和美VS瑞穂
ある日、和美は思い切って瑞穂に聞いた。
それはふたりで映画を観に行った帰り道、カフェで映画の感想を話していた合間のことだった。
そのカフェは和美が見つけたお店だ。場所は駅前から一本裏道に入ったところにあり小さいけれどテラス席もあった。その日ふたりはテラス席に座ったけれども、店内は赤のギンガムチェックとオリーブカラーでコーディネートされていて、カントリー風雑貨なども販売されている。ちょっとしたプレゼントなどに喜ばれたりするので和美も瑞穂もお気に入りのお店だった。オーナーの智明はまだ若く三十代くらいのお話好きなお兄さんという感じの人。だけども、彼の淹れるコーヒーやハーブティーは絶品だ。
「前に瑞穂は彼氏には尽くすタイプだって言ってたよね? でも僕には尽くしてもらってる感じが全くしないんだけど……。相変わらずというか下手するとつきあう前よりもわがままになっているよね。何でつきあう事になったのか瑞穂は覚えている?」和美はアイスアップルティーを飲みながら聞いた。
「カズミちゃんとはつきあう前からデートはしていたから、まだ彼氏って実感がわかないんだよね。それにカズミちゃんって居心地がいいんだもの」瑞穂はしきりに自慢の髪をかきあげてみたり枝毛を探してみたり無関心風。でも瑞穂は都合が悪いときには、長い髪をいじり始めることを和美は知っている、それなのでいつもは追いつめたりしない。さすがに優しい和美でも自分の恋愛がかかっているせいなのか、その時には言葉を重ねた。
「瑞穂の悪いところを見つけるのは簡単だよ。約束は破るし、時間にルーズだし、わがままだし……」と和美は指折り数えてみせる。
「カズミちゃんは私のことを口を開けばわがまま、わがままっていうけれども私のわがままってなあに? 説明してよ」瑞穂もヒートアップしてきた。