表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わがままなキミ  作者: 葉月 晶
第二章
5/30

追憶

 あれはいつだっただろう。


 和美(かずよし)と瑞穂がよく遊んでいた公園、学校、そして街の中心部を流れる川沿いが桜の花びらでピンク色に染まっていたので中学に入学して間もない春だったと思う。


 和美の通っていた小学校は一学年二組の小さな小学校だったので、男女分け隔てなく仲が良かったし名字ではなく名前を呼びあっていた。放課後も家の近くの子供達が集まって仲良く話ながら下校するのが普通だったので、和美と瑞穂もよく一緒に帰っていた。


 しかし新しい中学校は隣の地区の大きな小学校からの生徒もたくさんいた。大きな小学校の生徒達は余程親しい友達ではないと名前で呼びあわなかったし放課後も男女別々に下校していたらしい。そんなルールを知らなかった和美は中学に入学しても相変わらず瑞穂と登下校していたのだ。


 その事件があった日も和美と瑞穂は二人きりで登校していた。なぜだか和美のクラスの窓からクラスメート達が二人のことを指を指して笑っていた。不信に思いながらもクラスの違う瑞穂とは昇降口で別れた。和美は自分のクラスの一年三組の教室に入った途端に悪意ある笑い声に囲まれていた。


 和美は訳がわからずにクラスメートの顔を見回していると黒板に『園田と五組の野上はつきあっている!』と大きな文字で書かれていたのが目に入ってきた。和美は呆然として黒板を眺めている事しかできなかった。その時チャイムの音と共に教室のドアから担任の先生が入って来た。


「騒いでないで席につけ。ん? 誰だ、こんなに子供っぽいイタズラ書きをしたのは?」と黒板のイタズラ書きを消し始めた。


 その日から和美は瑞穂と二人きりで登下校するのを避けるようになった。納得がいかない瑞穂は和美を呼び出し問いつめてきた「なんで私のことを避けているの?」と。


 和美は瑞穂に何と言って納得させたかはっきりとは覚えていない。たぶん「中学生になったらつきあっている恋人じゃないと一緒に帰らないんだよ」という意味のようなことを言ったのだと思う。


――あの時以来「瑞穂を紹介して」攻撃が始まったんだよな……。


 今なら解る。あのイタズラ書きはクラスメート達の嫉妬していたが故にとった行動だったと。だけど男女意識しないで育ってきた和美と瑞穂には理解出来ない悪意としか感じることができなかった。


 そして周りから「野上さんを紹介して」と声をかけられる度に、和美は瑞穂のことを『幼なじみ』から『幼なじみの女の子』として認識するようになって行った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