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オープン・ワールド  作者: 梯子
ワールド1
9/22

1-8

「土産ハどうした。あの人間でモ良かったのだぞ。」

 改めてみるとおっきいなー。腕なんか僕の腰ぐらい太い。あ、足かな? 爪の鋭さはこの前みたとおりだし。

 背中の山羊から涎垂れてる。アレには触りたくないな。臭いとかキツそう。

「我は我慢が出来ル性分ではない。これほど待たされ、しかも手土産なしトは。グルル。」

 剥き出した牙も切れ味抜群。怒気でちょっと周囲が暑くなった気がする。

「我が呼んだ客人デはあるが、仕方ナい。灸を据えてやろウ。」

 せんてひっしょー。

 先ずは横っ面をぶん殴る。そして、怯んだ所に続けてキックを…。

 ふぐはッ。

 激痛。すごく痛い!

 先制攻撃したはずなのに、ライオンの顔が目の前にあったはずなのに、今僕は地面とにらめっこしてる。

 なんで!? いつ!?

 見上げるとアイツは振り上げた足をゆっくり下ろすとこだった。

 くそっ。僕も殴られた!

 右の拳をぐっぱーぐっぱーしてみる。殴った感触はあったんだ。でも同じ感じは足にはない。

 蹴る前に殴られちゃった。

 ちくしょ。

 しかも、アイツは全然痛そうじゃない。すっごく怒ってるけど。

 最初に二発は確実に入れるつもりだったの、うわ!!

 ガチン。

「おとなしくしていロ。余計腹が減ル。」

 咄嗟にかがんでなんとかよけたけど、耳の毛がちょっと千切られた。

 あぶな、あぶな!

 考える暇もなく爪が、牙が、蛇が。

 そしてドゴンッ!

 ぐふっ。

 左脇にボディブロー。

 ちくしょー、痛いよ! 

 でも、今度は不意の一発じゃなかった。だから一応防御もできたし、空中で受身も取れた。

 殴り飛ばされたお陰で距離もできた。

 のんびりしてると飛び掛ってくる。体がおっきい分、射程が長い。反対にびたっとくっ付けばそんなに痛いのは来ない。でも、蛇が来るから。

 ふうぅぅ。

 落ち着け。ちゃんと見ればだいじょぶ。殴るとか打つとか、そういうのは僕の体重が軽いせいもあっておっきなダメージはないみたい。舞い落ちる木の葉を叩くイメージかな。でも、スラッシュ系は全力回避。触ったときには木端微塵っぽいかな。

 いくぞ全力。

 尻尾を二つに増やして、ゆらゆらさせる。


 ふへ。ふへへ。


 突進!

 一直線に距離を詰める。来た、爪!

 二本目の尻尾を掠らせて、あごの下に滑り込む。

 よし、ここ!

「アッパー!」

 ガン、ガン、ガンッ!

 痛ッ…。殴ってるのは僕なのに、コイツの骨硬い。

「グルァ!!」

 背後からの攻撃を察して、腹下に更に潜る。なんて深い懐。

 ゴスッ。ズド、ズドッ。

 顎よりはやわらかい。

 でも、硬い体毛が邪魔をして、衝撃が通っている気がしない。

「おらおらおらおらおらおらァ!!」

 ドドドドドドドドド。

 通らないなら通るまで殴る!

 

「mposi mj後spgj;k;sgs0いgsbsぽpjん;」

 らららららららァ!

 びシィ!

「ひぎッ! なんだ、体が、動かない!」

 僕の周囲に紫色の円、そして怪しげな模様が浮かんで取り囲まれていました。

「く、くそッ!」

 動かないッ。

 のそりと獅子が立ち上がります。まるで山のように天を衝くようです。その左腕に同じような陣。更に空へと何十にも重なっています。魔法陣のミルフィーユです。

 マズッ。

「ブンブンと煩イ奴め。だがこれで動けマい。」

 ドグラシャ。

 左半身で鈍い音がして。

 ばきばきばきばき。

 木を4本貫通しました。

 陣によって加速、増幅されたナックルが放つ強烈なフック。

木の内側を通ったのは初めてだったので感動しちゃいました。

 

「ほ、…あ。なんかこういうの、イイ。」

 思っていた以上のバトル。

 ひひっと笑うも、左腕は上がりませんでした。だらんとして、そこだけ死んでるみたいでした。

 折れちゃったみたいです。

「……。」

 またゆっくり近づいてきます。ばけものめぇ。きしし。

「我は炎ノ化神イフリート。その眷顧隷属たル貴様が弓引くとは癪に障ル。身分の違いを分からせてヤろう。」「gah iuafmヵ歩jが得う派jlウpg化lk歩sがy0つあp」

 ビビビビシビシビシッ。

 ぐっ。ぐぬぬ。

 無数の石つぶてが飛んでくる。さっきのとは違う方法の足止め。辛うじて目を開けると、イフリートが大きく息を吸い込んでいました。

 轟ッ。

「ッ。ァ、……ッ。」

 喉が灼けるッ!

 目が、目の玉が蒸発するッ。

 焦熱の地獄とはこれでしょうか?

