真夜中の飲み会
「二股されていた」と聞いて和美は納得した。
今回の瑞穂の荒れようは尋常ではない。もちろん彼氏と別れる度に幼なじみの和美の部屋に来て、酔っぱらいながら一晩中に渡り愚痴をこぼすことも尋常ではないが……。
「私のどこが悪いのよ?」瑞穂は音もたてずポロポロと涙をこぼしながらも缶チューハイを煽るように飲み干す。「ほらほらカズミちゃんも飲んで」と新しい缶チューハイのプルトップを開けて和美に渡してくる。瑞穂の視線を感じてしかたなく一口飲むがすぐに「何これ苦いやつじゃん、カクテルシリーズ買ってきてないの?」和美はアルコールに弱く、しかも甘いカクテルか甘い缶チューハイじゃないと飲めない。
「もう、カズミちゃんは世話がやけるんだから……」と和美の手から缶チューハイを奪い一口飲んで「カズミちゃんと間接キスだぁー!」と酔っぱらい特有の大声で笑う。
「瑞穂大声出さないで! もう真夜中だし、ウチのアパートの壁薄いんだから」
「ごめん、ごめん。これならカズミちゃんも飲めるでしょ?」とカクテルを渡してくる。「ありがとう」と受け取り一口飲む。
「ところで瑞穂夕飯食べたの?」
「これ食べた」と得意気にテーブルの上に散乱しているスナック菓子のゴミ袋を指差す。
「ダメダメ、きちんと食べないで飲むと身体に悪いぞ」と和美は冷蔵庫の残り物でおつまみの一品を作りテーブルの真ん中に割りばしと一緒に置く。
「やった、カズミちゃんの手料理じゃん」と瑞穂は頬を濡らしたままニッコリと笑う。そんな無邪気な笑顔を見ていると、まだ素直だった頃の瑞穂を思い出す。
――いつから瑞穂はわがままになったんだっけ?