瑞穂の温度
次の日、大学にて……。
「う~ん、頭が痛い……」
「私も……」
想像通りに二人は酷い二日酔いだった。
二人して自主休校にしてカフェテリアに向かうことにした。和美は紅茶、瑞穂はコーヒーを買って席に着いた。
「昨夜のことは覚えてないだろう? 瑞穂すごいことを言い出した……」と和美が口にした途端
「期間限定彼氏のことでしょ? あれはきちんと考えて提案したんだもの、カズミちゃんこそ忘れているのかと思ってた」瑞穂はいつになく真剣な眼差しで和美を見据えながら言った。
本当は笑い話にしようと思っていた和美は動揺を隠しきれない。
「え? あの話って本気だったの?」
「ちょっと大きな声を出さないでよ、頭にガンガン響くの。それに私は本気よ。だって私、幸せになりたいもの。今の私にはカズミちゃんが頼みの綱なの」和美の両手を握りしめた瑞穂の表情は冗談で終わらせることのできない程に真剣そのものだった。
「頼みの綱ねぇ……。でも僕は普通の恋愛しかしてこなかったし、元カノの何人かはまだ良い友達だ。瑞穂のしてきた恋愛とは正反対だろう?」少し冷めた紅茶を飲みながら和美も真剣に答える。
「でも……」瑞穂は続きの言葉を探しているようだった。
「でも?」和美は優しく聞き返す。
「でも、つきあってみなければわからないじゃない? 私は真剣に提案したんだよ。それなのに昨夜のカズミちゃんは冗談半分に返事をしたの?」瑞穂は半分涙声で和美に問う。
ふと、和美の胸に昨夜感じた瑞穂の涙の温度がよみがえる。
「ごめん……。僕の態度は大人気なかった。瑞穂の悩みが解決するまではつきあうよ」今度こそ本当に覚悟を決めた和美だった。