦めよう。
「「「うひひひひひ」」」
「ひぃ!!」
やだ!とっても怖い!
俺は手を体にガードするように回す
「今度はあんなことやそんなことまでやってやろうかしら~」
「そうだ!こないだ考えていた“あれ”やろうよ!」
ニルが提案した“あれ”というものにちょっと嫌な予感がする。
「いいね!やっちゃうか!!」
「ねえ、“あれ”ってなによ?」
「教えてあげよう!ちょっとこっちに……」
突然会議を始める3人
そして今のうちにこっそり逃げようとする俺。
が、
ガシ!
「エールームーくーん」
「ひぃ!!」
「私が逃がすわけないじゃない」
「ですよね……」
猫が首をつままれるとおとなしくなるように俺はラルに襟を握られそのまま片手で持ち上げられ逃げられるわけないので諦めて“あれ”というものを受け入れる心の準備をした。
しかし突然襟から両手首をがっしりと捕まれる
「へ?なに?」
「やれ!ニル!アリス!」
「「ラジャー!」」
「ちょっと待て!!なんでそんなものもってんだよ!!ニル!!」
「大丈夫だよ!ちゃんとやってあげるから!」
「アリス!なんで君までノリノリになってんだよぉ!!」
「いやぁ!だって楽しいんだもん!」
その顔はとってもかわいい!だけど!だけれども!
内容的にドン引きだわ!
「諦めなさい!君は受け入れるしかないの!」
「いやだぁ!!絶対にいやだぁぁぁぁ!!」
「大丈夫!」
「助けてくれのか!ニル!」
「うん!……ラルを!」
「うわぁぁぁぁ!!!」
「楽しみだなぁ!」
「やめてよ!やめてよアリス!!」
俺はそんなアリスを好きになったんじゃない!!
っていうか!一週間前にはもっと落ち着いたな少女だと思ってたのに!!
「かかれぇ!!」
「「イエーーーイ!!」」
「いやあああぁぁぁぁ!!!!!」
「エルム!」
「エルム君!いや!」
「エルムちゃん!」
「「「可愛いよ!!」」」
さっきまでこの部屋には男子1人美少女3人がいた、が!
他人から見たこの部屋には男子は消え美少女が4人になっていた。
そう、ニルが提案した“あれ”とはエルムに自分達の服を着させてみようっていうことだったのだが、予想以上に似合ってしまったらしい。
「うう、もうお婿に行けない!」
「ほんとに!ほんとにチョーにあってる!」
んなこと言われていうれくねえわ!
違うか、今の格好で言われたくねぇ!
何が悲しくて好きなに人に女装をされられなきゃないけないんだよ……
あと、スカートってこんなにスースーするんだな。
女の子ってスゲーな……
「うんうんうん!ちょっと貧乳気味のモデルさんみたい!」
「それそういうモデルさんに聞かれたらヤバイことになるぞ」
「でも、エルムちゃんとっても可愛いよ!!」
「やっぱりあたしの見立てた服が最高にエルムちゃんを引き立てているわね!」
「やめて、ラル……もういっそ殺してくれ……っていうか死にたい」
「大丈夫!死んだとしらエルムをエルムちゃんにしてから私も一緒に死んであげる!」
「後半は死んでほしくないけど嬉しい!でも!死んでからも女装をされられるとか絶対にいやだ!なんで死んでまで女装趣味の変態のレッテルを貼られなきゃなんないんだよぉ!!」
「いいじゃない!あたしたちよりかわいく見えると思うよ?」
「マジで全然嬉しくない。っていうかもう着替えていい?」
「ん?外で倒れたエルムを運んでくるの疲れたんだよ?」
「うぇ?」
「そんな頑張ったラルは今日一日それでいることをお願いしたいなぁ?」
「マジで?ラル様、マジですか?」
「ダメ?」
「うん、他の条件ない?」
「ない!うーん、じゃあ、アリス!ちょっときて……アリス?」
「………………はっ!ごめん、エルムちゃんに見惚れてた」
「まあ、可愛いものね!」
「うん!」
「そうだ!アリス!ちょっと、ーーーーーー」
「え!ーーーーーーってーーーーーならーーー?」
「ーーーーーーーーーー!よろしく!」
「わかったわ!」
なにかの打ち合わせみたいなのが終わるとアリスが俺のほうに満面の笑みで近づいてくる。
またもや嫌な予感がする。
しかも逃げられない系の!
