消える者、あとを追う者たち
「ハァハァ……結構走ったなぁ」
なぜか追っかけて来ないのをいいのに体力の続く限り走り抜いた。
二人にさんざん追っかけられてきたから体力には自信があるので結構走ったはず
「珍しいな……あいつらがこんなに遅いなんて」
いつもなら逃げようとした一歩目で捕まる。
今回は逃げてから何歩走ったかわからないぐらい走ったぞ?
「まあいいや、油断した瞬間に捕まるとかあるからな」
ちょっと怖いから一応周りを見渡す。
いつのまにか鬱蒼とした暗い森に入ってしまったようだ。
逆にここはあいつらにもばれずにすむかもしれない!
「よし、ここで木の上にでも登って──誰だ!!」
俺の中のなにかが危険のサインを出していた。
というわけでは全くなく単に枯れ葉を踏みしめてくる足音が聞こえたからだ。
しかし、なぜこんなに過剰に反応したか。
だってあの二人なら足音なんかたたないし。
無音で真後ろにたってビックリさせてくるから絶対に二人じゃないと俺は確信していた。
「お久しぶりですねぇ~エルム様?」
「見たことある顔だな?」
「私とはもう十回くらい会ってるんですがぁ~」
「そうだったか?」
あったことあるらしいが、俺は覚えていないため一応いつでも抜刀できるようにしとく
ていうかマジで誰だっけ?この女の人
「私の名前はビスルト、あなたをスカウトに来ましたぁ」
「……スカウト?」
「何でおんなじ人に十回もおんなじことを言わないといけないのかわからないですが、あなたしか使えないあのスキルをわたしたちにつかってくれませんかねぇ?」
なっ!俺にそんな力が!!?
何て冗談を言ってる場合じゃなさそうだね。
一応そんな力はある
しかし、そんな力を使っても最弱は最弱だ。
それは変わらない。
「なんでしってんだっ……何てのは約十回目らしいならもういいか」
「ええ、私も聞き飽きましたぁ」
「じゃあ、めんどくさいんで行かないってことで……」
「最初っから今回までおんなじ断り方ですねぇ」
マジか、すげぇな俺
だってどこのだれって知らないもん。
「けど、ちょっと今回は、はい、そうですかとは言えないんですよぉ」
「えぇーはい、そうですかっていってくださいよー」
「いやー、このまま帰ると怒られちゃうんですよぉ」
「いや、俺には関係ないですよね?」
「あなたが、はい、っていってくれればいいんですがぁ」
「いいえ」
「うーん、じゃあ仕方ないですねぇ」
「そうそう、仕方ない、仕方ない」
「実力行使とういことでぇー」
「ちょ!俺、めっちゃ弱いんですけど!!?」
「だからこそちょうどいいですねぇ」
というと、ビスルトは、指をパチン、と鳴らす。
すると突然後ろから口に布を当てられる。
逃げ出そうとするが意識がもうろうとしだす。
「う、ううぅ」
そして、そのまま俺の意識はなくなった──
「あぁ!あの魔術が私のものにぃ!」
逃げ出したエルムを追っかけているニルは探知魔術、探査を使い探しながら全速力で走っていた。
探知魔術は錬度によって遠距離までわかるようになり、さらに対象がどこをどうやってどのように行ったかが手元の地図型魔方陣に写し出される。
「結構エルムにしては結構逃げたんだね~」
ニルは魔方陣を見ながらエルムが写っている方向へ急ぐ。
しかし、突然エルムの反応が消える。
「え!?エルムが消えた!?」
急ブレーキをかけ魔術に異常がないか確認する。
が、なにも不備はない。
「エルムがこんな隠蔽魔術を使えるわけがないから、まさか!エルムになにかあった!?」
思い浮かんだ嫌な予想によってひ冷や汗が背中ににじむ。
一応先にラルに連絡をしておかないと
「探知鳥!」
探知鳥はサーチャーではわからないぐらいの距離を確認するという魔術だが、多少の言葉なら伝えられるので伝達に適した魔術だ。
「ラルにエルムに何かあったかもって伝えて!!」
ヒュルルルルル!!