 灼熱で灼アツです。

 周りの空気ごと焼き尽くされて、声を上げることも出来ません。

「ズハッ、ズハァ! カハッ。」

「其のまま膝を折っテ、頭を地にこすり付け、許しを請エ。その左腕だけで許してやロう。」

 なんて低くて、重い声なんだ。腹の底から響いてくるみたいだ。

 実力の違いを分からされる。

 でも……。


 楽しいよ。

 くは、カハッ。カハハッ!

 楽しいよ、イデア。

 こんな得体の知れない、生き物の範囲を超えた相手とがちんこで戦って。

 怖いけど、すごく怖いけど。

 でも、ブワッと来るんだ。鳥肌立ちっぱなしなんだ。

 恐怖と混ざってわけわかんなくなっちゃってる。

 ケン、なんとかゾクって言ったっけ。意味はわからいけど、多分手下とかってことだよね。冗談は姿形だけにしてよ。

 カカカッ。


「その顔、目障りダ。今すぐ畏れニかえて見せよう。」

「l;s w lsmaasutropkgmmkpsjl;skg;js:。、;pそkがl・・・」

黙れ。

「ごッ。がごご。うごごッ。」

 お前だろうさっきから僕を縛ってくれたのは。

 お礼にその喉焼いてやる。僕の二本目の尻尾をくれてやる。

「ガアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!」「ギィヤァア嗚呼!!」

 頭は三つあっても、感覚はみんな繋がってるのか。

 3倍騒がしいな。でも、これで多分山羊の言葉は封じた。あの円も出せないはず。

「オ前…、何をしタ!」

 ひらひらと尻尾を振った。二本目の尻尾は山羊の口の中。

「塵にしてくれル!!」

 轟ッ!

 そんな大技二回も食らうもんか。

 チリッ。

 あれ? 完全によけたはずだけど、少し尻尾をかすめたかな。

 まぁいっか、それくらい気にしない。

 サイドステップで揺さぶりをかけて、今度は尻尾の蛇を…。

 でも、なんか尻尾に違和感が。

 お尻を見てみた。

「おお。一本増えてる…。」

「余所見とは、舐めた真似ヲ。」

 ぶんと豪腕が、なぜかぜんぜん違う場所を空振りした。

 さっきのステップで最初に左に跳んだところ?

 なんで、あ、もしかして目を潰した?

「貴様いつの間ニ…。」

 しっかり両方の目で睨んでくる。変だな、揺さぶってみたけどそんなに長いことだませるほどじゃないし。

 確かめてみるか。

 今度は右、腹の下をくぐって反対側のわき腹を…。

 ゴンッ。ぶん。

 同時に拳をふるっても、僕のはヒットしたのにイフリートのまた空振りしてる。

「陽炎カ。小賢しイ!!」

 拳を振る一瞬前、振り返った僕は、僕の姿を見た。

 でも、ゆらゆらと揺らめいてはっきりしない僕の姿。水面に写したような感じ。

 ぶるぶるッ!

 僕にもこんな技が。カゲロウ…。

 …。

 ……。

 

 カコイイ!!

  

 何これすごい。

 こうやってサイドステップするだけで、僕の分身がどんどん増えてく。

 それに惑わされてどれが本物か分かってないみたいだ。

 ゴン。ゴゴンッ。ゴゴゴゴゴンンッ!!

 意識の外から殴れば確かに骨まで届く打撃の感覚がある。

 こんなのにやけずにいられない!


 よし、貰うよ。

 バックステップ、で急速前進。

 尻尾の蛇を。

 ガブッ。ぶちん。

「ゴアアッ!」

 今度の悲鳴は×1。山羊はのど潰してるし、蛇は僕が今食べてるし。

 蛇もおいしい。むぐむぐ。

「愚弄しおったナ。許さン。許サんぞヲヲヲヲヲ!!」

 な、なな、なんだ。

 突然燃え始めた。

 全身が炎に包まれて、いや炎そのものみたいだ。

 ズガァッ。

「許さん許さん許さん!」

 ズガッ、ドゴッ、ズガッ。

 見えない。さっきまでの見えていたはずの攻撃が見えない。

 ズドドドドドッ。

 右に動けば右から、左に動けば左から、どこに逃げても打撃が浴びせられる。

 くそっ、しかも全然アイツの姿が見えない。

「いい加減に…!」

「かふっ。」

 鳩尾からかちあげられる。

 バシッ。

「かはっ。」

 簡単に叩いてくれるなー。あ、やばい。またあの、紫の、ミルフィーユ…。

さっきよりも層が多いや。やばいなー。どうにか。

 よっこ、いしょ。ゴロリ。

 ズドンめきめきめき。

 うわ、地面が裂けちゃってる。食らってたら冗談じゃなく死んでたなー。


 よっと。


 せめて。


 最後に一矢。


 サイドステップして…。

 

 尻尾を振って…。

 

 横っ面に一発。


 ぶうん……。


 はは…。


 ははは…。


 なんだ、使えるの僕だけじゃないんだ…。


 かげろう…。


 デカイ口あけて…。


 こっちじゃん、本当の大技…。


 はは。強かったなー…。


 ………。



『我はイフリート。炎ノ化神。身分を弁えぬ汝に炎の裁きを与えル。』


 遠くなっていく意識で、ぼんやりと聞いた最後の声です。

 


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