「ねえねえ!エルムちゃん!」
「ちゃん付けもいやだけど」
「私からもお願い……今日一日それでいて?」
ぬああぁぁぁぁ!!
その上目使いはずるい!ずるすぎるよ!
しかも、アリスからのお願いとか俺が拒否できるわけないじゃん……
「…………わかりましたよ!これでいればいいんだろ!!」
「やった!」
「明日は他のも着せてみようね! 」
「明日もやんの!!?」
「お願いエルム!」
ラルは、断れるからな!
しかし、またもや逃げられないような気がする
だが、奇跡を願い拒否る。
「絶対にいやだ!!」
「おねがい!」
なんで、頼むときはアリスになるんだよ……
無理じゃねえか……
「なるようになりやがれ……」
「ありがと!アリスちゃん!」
「私も楽しいから!」
「ふっふっふ!あたしたちからは逃げられないわよエルム!」
なにこいつらラスボス?
「ていうか、もう大丈夫だから(精神的にも)今度こそ周辺の探索をしない?」
「ダーーーメ!」
「え~ラル、なんで~?」
「その格好を周りに見せたくないもん!」
「独占欲か……」
「あとエルム君鼻血が結構でて倒れたんだから血があんまり足りてないと思うよ?」
「それなら……いや、でも、アリスがいるしな」
「え?私要らない子だったの?」
「いやいやいや!!違う!っていうかなわけがない!」
「よかったぁ!じゃあなんで私がいると駄目なの?」
「あんまり他人に見せちゃいけないんだよ。ビスルトみたいなのがいっぱい来るから」
「ああ、あれか!」
「あれはすごいよねぇ!」
「ラルとニルは知ってるじゃない」
「まあそうなんだけどさ」
「私には教えてくれないの?」
「っ!わかったよ……」
自分の手を胸に当てる。
「部分治癒、ブレッド!」
すこし、ぼんやりと手が光る
すると体の中に少し減っていた血が戻るような感覚
「え?……なにそれ」
「治癒魔術だよ?」
「え?」
「回復魔術も使えるけどね」
「は?」
「いつみてもすごいわね~」
「初めてあったときも使ってたよね」
「だって、結構ボッコボコにされたんだもん」
「でも、顔中にアザだらけだったけど、あのときのエルム可愛かったもんね!」
ぼこぼこにされた俺を見てかわいいっていってるのもおかしいと思うけどな
その時のことを思い出したかのように抱きついて俺の頬にラルの頬を擦り付けてくる
「結構勇気を出したんだんだけど……」
カッコイイっていう感想にはならないよね……
そんな意味のないことを思った。
「僕は可愛かったのもあったけどちょっとかっこよかったよ!」
「ありがとう!ニル!!」
思ってたことを見事に当ててくれたニルに結構嬉しかったので今度は“僕”からニルに抱きつく。
ラルは離れなかったが。
「えへへへへへ~~」
「ニル~~」
なんだか今はとってもニルがいとおしく感じる
おねーちゃんみたいだ……
「やっぱりスイッチが入ったエルム君は甘えんぼさんだなぁ」
「ちょ!エルム!それをやるんなら私に!」
「やだ~ニルがいい~」
「くっそぉ!なぜ私じゃないんだぁ!」
ラルの悔しそうな声を無視しニルの胸元に顔を擦り寄せる。
「…………ハッ!!ちょまって!!治癒魔術って何よ!?あと回復魔術ってのも!」
「………………!!」
ニルに抱きついた状態で固まる“俺”
「あああああああ!」
そして、一気に今までのことを振り替えって羞恥に悶える
「あーもう!アリス!なんでエルム君を戻しちゃうの!!」
「ああ!ごめん!」
俺はこの場所から一刻も早く立ち去りたくなりついドアの方に顔が向く。
しかし、なぜか閉まっていたはずのドアはすこし、開いている。
そしてそこからよだれを垂らした女性が立っていた。
「ヒィ!!」
「どうしたの!エルム!」
「ラ、ラル!あそこに!誰かいる!!」
「なんですって!誰だ!(この格好の)エルムは私達だけが見ていいんだよ!!」
どうせこんなかんじだろうが!
