僕にしておきなよ
女子会から一週間経った頃に久しぶりに瑞穂から和美は呼び出された。待合場所は智明のカフェだった。
カフェに入ると瑞穂はもう奥の席に座っていた。思わず和美は時計を見たけれど約束の時間より早かった。
「ごめん、待たせちゃった?」と和美は瑞穂の向かい側に座りながら声をかける。
「ううん、私が早く来ちゃっただけだから」と瑞穂は微笑んだ。久しぶりに見る瑞穂の笑顔に和美の心臓の鼓動は高鳴る。そんな気持ちを隠しながら和美はアイスティーを頼んだ。
「カズミちゃん、ごめんなさい」瑞穂は下を向いたまま話を切り出した。
「瑞穂、顔を上げて。なんで謝るの?」
「私、何でも許してくれて受け止めてくれるカズミちゃんに甘えてた。カズミちゃんの幸せとか考えてなかった。優佳のことなら私からわかってもらうまで説明するから……」
「優佳ちゃんは今、幸せなんだよ。だから何も説明することなんかないよ。それに僕の方こそごめん、瑞穂の気持ちも考えずに勝手に祐介を期間限定彼氏に押しつけちゃって……。僕って最低だな」
和美の言葉を聞いて瑞穂はビックリしたように顔をあげて言った。
「そんなことないよ、カズミちゃんは最低なんかじゃない! 私、カズミちゃんには幸せになって欲しいってやっと気がついたんだ。でももう遅いよね……」
「だったら瑞穂が僕を幸せにしてよ」
今にも泣きだしそうな瑞穂の顔を見ていたら和美は自然と口に出していた。
「え?」
瑞穂もビックリした顔をしているけど瑞穂に負けないくらい和美自身ビックリしていた。でも言葉にしてみるとすごく自然なことのように和美は感じた。
「自信ないの?」和美はアイスティーを飲みながら瑞穂を見つめた。そんな視線に耐え切れないのか瑞穂はまたうつむいてしまった。
「だって私またわがまま言っちゃうかもしれないし……」
「そしたら話し合えばいいじゃん。僕、瑞穂のこと誤解してた、瑞穂は女子力高いよ」
「何それ?」瑞穂は笑い始めた。
「やっと笑ってくれた。これでも精一杯褒めてるつもりなんだけどなぁ」
「女子力の高いカズミちゃんの太鼓判をもらったってことは自慢出来るのかな?」とまだ笑っている。
瑞穂の笑い顔を見ていると和美はほっとした。
「瑞穂、僕にしておきなよ」
「カズミちゃんのくせに生意気」とふたりで笑った。