わがままの理由
「例えば瑞穂はデートの時に遅刻してきても謝らない。でも僕の遅刻は数分でも許さないよね、なんでかな?」あえてゆっくりとした口調で和美は話を始める。
「だって何かあったんじゃないかって心配になっちゃうんだもの仕方ないじゃない、私の優しさよ」と、瑞穂は肩を竦めてみせる。
「あと、女子会に連れて行くくせに他の女の子と話をしていると無理矢理話に割り込んでくるよね?」と、和美はため息をつきながら言った。
「だって嫉妬しちゃうんだもの。それにカズミちゃんの話って面白いから混ざりたくなるの。女の子ってそんなものでしょ?」っと全く悪びれた態度を見せない瑞穂。
「やっぱり瑞穂は理由だってわがままだよ。僕の女友達はみんな遅刻をすれば素直に謝るし、他の女の子と話している時に無理矢理まで話に割り込んでこない子の方が多いよ」
「じゃあ、カズミちゃんのいう通りに私がわがままなんでしょ! もうカズミちゃんなんて知らない!」
瑞穂はひとり悠々とカフェを後に帰って行った。
「もうカズミちゃんなんて知らない!」は瑞穂の決め台詞だ、二人がケンカをする度に使われていて効力はその日限定。なぜなら次の日には瑞穂は機嫌を直しいつも通りに、おはようカズミちゃん。などと話しかけてくるからだった。
智明も瑞穂の剣幕には慣れているので瑞穂のアイスコーヒーを片付けつつ「おかわりしますか?」と和美に穏やかにたずねてくれる。和美は小さくため息をついた後に「じゃあ、今度はアイスアプリコットティーで」と笑顔で頼んだ。
そして和美は瑞穂への新しい作戦を練る為にスマートフォンでメールを打ち始めた。