誰にも見られたくねぇわ!
「いやぁ~お話をしに来てみれば、楽しそうなことをやってるじゃないかぁ~!」
「ビスルト、だっけ?」
「そうだよぉ~」
「なんであんたがここにいるんだ?」
「その3人から聞いてないのぉ?」
「まあ、あんたが俺をここにラチった張本人なのは」
「そういうことぉ!」
「で?そのエルムをラチった張本人がなんでわざわざこんなところに?」
「もしかして、僕たちにボコされに?」
そりゃあねぇだろ
最初に話にきたっていってるし
「そんなわけないじゃないかぁ~」
「じゃあなんのようよ?」
「ちょっときてほしいところがあってさぁ~」
「え~!ちょっと今いいところなんだけど!」
「ふ、ふ、ふ、今からいくところには君たちが求めるものがたくさんあるよぉ?」
「求めるもの?」
「よ、う、ふ、く、だよぉ!」
え?服かよ、そんなに服がなかったの?
「きたぁあああぁぁぁ!!」
まじか、ラルそんなに服を持ってなかったのか。
今度買ってやろうかな。
「これで!たっくさん!」
ニルも?
「エルム君をエルムちゃんにできるね!!」
アリスたち!!
それが目的かぁ!!
「いやだあああぁぁぁぁぁ!!」
「じゃあ、そこの男の娘は3人がつれていってねぇ?」
「オッケー!」
元気よく返事をしたラルは、ニル、アリスと共に俺ににじりよってくる
「やめて!やめてよ!ねえ!ねえってばぁ!!!」
必死に抵抗しようとする、が、次の瞬間には両手足を抑えられていた。
そして、両手、両足と順に縛られていく。
「おおぉ!!好きな男の子が男の娘になっていてそれで縛られているってのはすごい!チョー!興奮する!!」
「やめて!そんな血走った目で俺を見ないでくれ!ラル!」
「うひひ、ここか!ここがいいんか!」
「ハハ!ハハハハ!ちょ!ラル!縛られてる人にそれはひどい!」
「おお、ラルがいたいけな少女にイタズラしてる変態みたいだ」
「絵面的にはどっちも美少女にしか見えないんだけどね、百合みたい」
「僕たちも参加するかい?」
「もちろん!」
「じゃあ、私も参加しようかねぇ!」
「エルムを”か、わ、い、が、る“のに敵はいないからね!誰でも大歓迎よ!」
「ラル、一人、でもきつ、いのに追加で3人とか無理だからぁ!!」
「じゃあ、君にも3つ、選択肢をあげようじゃないかぁ」
「ちょ!ビスルト!なに勝手にきめてんのよ!」
「まあまあ、たぶん君らが前から気にしてたことだと思うよぉ?」
「ほう、話を聞こうじゃないか」
おう、一気に真剣な表情に変わったな。ラルよ
「だったら俺の話も聞いてく!もごごぉ!!」
「はいはーい、エルム君は黙っててねー」
ニルに口を手で抑えられる。
「もごぉ!」
「で?その選択肢とはなんなの?」
「選択肢、1!この中の誰かをエルム自ら選びその人と結婚する」
「なるほど、だから気にしてたこと、ってことなのね」
「エルム君がこの中で一番を決めてくれるってわけね」
「もちろん僕を選んでくれるよね!!」
「まあまあ落ち着いてぇ、まだ選択肢の1つ目だよぉ?」
「そっか、じゃあ、2つ目は?」
「この国ってねぇ、例外で一夫多妻制度があるんだぁ」
「なるほど、僕らみんなでエルムを平等にわけられるってことだね」
「そゆことぉ」
「それもありだね!」
「んで?3つ目はなんなのよ?」
「これは、救済処置だよぉ?」
「もごぉ!!」
「城にいって王と謁見してもらうんだぁ、ついでにちゃんとエルム様のぉ女物の服もたくさんあるからねぇ」
「じゃあ、まずはどれかを選んで!エルム!」
するとニルの手が口から離れる。
「ぷはぁ!はあはあ」
「はやく!エルム君選んで!」
「私は1か2がおすすめね!」
