期間限定彼氏?
「もぉー! カズミちゃん聞いてる?」
「うん、聞いてるよ」
和美は生返事をしながらテーブルの上を何気なく見た。瑞穂の前には新しい缶チューハイが置かれている。どうやら和美が中学生の頃を回想している間に先程の缶チューハイは飲み終わったってしまったらしい。
――いつもよりペースが早いけど大丈夫なのか?
「じゃあ、私のどこが悪いの?」
「え?」
「カズミちゃん聞いてなかったんじゃない、罰として飲みなさい」と瑞穂はカクテルを和美に押しつける。瑞穂の目は据わっていて完全に酔っ払いモードだ。
和美は仕方なしにカクテルを一口飲む。
「瑞穂って基本的にわがままじゃん。それがいけないんじゃないの?」
「それはカズミちゃんと女友達の前だけだよぅ。彼氏の前では尽くす女だもん」瑞穂は頬を膨らませながら答える。
和美は呆れ顔で「僕は瑞穂とつきあった事がないから彼女としての瑞穂は知らないよ。元カレに聞いてみればいいんじゃない?」
「元カレと連絡をとるなんて絶対にイヤ!!」と、瑞穂は頭をブンブン振っている。
「もう、酔いがまわるからやめなさい」と和美は瑞穂の頭をポンポンと軽くたたく。
「カズミちゃんの頭ポンポン懐かしいなぁ……」と瑞穂は満面の笑顔になる。
――なんだよ、瑞穂笑うと可愛いじゃん……。って僕もそうとう酔っているのかもしれないなぁ…。和美は苦笑いした。酔いざましに顔でも洗ってくるかと和美が立ち上がりかけた瞬間に瑞穂は言った。
「そうだ! 期間限定でカズミちゃんとつきあってみればいいんじゃないかな? そうしたら私の悪いところも見つかるじゃん、ナイスアイディア!」と瑞穂は瞳をキラキラさせている。
「人の都合も聞かないで、ナイスアイディアじゃないよ」と和美は抵抗する。