空高く飛び上がりそのまま一直線でラルのもとへむかった。
「よし、エルムが最後にいた場所までいってみよう」
そしてまた全力で走る。
もはや、走っているではなく飛んでいるの方が近いぐらいだ。
周りの景色も激流のように流れていく。
そして、ついにエルムがいたであろう場所に着く
どうやらここは光も入りにくい森のようだ。
「ここなら分かりにくいかもだけど、何で居場所を特定できるかはエルム知らないからね、いくら逃げても変わらないんだけど……ほんとにどこに行ったんだろう。」
周りにいないかを確認しないといけないので近くをうろうろする。
すると一人の女性が近くにたっていた。
「すいません!この辺に170センチぐらいの生徒を見なかったですかーー!?」
と、言いながら走り寄る。
しかし、何かが近寄るなと告げていた。
冷静になって状況を確認してみる。
この辺までエルムは逃げてきた
そして何かがあって、エルムは消えた。
最後にいた場所にはこの女性が立っている。
うん、この人怪しいな。
「ねぇ、エルムって生徒知ってますよね?」
「うんー知ってるよぉ?」
「じゃあ、ここでエルムに会いました?」
「ええーさっきスカウトしに来たんですけどぉー隠蔽魔術を使ってどっか行っちゃいましたぁー」
「……嘘ですね。エルムは隠蔽魔術を使えませんから」
「おっとぉそうだったんですかぁーやってしまいましたぁー」
「エルムをどこにやった!!」
さっきまでの確認の話し方が一変して殺気を剥き出しにして威嚇しながら叫ぶ。
「いやー我が国に、しょ、う、た、い、してあげただけですよぉー」
「お前はマルドルの者か?」
「いえいえー私はトライガルの方ですねぇー」
「で?エルムをどうするつもりだ!?」
「いやぁーエルム様が持っている特殊魔術がほしいだけなんでぇー私の国で子作りをしてもらおうとぉー」
「な!!」
「おっとぉーあなたはエルム様にきがあるようですなぁー」
「そんなことは今は関係ない!」
「いえいえーあなたもエルム様が好きなようならぁーあなたも一緒にどうですかぁー?」
「ほんと!!?いやいやいや!!なに言ってるんだ僕は!!いや、でも!!」
「来るんなら今決めてくださいねぇー」
「うぐぐぐぐぐ!」
「行きましょう!ニル!!」
「え!?ラル!?」
突然行こうと言うラルにいつの間にいたのかをビックリするニル、
「私もいるよー」
「泥棒ネコも!」
要らないものもいる。
「私の名前それで定着!?」
「……そこのあんた!だいたいの話は聞かせてもらったわ!」
「ごめんねぇーさすがにこんなに知られたらさっきの話は無しでぇー」
「えぇーー!!」
「せめて!せめてエルムだけは返してぇー!」
「いやいやいやぁーそしたら私来た意味ないしぃー」
「じゃあ!私と!」
「僕を!!」
「うーん仕方ありませんねぇー」
「よっしゃ!」
「やった!」
「じゃあ!泥棒ネコさん!ここでお別れね!」
「もう会うことはないかもしれませんが!」
「え?ちょ!」
「じゃあいきましょうかぁー」
「「はい!」」
元気よく返事をする双子
さすが、息ぴったしのようだ。
「ーーー!!私もいくわよ!!」
「えーまだ増えるんですかぁー」
「来るな来るな!泥棒ネコ!」
「僕たちだけでいいです!」
「いいの!私がいないとエルムがショックを受けちゃうでしょ!」
「むう!それもそうね」
「えっと、まあいいやぁ、何となく予想していましたからぁ」
そういいながらビスルトはさらに森の奥に入っていく。
だれにもばれないように探知鳥を出し担任に少し旅に出ると伝えて得ておいてもらうことにする。
「あ、忘れてたぁ、皆さん、来るんであればぁこのアイマスクをつけてくださいー」
「「「わかりました!」」」
渡されるよくわからない材質のアイマスクをつける。
が、ラルがつけたやつは全然透けて見えていた。
しかし、そのままニルとアリスを見ると何にも見えないようで足取りがおぼつかなかった。
見えるけどビスルトは私の手を取り引っ張っていく。
続いてニルとアリスも手を引かれる。
あれ?一本手多くね?
と思ったがニルはアリスの手を引くように繋いでいた。
そしてそのまま少し引っ張られていくと青い複雑な魔方陣が地面に描かれていた。
そこまで引っ張られていくとその魔方陣に乗った瞬間に周りの景色が一変した。
どーも着実に投稿が遅くなっているクロ課長です
もう不定期投稿にすることにしますぅ
ビスルトの口調になってしまいそうですが
今話は前回が内容的に短くなってしまったので頑張りました!