なんでアリスまで乗り気になってるんだよ……
「……どれも選びたくないんだけど」
「なによ!そんなにあたしとはいたくないっての!?」
「そんなわけあるわけない!みんなと一緒にいたいよ!」
「じゃあ、2を選べばいいじゃない」
「いやぁ、そうなんだけど、この国が一夫多妻制なんでしょ?」
「そうだよぉ?」
「けど、この国がってことは俺たちの国だと」
「大丈夫だよぉー全員の両親から許可はもうもらってるしぃ、君たちの国でも、大丈夫なように交渉もしてあるからぁ」
「マジか」
「っていうかママたち許可だしちゃったんだ」
「まあ、あたしたちは許可すると思ってたよ」
「出してくれないと!エルム君と結婚できないもんね!」
「じゃあ俺は今は3かな」
「「「えーーー!!」」」
自分勝手に自らの好意をぶつけ続ける三人に少しずつ冷静じゃなくなっていく俺
「今できるとしてももう少し時間がほしいってことだよ?」
「結局2になるんなら今選んでもいいじゃん!」
「それとも1にして私を選んでもいいんだよ?エルム!」
「俺に一人を選ぶなんて無理だし
俺はアリスが好きだ!って言った……
だけども!なさけない俺を毎回助けてくれるラルもニルもおんなじぐらい好きなんだよ!!
そして、みんなを選ぶってことも今はまだ俺がしたくない!!
だって!俺はみんなに頼ってもらえることが全然ないんだから!!せめて、なさけない俺がみんなから絶対に頼ってもらえることがないと嫌なんだよ!!」
「「「ッ!!!!」」」
そして俺は止まらない。
「俺はラルやニルに助けられてばっかだ、そして、さらにアリスも加わったら俺なんかただの木偶の坊じゃん!
二人は剣術は最強クラス、一人は魔術は最強クラス、家事全般できる、三人集まればほとんどのことがなんでもできる。
でも、俺は、剣術も魔術も頑張ったのにダメダメ、家事も少ししかできない、できることと言えばみんなの傷や病気などを治すことぐらい。
三人はそれでいいっていってくれると思う。でも、そんなのは!俺が頑張って覚えたものでもない!ただの遺伝なんだよ、だから、俺は!俺自身は穴居なにもしてないようなもんなんだよぉぉぉ!!」
俺の中の全ての劣等感を言葉として吐き出すかのように心から叫んだ。
それは、誰にも気づかれていない俺の気持ち
だけど、それでも俺はすこしでも誰かに気づいてほしかったのだ。
そして──
──はじめて俺は今泣いていることに気がついた。
「.......ごめんね、エルム」
「僕たちなんにも気づいてなかった。ただ、自分を選んでほしいとかしか考えてなかったんだ。そんなに、悩んでるなんて........」
「.....だから、だから私を好きになったんだね」
「「え!?」」
「そうだよ、アリスは入学してから一ヶ月くらいは魔術が苦手な振りしてたでしょ?」
「ええ、魔術大会のせいで有名になってたから」
「入学初日に大概なんでもできる+剣術最強の二人に知り合った俺は毎回毎回助けてくれる二人に徐々に劣等感が積み上がっていっていた俺にはおんなじ境遇の人と仲良くなりたいそんなことがアリスを好きなったきっかけ.......かな」
「なら、ならどうして」
「ふりをやめたあとでも好きでいられたのか?だろ」
「......うん」
「人間、好きを1個のことぐらいで嫌いになれるわけないじゃん」
「そっか、ありがと、ありがとね、エルム君、私も前から好きだったよ」
「ッ!! なんで、じゃあなんであのとき......」
「好きってことをずっと否定し続けていたから、応えられなかったの」
「なんだ、なんだよぉ」
ただの遠回りだったのか
なんだか、色々安心した俺はフッと意識が無くなった。